記事・レポート
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」
更新日 : 2009年07月23日
(木)
第21章 食料を原料にしたエタノールは、環境に優しくない
北野宏明: 環境問題というと、何か「自然に帰れ」みたいなイメージがあるんですよ。エコエコというと、何か自然というイメージがあるのですが、自然という意味でいくと、人間はある意味、不自然なわけですよね。つまり人間の存在そのものは、別に地球にとってはそんなに必要ではない。
北野宏明: 結構邪魔かもしれない(笑)。
竹内薫: 地球にとっては、別に人類がいるか、いないかということは、そんなに関係ないだろうし。
北野宏明: 関知する話ではないですね。彼は、彼というのは変ですけれど。
竹内薫: しかし、人間中心に考えていった場合、人間が存続できるか、つまり、今のこの快適な文明生活みたいなものを続けらるかというのが環境問題ということですか。
北野宏明: 1つの考え方はそうですね。やはり、それに伴って我々が密接に関係する動物、植物などのかなりの部分が迷惑を被り、絶滅してしまったりするわけですから。そういうことも含めて、自分たちだけじゃなくて、人類の責任というのは非常に大きいですね。
竹内薫: 例えばシステム論から見たときに、二酸化炭素濃度をこれ以上上げないための、何か方法論となると、どういうものがありますか?
北野宏明: 基本的に大きいのはエネルギー問題。ごみの問題とか、いろいろなことが人類活動にはあると思います。人類活動以外の二酸化炭素の変動や気温変動もあるのですが、ただこれはあまりコントロールできないので、この話をしても仕方ない部分があります。
人類活動ではO2を使って、CO2を出しているわけですが、森林がCO2を吸収して酸素を出しているんです。でも実は、森林よりも海の方がCO2吸収は圧倒的に大きいです。
面白いのはヤマニ石油相(サウジアラビア王国)が、「石器時代は石が足りなくなって終わったんじゃない」と言っているんです。まあ当たり前ですよね(笑)。でもなかなか鋭くて、「石油時代は石油が足りなくて終わるんじゃないだろう」と言っています。
竹内薫: それは面白いですね。
北野宏明: これを70年代に言っているんですよ。なかなか名言で、僕も気に入っているのです。やはり、この問題ではオルタナティブエナジーというのを多分やらなければいけないでしょう。最近、食料を使ってエタノールをつくっていますが、これはあり得ない。
竹内薫: まずいと。
北野宏明: もうだめでしょう。それともう1つ。ボルネオ島で、今何が起きているかというと、森林伐採が進んでいます。森林を伐採してオイルパームを新たに植えている。要するに油ヤシのバイオエタノールでエコフレンドリーなエネルギーをつくっているんです。
竹内薫: 原生林を全部切ってしまう。
北野宏明: ボルネオでは原生林をガンガン伐採しています。それで、オイルパームのプランテーションを開発して、それでエタノールをつくって、「これで地球環境に優しい!」という話なんです。
竹内薫: つまり、我々がエコエコと言っていろいろな政策を進めた結果出てきたのが、ここまでいってしまったということになると、これは何なんだろうという話ですね。
北野宏明: ボルネオは大問題ですよね。アマゾンやブラジルでもこういうことは起きているわけです。いろいろなところで、こういうことが起きている。
東北大の中静透先生という生態をやっている人とお話をしたことがあるのですが、「この辺りの伐採は非常に問題だ」と言うのです。なぜかというと、蝶や蜂などの虫は湿地帯で休んで、それから森林に出てくるのです。彼らの巣は基本的には湿地帯にあります。湿地帯を伐採してエビ養殖などもやるわけですが、そうなると、そういう昆虫がいなくなる。昆虫がいなくなれば、いずれ森林は滅びます。だって受精できないから、リプロダクションできない。
竹内薫: 花粉を運ぶ虫がいなくなってしまうわけですね。
北野宏明: ここら辺の原生林の寿命はあまり長くないだろうという議論をしています。そういうことが今オイルパームだとかいろいろなことで起きているのです。だから、これはあり得ないソリューションになっているのです。無理なんですよ。
竹内薫: かえって環境破壊になってしまうわけですね。
(その22に続く、全23回)
北野宏明: 結構邪魔かもしれない(笑)。
竹内薫: 地球にとっては、別に人類がいるか、いないかということは、そんなに関係ないだろうし。
北野宏明: 関知する話ではないですね。彼は、彼というのは変ですけれど。
竹内薫: しかし、人間中心に考えていった場合、人間が存続できるか、つまり、今のこの快適な文明生活みたいなものを続けらるかというのが環境問題ということですか。
北野宏明: 1つの考え方はそうですね。やはり、それに伴って我々が密接に関係する動物、植物などのかなりの部分が迷惑を被り、絶滅してしまったりするわけですから。そういうことも含めて、自分たちだけじゃなくて、人類の責任というのは非常に大きいですね。
竹内薫: 例えばシステム論から見たときに、二酸化炭素濃度をこれ以上上げないための、何か方法論となると、どういうものがありますか?
北野宏明: 基本的に大きいのはエネルギー問題。ごみの問題とか、いろいろなことが人類活動にはあると思います。人類活動以外の二酸化炭素の変動や気温変動もあるのですが、ただこれはあまりコントロールできないので、この話をしても仕方ない部分があります。
人類活動ではO2を使って、CO2を出しているわけですが、森林がCO2を吸収して酸素を出しているんです。でも実は、森林よりも海の方がCO2吸収は圧倒的に大きいです。
面白いのはヤマニ石油相(サウジアラビア王国)が、「石器時代は石が足りなくなって終わったんじゃない」と言っているんです。まあ当たり前ですよね(笑)。でもなかなか鋭くて、「石油時代は石油が足りなくて終わるんじゃないだろう」と言っています。
竹内薫: それは面白いですね。
北野宏明: これを70年代に言っているんですよ。なかなか名言で、僕も気に入っているのです。やはり、この問題ではオルタナティブエナジーというのを多分やらなければいけないでしょう。最近、食料を使ってエタノールをつくっていますが、これはあり得ない。
竹内薫: まずいと。
北野宏明: もうだめでしょう。それともう1つ。ボルネオ島で、今何が起きているかというと、森林伐採が進んでいます。森林を伐採してオイルパームを新たに植えている。要するに油ヤシのバイオエタノールでエコフレンドリーなエネルギーをつくっているんです。
竹内薫: 原生林を全部切ってしまう。
北野宏明: ボルネオでは原生林をガンガン伐採しています。それで、オイルパームのプランテーションを開発して、それでエタノールをつくって、「これで地球環境に優しい!」という話なんです。
竹内薫: つまり、我々がエコエコと言っていろいろな政策を進めた結果出てきたのが、ここまでいってしまったということになると、これは何なんだろうという話ですね。
北野宏明: ボルネオは大問題ですよね。アマゾンやブラジルでもこういうことは起きているわけです。いろいろなところで、こういうことが起きている。
東北大の中静透先生という生態をやっている人とお話をしたことがあるのですが、「この辺りの伐採は非常に問題だ」と言うのです。なぜかというと、蝶や蜂などの虫は湿地帯で休んで、それから森林に出てくるのです。彼らの巣は基本的には湿地帯にあります。湿地帯を伐採してエビ養殖などもやるわけですが、そうなると、そういう昆虫がいなくなる。昆虫がいなくなれば、いずれ森林は滅びます。だって受精できないから、リプロダクションできない。
竹内薫: 花粉を運ぶ虫がいなくなってしまうわけですね。
北野宏明: ここら辺の原生林の寿命はあまり長くないだろうという議論をしています。そういうことが今オイルパームだとかいろいろなことで起きているのです。だから、これはあり得ないソリューションになっているのです。無理なんですよ。
竹内薫: かえって環境破壊になってしまうわけですね。
(その22に続く、全23回)
※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。
※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」 インデックス
-
第1章ニューヨークの大停電で、機能不全に陥ったホテルと平常通りだったホテル
2008年10月08日 (水)
-
第2章「ロバストネス」の定義とは?
2008年10月16日 (木)
-
第3章なぜボーイング777は、同じ機能のコンピューターを3つ搭載しているのか
2008年10月28日 (火)
-
第4章 相手と連絡を取りたいとき、ロバストなコミュニケーションしてますか?
2008年11月06日 (木)
-
第5章 安定して強くなるタイプと、不安定になって強くなるタイプ
2008年11月18日 (火)
-
第6章 A社とB社、どちらがロバストか?
2008年12月01日 (月)
-
第7章 全部に対してロバストというのはあり得ない
2008年12月15日 (月)
-
第8章 我々が病気になるのは進化の必然
2009年01月26日 (月)
-
第9章 低体重で生まれた子どもは、大人になると糖尿病になるかもしれない?
2009年02月13日 (金)
-
第10章 「がん」を殺そうとすればするほど、「がん」は進化する
2009年03月03日 (火)
-
第11章 病気を治すというのは多様性との戦いである
2009年03月10日 (火)
-
第12章 糖尿病の仕組みは、ボーナスに置き換えるとよく分かる
2009年03月17日 (火)
-
第13章 会社組織のロバストネスとは?
2009年03月25日 (水)
-
第14章 時速300kmで走るF1カーは、オフロードを走れない
2009年04月02日 (木)
-
第15章 アルバイトの個人差が味に影響しないようにする
2009年04月20日 (月)
-
第16章 人間が単細胞生物だったら、生き延びられない
2009年05月11日 (月)
-
第17章 地球温暖化から考える、環境変化に対するロバストネス
2009年05月28日 (木)
-
第18章 今世紀の温度変化は、過去の大絶滅のときと同じくらいのレベル
2009年06月16日 (火)
-
第19章 二酸化炭素も怖いが、メタンの方が影響は大きい
2009年07月03日 (金)
-
第20章 地球は気候変動に対してロバスト。問題は、人間がロバストじゃないこと
2009年07月22日 (水)
-
第21章 食料を原料にしたエタノールは、環境に優しくない
2009年07月23日 (木)
-
第22章 エセのエコに騙されるな
2009年07月24日 (金)
-
第23章 サンゴ礁が絶滅すると、海洋資源の過半数がなくなる
2009年07月27日 (月)
該当講座
大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、吉野家、ルイ・ヴィトン、一見するとばらばらなこれらのものには共通点があります。それが「ロバストネス」。「頑健性」と訳されることの多い言葉ですが、その意味するところはもっとしなやかでダイナミックなものです。システム生物学から生まれたこの基本原理は取り巻く環境の幅広い....
BIZセミナー
その他
注目の記事
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 12月17日 (火) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第1回。近著『きみのお金は誰のため』が25万部超のベストセラーとなっている、社会的金融教育....
「そもそもお金って何?未来をつくるためのお金の教養」
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」