記事・レポート
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~
アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年11月06日
(木)
第15章 既得権を維持するためにたくさん法律をつくっている官僚
野村修也:あまり時間もなくなってきていますが、少し発言させていただきたいのです。
今の話も関連するのですが、最初の方に竹中さんから官製不況の話、あるいは規制が多くなってしまっているという話があったと思うのですが、これを考えるときに、たくさん法律ができているのですね。
私は法律家ですが、平成に入ってからつくられた法律の数は明治維新からの20年よりも、はるかに多いのです。わが国は明治維新のときに、たくさんの法律をつくったわけなんですけれども、それをはるかに超えるぐらいの数の法律が毎日のように粗製乱造されているという状況があるわけなんです。
これは一方において、木村さんがおっしゃったように、経済をシュリンクさせてしまうのです。たくさんのハードルが、100メートル走のときに100本並んでいるようなもので、悪いことをしない人も100回飛ばないと先に進めないという、こういう経済情勢をつくっています。それを取っ払ってもらった方が、ザーッと走っていけるのですが、経済に悪影響を及ぼしながら、一方でもうかっている人がいるのです。もうかるからやっているわけです。一体だれがやっているのか、私は弁護士なので、「私がもうかっています」というふうに言ってしまうと元も子もないわけなんですけれど(笑)。
そうじゃなくて、これはやはり天下り先がなくなるとか、バッシングを受けている、そういった公務員の人たちが自分たちの存在意義をどんどん拡張していくためには、法律をつくるのが一番いいわけなんです。最近の法律の特徴は、必ず法律の中に「何とか監視機構」とかというのが入っていることです。それができ上がりますと、自分たちが行く、こういう段取りでつくられているわけです。
まさにそこに問題点があります。先ほど来から、いろいろな問題が出てくる、最後に何となく官僚批判になるので、「いつもそこで官僚批判だ」とおっしゃるかもしれませんが、ものすごく深刻な問題を、ここははらんでいるということを考えなければいけないですね。
さらに、例えば法改正がしっかり行われて、いろいろな形の改正が行われたにもかかわらず、それに見合った形の経済の対応ができていない部分というのがあるのです。例えば、よく出てきています、いわゆる「埋蔵金」といわれているものがありますが、埋蔵金のように、法改正したら、もう備えなくてよくなっているものがたくさんあるんです。「もう、それは支出しなくなりましたよ」と言っているのに、なぜか備えがあるのです。
例えば、失業保険などは法改正が行われて、あまり出されなくなったわけです。ところが、将来の失業保険の備えとして、準備金をたくさん積んでいる形になっています。制度が変わったのに、経済的な対応が十分行われていないという部分もあるわけなんです。こういったところをきっちり詰めていく、そこを掘り起こしていくという作業が、まず行われなければ、すべては始まらないのではないかと思うのです。
そういう意味では、私は経済というよりは、むしろ社会の制度、あるいは法律に対して、相当程度切り込んでいかなければ日本の将来はないのではないかと思っています。
木村剛:今、野村さんが言われた点は非常に大事なので1点だけ。残念ながら日本では毎日のように殺人事件が起こっていますが、殺人が起こるたびに、刑法がどんどんどんどん改正されたらどうなると思われますか。そんなばかなことはどこの国もやっていませんよね。
建築基準法の改正というのは、どういうふうなきっかけで起こったか、皆さん覚えていらっしゃいますか。姉歯という方が、小島という人の片棒を担いで、大疑獄事件をやったというふうにマスコミで報じられましたけれども、個人の法律違反をもって、すべての法律を改正するというばかな国は、日本だけです。
そして、建築基準法の改正だけで終わったと皆さん思っているかもしれませんけれど、次に何が起こっているかというと、今度は建築士法改正というのが出ます。そして今度、新しく瑕疵担保のための保険をつくるのですが、そのために、わざわざ、また新たに官僚の組織ができるんです。
何のための本当の法律の改正か。別に皆さんのためにやっているわけではないのです。そもそもヒューザーの小島さんがつくったグランドステージは地震で1回たりともヒビも入っていません。でも、住民は「出ろ」と言われましたよね。「出ろ」と言われて、もう一度、その人たちが資金をためて、もう一度建てようとしているのです。建てようとしたら、耐震構造が問題で建てさせてもらえない。一番の被害者を一番いじめているのは、あの改正建築基準法なんです。その実態をぜひ知っていただきたいと思います。
今の話も関連するのですが、最初の方に竹中さんから官製不況の話、あるいは規制が多くなってしまっているという話があったと思うのですが、これを考えるときに、たくさん法律ができているのですね。
私は法律家ですが、平成に入ってからつくられた法律の数は明治維新からの20年よりも、はるかに多いのです。わが国は明治維新のときに、たくさんの法律をつくったわけなんですけれども、それをはるかに超えるぐらいの数の法律が毎日のように粗製乱造されているという状況があるわけなんです。
これは一方において、木村さんがおっしゃったように、経済をシュリンクさせてしまうのです。たくさんのハードルが、100メートル走のときに100本並んでいるようなもので、悪いことをしない人も100回飛ばないと先に進めないという、こういう経済情勢をつくっています。それを取っ払ってもらった方が、ザーッと走っていけるのですが、経済に悪影響を及ぼしながら、一方でもうかっている人がいるのです。もうかるからやっているわけです。一体だれがやっているのか、私は弁護士なので、「私がもうかっています」というふうに言ってしまうと元も子もないわけなんですけれど(笑)。
そうじゃなくて、これはやはり天下り先がなくなるとか、バッシングを受けている、そういった公務員の人たちが自分たちの存在意義をどんどん拡張していくためには、法律をつくるのが一番いいわけなんです。最近の法律の特徴は、必ず法律の中に「何とか監視機構」とかというのが入っていることです。それができ上がりますと、自分たちが行く、こういう段取りでつくられているわけです。
まさにそこに問題点があります。先ほど来から、いろいろな問題が出てくる、最後に何となく官僚批判になるので、「いつもそこで官僚批判だ」とおっしゃるかもしれませんが、ものすごく深刻な問題を、ここははらんでいるということを考えなければいけないですね。
さらに、例えば法改正がしっかり行われて、いろいろな形の改正が行われたにもかかわらず、それに見合った形の経済の対応ができていない部分というのがあるのです。例えば、よく出てきています、いわゆる「埋蔵金」といわれているものがありますが、埋蔵金のように、法改正したら、もう備えなくてよくなっているものがたくさんあるんです。「もう、それは支出しなくなりましたよ」と言っているのに、なぜか備えがあるのです。
例えば、失業保険などは法改正が行われて、あまり出されなくなったわけです。ところが、将来の失業保険の備えとして、準備金をたくさん積んでいる形になっています。制度が変わったのに、経済的な対応が十分行われていないという部分もあるわけなんです。こういったところをきっちり詰めていく、そこを掘り起こしていくという作業が、まず行われなければ、すべては始まらないのではないかと思うのです。
そういう意味では、私は経済というよりは、むしろ社会の制度、あるいは法律に対して、相当程度切り込んでいかなければ日本の将来はないのではないかと思っています。
木村剛:今、野村さんが言われた点は非常に大事なので1点だけ。残念ながら日本では毎日のように殺人事件が起こっていますが、殺人が起こるたびに、刑法がどんどんどんどん改正されたらどうなると思われますか。そんなばかなことはどこの国もやっていませんよね。
建築基準法の改正というのは、どういうふうなきっかけで起こったか、皆さん覚えていらっしゃいますか。姉歯という方が、小島という人の片棒を担いで、大疑獄事件をやったというふうにマスコミで報じられましたけれども、個人の法律違反をもって、すべての法律を改正するというばかな国は、日本だけです。
そして、建築基準法の改正だけで終わったと皆さん思っているかもしれませんけれど、次に何が起こっているかというと、今度は建築士法改正というのが出ます。そして今度、新しく瑕疵担保のための保険をつくるのですが、そのために、わざわざ、また新たに官僚の組織ができるんです。
何のための本当の法律の改正か。別に皆さんのためにやっているわけではないのです。そもそもヒューザーの小島さんがつくったグランドステージは地震で1回たりともヒビも入っていません。でも、住民は「出ろ」と言われましたよね。「出ろ」と言われて、もう一度、その人たちが資金をためて、もう一度建てようとしているのです。建てようとしたら、耐震構造が問題で建てさせてもらえない。一番の被害者を一番いじめているのは、あの改正建築基準法なんです。その実態をぜひ知っていただきたいと思います。
※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~ インデックス
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第1章 国民はこの事態をどう評価し、あしたに向かってどう行動するのか
2008年10月15日 (水)
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第2章 政治で10年、経済で10年、伝統で10年。混乱は合計30年
2008年10月20日 (月)
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第3章 選挙のキーポイントは「成長なくして老後もなし」
2008年10月21日 (火)
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第4章 建築基準法、貸金業法、日雇い派遣——規制の問題点
2008年10月22日 (水)
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第5章 日本再生に向けた戦略の最重要ポイントは「何を捨てるか」
2008年10月23日 (木)
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第6章 マニフェストを読み比べる方法。改革への道筋は描かれているか
2008年10月24日 (金)
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第7章 不況の原因と対策をはっきり示している人は?
2008年10月27日 (月)
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第8章 今、経済政策に必要なのは「ショックセラピー」
2008年10月28日 (火)
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第9章 問題3兄弟。政治家の国民不信、メディアの怠慢、国民の逃避
2008年10月29日 (水)
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第10章 今、日本経済の回復は不可能。行革の後退を防ぐことが重要
2008年10月30日 (木)
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第11章 「格差を縮めよう」ではなく、「貧困を撲滅しよう、底辺を上げよう」
2008年10月31日 (金)
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第12章 評価できる政界再編の基軸を各マニフェストからピックアップ
2008年11月03日 (月)
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第13章 マニフェストには、普通ではできないブレークスルー型のものを書け
2008年11月04日 (火)
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第14章 日本を明るくする2つの方法——教育と政策
2008年11月05日 (水)
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第15章 既得権を維持するためにたくさん法律をつくっている官僚
2008年11月06日 (木)
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第16章 知識集約的なものづくりをしない限り、今の所得は維持できない
2008年11月07日 (金)
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第17章 利害を持つ人が政策意思決定にかかわると、必ずゆがむ
2008年11月10日 (月)
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第18章 日本が競争している相手がどれほど頑張っているか見よ
2008年11月11日 (火)
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