記事・レポート
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~
アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年11月11日
(火)
第18章 日本が競争している相手がどれほど頑張っているか見よ
会場からの質問: 私は留学していてスペインに交換留学で行っていたときに、すごく印象に残ったのが、ボストン・コンサルティング・グループ、BCGの方がいらっしゃって、MBOを卒業して働いていたのですが、その人が、給料水準に対して家賃が高いので、ルームシェアをしていたのです。それだけ生活があまりよくない状況だと思うのです。
それに対して、日本に帰ってきて思うのは、一般的な新人とか23、4歳ぐらいの人が「今3連休なので、どこに行こうか」と、彼氏とどこに行こうか、彼女とどこ行こうか、そんなことばかり気にしている社会で、僕にとっては、日本の社会の何が悪いのかがわからないのです。
その中で、例えば日本が先進国で1億2,000万人ぐらいいるとして、日本が悪いというと、じゃあどこの国の政策が一番よくて、どこの国の政策を学べば日本はもっとよくなるのか、その具体的なものがあれば教えていただきたいと思うのです。
竹中平蔵: 日本の何が問題かというのは、基本的な質問だと思います。これは比べるのが難しいのだけれど、日本人の平均所得というのは、今どのぐらい高いか、低いか、もうご存じだと思いますが、世界で18番目になってしまったのです。先進国は30カ国ですから、18番目というのは、先進国の中の下位グループに入ったということです。それでも、まだ18位だからいいけれども、これを放っておいたら20位を超えて、30位になってしまうかもしれません。1人当たりの日本の所得は、1位のルクセンブルグの半分以下なんです。
目の前は何も困っていないからといって、そういう状況でいいのだろうか。競争に負ければどんどん下がっていきますから、今の私たちはいいけれども、20年後の35歳の人は、多分今のままいくと大変になりますよね。それに対して備えようではないかということなのです。
今は平均値で議論しましたけれども、日本の中で頑張って、もっともうけたいと思っている人、ないしは、なかなか今恵まれないで所得の低い人、これはいろいろな問題がありますから、それはそれで考えなければいけないけれども、平均値で見ると、今の日本の1人当たりの所得というのは18位だと。
イギリスの例でいいます。10年前のイギリスの1人当たりの所得は日本の半分だったのです。今、イギリスの1人当たりの所得は、日本を追い越して、日本よりも1万ドル高い、日本が36,000ドルなのに対して、イギリスは45,000ドルぐらいになってしまったのです。こういうことが次から次へと起こりますよということを、私たちは心配しているわけです。
会場からの質問: 竹中先生に質問です。先ほどのディスカッションの中でグローバル教育についてのお話がありました。竹中先生が考えられる日本に必要なグローバル教育について、具体的な案がございましたら、お伺いしたいです。
竹中平蔵: これは本当に皆さんにもアイディアを出してもらいたいですし、専門家にも考えてもらったらいいと思います。
例えば、私がショックを受けた1つの例がありますが、私は日本の高校生、大学生あたりに中国のどこかの工場を見学してもらったらいいと思うのです。私が行ったのは深セン(編注:「セン」の字は土偏に川)にある日本企業の工場でしたが、24時間3交代で寮に住んでいます。その子たちは16歳か17歳で、村から出てきて、故郷に仕送りをしているのです。3交代だから8時間働いて、寮の狭い部屋に住んで、休み時間は図書室で勉強しているのです。
「何やっているの?」と聞いたら、「私は、あと4年間ここで働いて仕送りを続ける。4年たったら村に帰って、こういうビジネスを起こしたいんだ。そのための勉強をしています。それで村を豊かにしたいんです」と言うのです。
日本の高校生や大学生によく言うのは、「君たちが将来、世界の中で競争していく相手はこういう生活をしているんだよ」ということで、例えば修学旅行で行けばいいと思いますね。
この間、ある高校生を深センにあるテクノセンターというところに連れて行ったのですが、ものすごいショックを受けていました。「自分と同じ人たちが、こんなに頑張っているのか。本当に豊かになるためにすさまじい競争をしている」。それをそれぞれいろいろな年代層に見てもらうというのは、その第一歩だと思います。
ほかにも英語の問題もあるし、いろいろなことをやらなければいけないとは思います。
岸博幸: はい、どうもありがとうございます。時間もだいぶ超過いたしましたので、きょうは、これでお開きにしたいと思います。
最後にパネリスト6人に採点してもらいました結果だけ発表しておきます。あえて点数は言いませんけれど、1位は小池さん、2位は石破さん、3位が与謝野さん、4位5位は言いません(笑)。
いずれにしても、政策の専門家、6人の評価はこうなりましたので、総裁選の結果と比較して、政策の中身も含め、考えていただければと思います。きょうは三連休の最後にもかかわらず、たくさん、ご来場いただきまして、どうもありがとうございました。
それに対して、日本に帰ってきて思うのは、一般的な新人とか23、4歳ぐらいの人が「今3連休なので、どこに行こうか」と、彼氏とどこに行こうか、彼女とどこ行こうか、そんなことばかり気にしている社会で、僕にとっては、日本の社会の何が悪いのかがわからないのです。
その中で、例えば日本が先進国で1億2,000万人ぐらいいるとして、日本が悪いというと、じゃあどこの国の政策が一番よくて、どこの国の政策を学べば日本はもっとよくなるのか、その具体的なものがあれば教えていただきたいと思うのです。
竹中平蔵: 日本の何が問題かというのは、基本的な質問だと思います。これは比べるのが難しいのだけれど、日本人の平均所得というのは、今どのぐらい高いか、低いか、もうご存じだと思いますが、世界で18番目になってしまったのです。先進国は30カ国ですから、18番目というのは、先進国の中の下位グループに入ったということです。それでも、まだ18位だからいいけれども、これを放っておいたら20位を超えて、30位になってしまうかもしれません。1人当たりの日本の所得は、1位のルクセンブルグの半分以下なんです。
目の前は何も困っていないからといって、そういう状況でいいのだろうか。競争に負ければどんどん下がっていきますから、今の私たちはいいけれども、20年後の35歳の人は、多分今のままいくと大変になりますよね。それに対して備えようではないかということなのです。
今は平均値で議論しましたけれども、日本の中で頑張って、もっともうけたいと思っている人、ないしは、なかなか今恵まれないで所得の低い人、これはいろいろな問題がありますから、それはそれで考えなければいけないけれども、平均値で見ると、今の日本の1人当たりの所得というのは18位だと。
イギリスの例でいいます。10年前のイギリスの1人当たりの所得は日本の半分だったのです。今、イギリスの1人当たりの所得は、日本を追い越して、日本よりも1万ドル高い、日本が36,000ドルなのに対して、イギリスは45,000ドルぐらいになってしまったのです。こういうことが次から次へと起こりますよということを、私たちは心配しているわけです。
会場からの質問: 竹中先生に質問です。先ほどのディスカッションの中でグローバル教育についてのお話がありました。竹中先生が考えられる日本に必要なグローバル教育について、具体的な案がございましたら、お伺いしたいです。
竹中平蔵: これは本当に皆さんにもアイディアを出してもらいたいですし、専門家にも考えてもらったらいいと思います。
例えば、私がショックを受けた1つの例がありますが、私は日本の高校生、大学生あたりに中国のどこかの工場を見学してもらったらいいと思うのです。私が行ったのは深セン(編注:「セン」の字は土偏に川)にある日本企業の工場でしたが、24時間3交代で寮に住んでいます。その子たちは16歳か17歳で、村から出てきて、故郷に仕送りをしているのです。3交代だから8時間働いて、寮の狭い部屋に住んで、休み時間は図書室で勉強しているのです。
「何やっているの?」と聞いたら、「私は、あと4年間ここで働いて仕送りを続ける。4年たったら村に帰って、こういうビジネスを起こしたいんだ。そのための勉強をしています。それで村を豊かにしたいんです」と言うのです。
日本の高校生や大学生によく言うのは、「君たちが将来、世界の中で競争していく相手はこういう生活をしているんだよ」ということで、例えば修学旅行で行けばいいと思いますね。
この間、ある高校生を深センにあるテクノセンターというところに連れて行ったのですが、ものすごいショックを受けていました。「自分と同じ人たちが、こんなに頑張っているのか。本当に豊かになるためにすさまじい競争をしている」。それをそれぞれいろいろな年代層に見てもらうというのは、その第一歩だと思います。
ほかにも英語の問題もあるし、いろいろなことをやらなければいけないとは思います。
岸博幸: はい、どうもありがとうございます。時間もだいぶ超過いたしましたので、きょうは、これでお開きにしたいと思います。
最後にパネリスト6人に採点してもらいました結果だけ発表しておきます。あえて点数は言いませんけれど、1位は小池さん、2位は石破さん、3位が与謝野さん、4位5位は言いません(笑)。
いずれにしても、政策の専門家、6人の評価はこうなりましたので、総裁選の結果と比較して、政策の中身も含め、考えていただければと思います。きょうは三連休の最後にもかかわらず、たくさん、ご来場いただきまして、どうもありがとうございました。
※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~ インデックス
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第1章 国民はこの事態をどう評価し、あしたに向かってどう行動するのか
2008年10月15日 (水)
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第2章 政治で10年、経済で10年、伝統で10年。混乱は合計30年
2008年10月20日 (月)
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第3章 選挙のキーポイントは「成長なくして老後もなし」
2008年10月21日 (火)
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第4章 建築基準法、貸金業法、日雇い派遣——規制の問題点
2008年10月22日 (水)
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第5章 日本再生に向けた戦略の最重要ポイントは「何を捨てるか」
2008年10月23日 (木)
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第6章 マニフェストを読み比べる方法。改革への道筋は描かれているか
2008年10月24日 (金)
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第7章 不況の原因と対策をはっきり示している人は?
2008年10月27日 (月)
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第8章 今、経済政策に必要なのは「ショックセラピー」
2008年10月28日 (火)
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第9章 問題3兄弟。政治家の国民不信、メディアの怠慢、国民の逃避
2008年10月29日 (水)
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第10章 今、日本経済の回復は不可能。行革の後退を防ぐことが重要
2008年10月30日 (木)
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第11章 「格差を縮めよう」ではなく、「貧困を撲滅しよう、底辺を上げよう」
2008年10月31日 (金)
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第12章 評価できる政界再編の基軸を各マニフェストからピックアップ
2008年11月03日 (月)
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第13章 マニフェストには、普通ではできないブレークスルー型のものを書け
2008年11月04日 (火)
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第14章 日本を明るくする2つの方法——教育と政策
2008年11月05日 (水)
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第15章 既得権を維持するためにたくさん法律をつくっている官僚
2008年11月06日 (木)
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第16章 知識集約的なものづくりをしない限り、今の所得は維持できない
2008年11月07日 (金)
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第17章 利害を持つ人が政策意思決定にかかわると、必ずゆがむ
2008年11月10日 (月)
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第18章 日本が競争している相手がどれほど頑張っているか見よ
2008年11月11日 (火)
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