記事・レポート
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」
更新日 : 2009年04月20日
(月)
第15章 アルバイトの個人差が味に影響しないようにする
竹内薫: (このセミナーの)最初に出てきた「デカップリング」という言葉がありますよね。この前テレビを見ていたら、経済ニュースか何かでデカップリングという言葉を使っていました。
どういう文脈だったかというと、「アメリカの経済がだめになり、風邪をひいても日本経済がデカップリングされていれば、別に影響を受けない」みたいな話でした。もともとシステム学みたいな方から経済学にいったのでしょうか、ちょっとその辺りが分からなかったのですが。
北野宏明: そうですね。デカップリングというのはシステム設計でよく使います。それを応用しているし、一般的な単語でもありますので、デカップリング論というのはいろいろあると思います。
工学システムとか生物の場合だと、2つの意味でデカップリングというのは使われています。1つは割と物理的なダメージとかローレベルのノイズに対して、上位の機能が影響を受けないという縦方向のデカップリングで、デジタル回路がそうです。もう1つは、1個のモジュールが壊れても、ほかのモジュールにいかないというか、モジュールをつくることによるデカップリング、横方向です。
いわゆる経済のデカップリングは横方向の話をしていますね。アメリカ経済とエマージェントなエコノミーのデカップリングが起きているはずだという、そういう話になっています。
吉野家もデカップリングしているんですよ。というのは、従業員はほとんどアルバイトなんです。そうすると個人差があるわけですが、個人差をお店のクオリティにはしたくないですよね。それをどうやってデカップリングしているかというと、徹底的にマニュアルをつくっているんです。マニュアルというバッファを置いているわけです。それを守って、しかも作業工程をすごく細分化して、「これは何回、こうやって揺する」とか、全部やっているわけです。
お玉は穴の数が決まっているんですよ。あれで掬うとちょうどいい具合になる、だから誰がやってもできるのです。それはある意味でデカップリングですよね。個人のスキルと、出てくる物のクオリティをデカップリングしているのです。マニュアルや、機械や機材を工夫することで、デカップリングしているわけです。
うまくオペレーションできているリテールや飲食関係、フランチャイズなどは、それがうまくできるかどうかが勝負になるのではないでしょうか。
竹内薫: それでちょっと思い出しました。僕はハンバーガーが結構好きなんです。
北野宏明: メタボになりやすいですね。
竹内薫: (笑)ロッテリアが「絶品チーズバーガー」というのを開発したんで、僕はこれを1週間に1回は食べないといけないという癖になっているんです。
それで面白い話があって、最初はそのバーガーのチーズは、小さいチーズの塊から掬ってのせていたらしいのです。そうしたら、お客さんから文句が来るというのです。「今日のチーズの量は、前回と比べて少ない」、そういうクレームがたくさん来たので、方式を変えて、シート状のチーズに変えたというのです。それも一種、デカップリングというやつですよね。
北野宏明: そういうことですね。
竹内薫: 個々の影響が出ないような仕組みをつくるということですね。
(その16に続く、全23回)
どういう文脈だったかというと、「アメリカの経済がだめになり、風邪をひいても日本経済がデカップリングされていれば、別に影響を受けない」みたいな話でした。もともとシステム学みたいな方から経済学にいったのでしょうか、ちょっとその辺りが分からなかったのですが。
北野宏明: そうですね。デカップリングというのはシステム設計でよく使います。それを応用しているし、一般的な単語でもありますので、デカップリング論というのはいろいろあると思います。
工学システムとか生物の場合だと、2つの意味でデカップリングというのは使われています。1つは割と物理的なダメージとかローレベルのノイズに対して、上位の機能が影響を受けないという縦方向のデカップリングで、デジタル回路がそうです。もう1つは、1個のモジュールが壊れても、ほかのモジュールにいかないというか、モジュールをつくることによるデカップリング、横方向です。
いわゆる経済のデカップリングは横方向の話をしていますね。アメリカ経済とエマージェントなエコノミーのデカップリングが起きているはずだという、そういう話になっています。
吉野家もデカップリングしているんですよ。というのは、従業員はほとんどアルバイトなんです。そうすると個人差があるわけですが、個人差をお店のクオリティにはしたくないですよね。それをどうやってデカップリングしているかというと、徹底的にマニュアルをつくっているんです。マニュアルというバッファを置いているわけです。それを守って、しかも作業工程をすごく細分化して、「これは何回、こうやって揺する」とか、全部やっているわけです。
お玉は穴の数が決まっているんですよ。あれで掬うとちょうどいい具合になる、だから誰がやってもできるのです。それはある意味でデカップリングですよね。個人のスキルと、出てくる物のクオリティをデカップリングしているのです。マニュアルや、機械や機材を工夫することで、デカップリングしているわけです。
うまくオペレーションできているリテールや飲食関係、フランチャイズなどは、それがうまくできるかどうかが勝負になるのではないでしょうか。
竹内薫: それでちょっと思い出しました。僕はハンバーガーが結構好きなんです。
北野宏明: メタボになりやすいですね。
竹内薫: (笑)ロッテリアが「絶品チーズバーガー」というのを開発したんで、僕はこれを1週間に1回は食べないといけないという癖になっているんです。
それで面白い話があって、最初はそのバーガーのチーズは、小さいチーズの塊から掬ってのせていたらしいのです。そうしたら、お客さんから文句が来るというのです。「今日のチーズの量は、前回と比べて少ない」、そういうクレームがたくさん来たので、方式を変えて、シート状のチーズに変えたというのです。それも一種、デカップリングというやつですよね。
北野宏明: そういうことですね。
竹内薫: 個々の影響が出ないような仕組みをつくるということですね。
(その16に続く、全23回)
※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。
※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。
関連書籍
したたかな生命
北野 宏明, 竹内 薫オーム社
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