記事・レポート
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~
アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年10月20日
(月)
第2章 政治で10年、経済で10年、伝統で10年。混乱は合計30年
加藤寛: 敬老の日で、私一番こちらに並んで、最初に発言を許していただきました。5分間で意見を言えということでございますので、皆様のお手元に「歴史の流れ」という資料があると思いますが、その資料を使いながら5分間以内に、私の考えを申し上げようと思います。
今、竹中さんが言われたように、これは自民党総裁選の運動でありまして、日本の国を変える運動ではないのです。ですから、この5人の総裁候補者が日本を変えることができるかというと、できるわけがないんです。答えは明らかでございます。
なぜかということについて申し上げておきます。1つの国の動きは、政治、経済、社会混乱とたどってまいりますが、政治の動きからまいりますと、まず政治がガバナンスの窒息をもたらします、「だめになった」ということであります。
この窒息は1987年の中曽根さん、1990年のバブル崩壊というところから起こりまして、橋龍さん、小泉さんと続きまして、小泉さんについては、「徒花小泉」と書いてありますが、小泉さんが懸命になってやってくれたのですが、しかし「徒花」に終わる可能性が強いということです。
ということで並べてまいりますと、大体ここら辺で政治がガバナンスを失って窒息をしたわけであります。
これはなぜかというと、参議院で負けたからであります。参議院で一度負けますと、回復させるには10年かかります。なぜかといいますと、参議院の選挙は大体3年組が行われて、それから6年組が行われるわけでありますが、それぞれが勝っていったとして、3年ずつかかって9年、したがって10年間は参議院のガバナンスの窒息が起こっているわけだからです。
そのことを考えますと、ガバナンスの窒息が大体10年続きます。そして経済が崩壊しまして、回復するまでには、さらに10年かかります。その経済の中心課題は何であったかというと、少子高齢化と、行革およびグローバル化ができないことです。それが日本の大きなマイナスなのであります。
少子高齢化がもたらすものは、生産性と需要の減少でありますが、それらは乗り越えられないものではありません。計算してみますと、少子高齢化による成長率のマイナスは大体0.5%であります。つまり2%成長する可能性があった日本が、実は1.5%以下にとどまるというのが、少子高齢化の1つの結果でございます。
行革は官から民へ経済を変えていかなければならないのですが、官僚主導の経済を、官から民へ変えることはできません。ご承知のように政府が中心になって官民の問題を考えることで、官僚の制度改革を行いましたが、これは極めて重要な観点が抜けておりますので、改革ができません。重要な観点とは何かと申しますと、それは国鉄改革のときと同じでありまして、国鉄改革では、国鉄の職員の首を切る策が抜けておりました。首を切るシステムをつくらなかったら、絶対に改革はできないのです。そのことが今度の官僚の制度改革の場合も抜けておりますから、だめだということであります。
グローバルという点につきましては、官主導でありまして、なかなかハブ空港をつくろうというところまでは進んでおりません。したがって、成長停滞は続きまして、10年の間に必ず増税が行われることになります。
つまり、政治で10年、経済で10年の混乱が起こってくるのでありますが、その間、社会混乱としては、偽証販売や、柔道・大相撲の欠陥、無差別殺人、あるいは教育委員会の汚職といった事件が次々に起こりまして、もう日本の伝統は終わったのか、日本伝統崩落が予想されるのであります。これも10年かからないと立ち直りません。
したがって、全体から申しますと、政治、経済、社会の混乱は、合計30年の周期をもって動きます。これについて、きょうはお話しする暇がありませんので省略をさせていただきますが、30年というこの年数は非常に重要でございまして、30年の間隔でもって進んでいくことになるのでございます。
ガバナンスの窒息が起こっているときに、改革をやろうと言ったってできるわけがありません、だから自民党総裁候補の5人の方は、まことにご苦労様でございますね。結局、自滅する道をたどるだけです。5人の政策にかわって、民主党の小沢代表ならやれるのか。やれるわけがありませんね。したがって、新政党ができるまでは日本の立ち直りは不可能であるということを、私はまず申し上げておきたいと思います。
岸博幸:はい、どうもありがとうございます。では、今の最初の問題提起を踏まえまして、まずこれからきょう参加してくださったメンバーの皆さん、最初に各5人の候補の政権公約を見て、どういう印象を持たれているかというのを数分でお話しいただいて、そのあと、まさにメンバーで議論をしていただこうと思っております。
今、竹中さんが言われたように、これは自民党総裁選の運動でありまして、日本の国を変える運動ではないのです。ですから、この5人の総裁候補者が日本を変えることができるかというと、できるわけがないんです。答えは明らかでございます。
なぜかということについて申し上げておきます。1つの国の動きは、政治、経済、社会混乱とたどってまいりますが、政治の動きからまいりますと、まず政治がガバナンスの窒息をもたらします、「だめになった」ということであります。
この窒息は1987年の中曽根さん、1990年のバブル崩壊というところから起こりまして、橋龍さん、小泉さんと続きまして、小泉さんについては、「徒花小泉」と書いてありますが、小泉さんが懸命になってやってくれたのですが、しかし「徒花」に終わる可能性が強いということです。
ということで並べてまいりますと、大体ここら辺で政治がガバナンスを失って窒息をしたわけであります。
これはなぜかというと、参議院で負けたからであります。参議院で一度負けますと、回復させるには10年かかります。なぜかといいますと、参議院の選挙は大体3年組が行われて、それから6年組が行われるわけでありますが、それぞれが勝っていったとして、3年ずつかかって9年、したがって10年間は参議院のガバナンスの窒息が起こっているわけだからです。
そのことを考えますと、ガバナンスの窒息が大体10年続きます。そして経済が崩壊しまして、回復するまでには、さらに10年かかります。その経済の中心課題は何であったかというと、少子高齢化と、行革およびグローバル化ができないことです。それが日本の大きなマイナスなのであります。
少子高齢化がもたらすものは、生産性と需要の減少でありますが、それらは乗り越えられないものではありません。計算してみますと、少子高齢化による成長率のマイナスは大体0.5%であります。つまり2%成長する可能性があった日本が、実は1.5%以下にとどまるというのが、少子高齢化の1つの結果でございます。
行革は官から民へ経済を変えていかなければならないのですが、官僚主導の経済を、官から民へ変えることはできません。ご承知のように政府が中心になって官民の問題を考えることで、官僚の制度改革を行いましたが、これは極めて重要な観点が抜けておりますので、改革ができません。重要な観点とは何かと申しますと、それは国鉄改革のときと同じでありまして、国鉄改革では、国鉄の職員の首を切る策が抜けておりました。首を切るシステムをつくらなかったら、絶対に改革はできないのです。そのことが今度の官僚の制度改革の場合も抜けておりますから、だめだということであります。
グローバルという点につきましては、官主導でありまして、なかなかハブ空港をつくろうというところまでは進んでおりません。したがって、成長停滞は続きまして、10年の間に必ず増税が行われることになります。
つまり、政治で10年、経済で10年の混乱が起こってくるのでありますが、その間、社会混乱としては、偽証販売や、柔道・大相撲の欠陥、無差別殺人、あるいは教育委員会の汚職といった事件が次々に起こりまして、もう日本の伝統は終わったのか、日本伝統崩落が予想されるのであります。これも10年かからないと立ち直りません。
したがって、全体から申しますと、政治、経済、社会の混乱は、合計30年の周期をもって動きます。これについて、きょうはお話しする暇がありませんので省略をさせていただきますが、30年というこの年数は非常に重要でございまして、30年の間隔でもって進んでいくことになるのでございます。
ガバナンスの窒息が起こっているときに、改革をやろうと言ったってできるわけがありません、だから自民党総裁候補の5人の方は、まことにご苦労様でございますね。結局、自滅する道をたどるだけです。5人の政策にかわって、民主党の小沢代表ならやれるのか。やれるわけがありませんね。したがって、新政党ができるまでは日本の立ち直りは不可能であるということを、私はまず申し上げておきたいと思います。
岸博幸:はい、どうもありがとうございます。では、今の最初の問題提起を踏まえまして、まずこれからきょう参加してくださったメンバーの皆さん、最初に各5人の候補の政権公約を見て、どういう印象を持たれているかというのを数分でお話しいただいて、そのあと、まさにメンバーで議論をしていただこうと思っております。
※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~ インデックス
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第1章 国民はこの事態をどう評価し、あしたに向かってどう行動するのか
2008年10月15日 (水)
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第2章 政治で10年、経済で10年、伝統で10年。混乱は合計30年
2008年10月20日 (月)
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第3章 選挙のキーポイントは「成長なくして老後もなし」
2008年10月21日 (火)
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第4章 建築基準法、貸金業法、日雇い派遣——規制の問題点
2008年10月22日 (水)
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第5章 日本再生に向けた戦略の最重要ポイントは「何を捨てるか」
2008年10月23日 (木)
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第6章 マニフェストを読み比べる方法。改革への道筋は描かれているか
2008年10月24日 (金)
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第7章 不況の原因と対策をはっきり示している人は?
2008年10月27日 (月)
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第8章 今、経済政策に必要なのは「ショックセラピー」
2008年10月28日 (火)
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第9章 問題3兄弟。政治家の国民不信、メディアの怠慢、国民の逃避
2008年10月29日 (水)
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第10章 今、日本経済の回復は不可能。行革の後退を防ぐことが重要
2008年10月30日 (木)
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第11章 「格差を縮めよう」ではなく、「貧困を撲滅しよう、底辺を上げよう」
2008年10月31日 (金)
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第12章 評価できる政界再編の基軸を各マニフェストからピックアップ
2008年11月03日 (月)
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第13章 マニフェストには、普通ではできないブレークスルー型のものを書け
2008年11月04日 (火)
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第14章 日本を明るくする2つの方法——教育と政策
2008年11月05日 (水)
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第15章 既得権を維持するためにたくさん法律をつくっている官僚
2008年11月06日 (木)
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第16章 知識集約的なものづくりをしない限り、今の所得は維持できない
2008年11月07日 (金)
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第17章 利害を持つ人が政策意思決定にかかわると、必ずゆがむ
2008年11月10日 (月)
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第18章 日本が競争している相手がどれほど頑張っているか見よ
2008年11月11日 (火)
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