記事・レポート
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~
アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年10月31日
(金)
第11章 「格差を縮めよう」ではなく、「貧困を撲滅しよう、底辺を上げよう」
岸博幸:今の厳しい問題提起を踏まえて、木村さん、どうでしょうか、これからどうなっていくか、外からどう見られていくのかというのは。
木村剛:最近、政治家の方とか官僚の方たちとお話をしていると、「日本というのは、すごい嫉妬の社会なんだな」ということを感じるのです。というのは、格差論というのがものすごく好きな一派の方がいらっしゃいまして、「格差は嫌だ」という話をされるわけです。「じゃあ、お父さん、お母さん、みんな一緒ですか?」というと、みんな違うわけですけれど、そういう議論は全然しなくて、とにかく「差があるのはいけない」という議論をしがちなんです。
その議論は別に日本国内だけではありません。最近、私が聞く質問というのは、大体こうです。「木村さん、もう中国はだめですよね。これでバブルが弾けて中国は落ちますよね」「アメリカもサブプライム問題でだめですよね」と。サッチャーが言いました、「お金持ちを貧乏にしても、貧乏人はお金持ちになりません」と。でも日本は違います。「お金持ちが貧乏になったら、みんなスッとするよね、気持ちいいよね、だから、みんなで貧乏になろうよ」というようなメッセージを、格差論を言っていらっしゃる方は、どうも、言外に言っていらっしゃるのかなと思います。
本当はそうではなくて、貧困を撲滅しよう、もっと底辺を上げようじゃないか、もっと生活レベル、みんなで上げようと言うべきところなのに、「格差を縮めよう」というくだらない嫉妬の話をいまだにしている。だから、「中国はこれでバブルで落ちるだろう、ざまあみろ」「アメリカはこれでサブプラムローンで落ちる、ざまあみろ」「ああ、よかった、日本と同じところまで落ちてくれる」というくだらない議論をしているような感じが、ものすごくするのです。
先ほどの加藤先生の悲観論に輪をかけて悲観論を言うようで申しわけないのですけれど、ここを変えないと、日本の将来は残念ながら本当に暗いなと思います。
私は覚えているのですけれども、十数年前、「イタリアというのはどうしようもない国だな、自国の財政すらコントロールできないのにG7に出てくるなんて恥ずかしいと思わないのか?」と、当時の大蔵省の人たちはそう言っていました。今日本は当時のイタリアをはるかに抜く、ひどい財政状況にありながら、G7に出ています(笑)。
だけれど、恐らく彼らは、最後の最後、皆さんの1,500兆円の個人金融資産を我が物にして、何とか帳尻を合わせようとしているんだと思いますよ、実際。
金融商品販売法という法律がありまして、今株を買うにしても、投資信託を買うにしても、何か知らないけれど、2時間説明されないと買えないみたいな、くだらない世の中になってきているのです。70歳を超えると、「これは危ないかもしれないから、おじいちゃん、買わない方がいいんじゃないですか。ちゃんとお母さんの判子をもらいなさいよ」みたいな話になっている。
ところが、宝くじと国債だけは、何も説明しなくていいのです。おかしいじゃないですか。宝くじこそ危ないですよ(笑)。買った瞬間に60円損するのですよ。だったら、宝くじを買うたびに、「本当にお買いになられるんですか。これ100円買うと期待値は40円なんですけれど本当によろしいんですね?」と確認してから買わせないと、だめじゃないですか。
だけれども、お国は、これは全部お国が吸い上げる収入だから、そういう説明はしなくていいと。国債だって本当にそうですよね。窓口で「お客さん、本当に日本国債、買うんですか。G7の中でも一番ひどいですよ」というようなことを本当に言わせるのか。そのあたりに欺瞞があるんですね。
コムスンは事業譲渡された。しかし、社会保険庁は、あれだけやってもつぶれない。何か知らない、わけのわからない何とか年金機構に行って、それで何とかしますと言っているわけでしょう。「じゃあ、いかない人はどうするんですか?」「厚生労働省に残ります」というのです。それじゃあ1階級特進じゃないですか。わけがわからないですよ。こういうところを直さないとね。
だから、少なくとも社会保険庁に関しては、今回の5人の方は国民に対して明確なメッセージを発するべきだったと思いますよ。そもそも日本国憲法で罷免権があるわけで、我々は国家公務員を罷免できるんです。ただ手続き法がつくられていないのです。
誰かが、「私は、国家公務員の罷免法の手続きをつくります」と言ったら、絶対に賛成しますよ。だって、あんなひどいことをやった、詐欺まがいの社会保険庁の職員を首にできないんですよ。そんなことを放置しているリーダーがリーダーといえるわけはないと、私は思います。
今からでも遅くないから、5人の方には、「社会保険庁の職員、俺はこれは許さない、こうする」ということをぜひ言ってもらいたいと思っています。
木村剛:最近、政治家の方とか官僚の方たちとお話をしていると、「日本というのは、すごい嫉妬の社会なんだな」ということを感じるのです。というのは、格差論というのがものすごく好きな一派の方がいらっしゃいまして、「格差は嫌だ」という話をされるわけです。「じゃあ、お父さん、お母さん、みんな一緒ですか?」というと、みんな違うわけですけれど、そういう議論は全然しなくて、とにかく「差があるのはいけない」という議論をしがちなんです。
その議論は別に日本国内だけではありません。最近、私が聞く質問というのは、大体こうです。「木村さん、もう中国はだめですよね。これでバブルが弾けて中国は落ちますよね」「アメリカもサブプライム問題でだめですよね」と。サッチャーが言いました、「お金持ちを貧乏にしても、貧乏人はお金持ちになりません」と。でも日本は違います。「お金持ちが貧乏になったら、みんなスッとするよね、気持ちいいよね、だから、みんなで貧乏になろうよ」というようなメッセージを、格差論を言っていらっしゃる方は、どうも、言外に言っていらっしゃるのかなと思います。
本当はそうではなくて、貧困を撲滅しよう、もっと底辺を上げようじゃないか、もっと生活レベル、みんなで上げようと言うべきところなのに、「格差を縮めよう」というくだらない嫉妬の話をいまだにしている。だから、「中国はこれでバブルで落ちるだろう、ざまあみろ」「アメリカはこれでサブプラムローンで落ちる、ざまあみろ」「ああ、よかった、日本と同じところまで落ちてくれる」というくだらない議論をしているような感じが、ものすごくするのです。
先ほどの加藤先生の悲観論に輪をかけて悲観論を言うようで申しわけないのですけれど、ここを変えないと、日本の将来は残念ながら本当に暗いなと思います。
私は覚えているのですけれども、十数年前、「イタリアというのはどうしようもない国だな、自国の財政すらコントロールできないのにG7に出てくるなんて恥ずかしいと思わないのか?」と、当時の大蔵省の人たちはそう言っていました。今日本は当時のイタリアをはるかに抜く、ひどい財政状況にありながら、G7に出ています(笑)。
だけれど、恐らく彼らは、最後の最後、皆さんの1,500兆円の個人金融資産を我が物にして、何とか帳尻を合わせようとしているんだと思いますよ、実際。
金融商品販売法という法律がありまして、今株を買うにしても、投資信託を買うにしても、何か知らないけれど、2時間説明されないと買えないみたいな、くだらない世の中になってきているのです。70歳を超えると、「これは危ないかもしれないから、おじいちゃん、買わない方がいいんじゃないですか。ちゃんとお母さんの判子をもらいなさいよ」みたいな話になっている。
ところが、宝くじと国債だけは、何も説明しなくていいのです。おかしいじゃないですか。宝くじこそ危ないですよ(笑)。買った瞬間に60円損するのですよ。だったら、宝くじを買うたびに、「本当にお買いになられるんですか。これ100円買うと期待値は40円なんですけれど本当によろしいんですね?」と確認してから買わせないと、だめじゃないですか。
だけれども、お国は、これは全部お国が吸い上げる収入だから、そういう説明はしなくていいと。国債だって本当にそうですよね。窓口で「お客さん、本当に日本国債、買うんですか。G7の中でも一番ひどいですよ」というようなことを本当に言わせるのか。そのあたりに欺瞞があるんですね。
コムスンは事業譲渡された。しかし、社会保険庁は、あれだけやってもつぶれない。何か知らない、わけのわからない何とか年金機構に行って、それで何とかしますと言っているわけでしょう。「じゃあ、いかない人はどうするんですか?」「厚生労働省に残ります」というのです。それじゃあ1階級特進じゃないですか。わけがわからないですよ。こういうところを直さないとね。
だから、少なくとも社会保険庁に関しては、今回の5人の方は国民に対して明確なメッセージを発するべきだったと思いますよ。そもそも日本国憲法で罷免権があるわけで、我々は国家公務員を罷免できるんです。ただ手続き法がつくられていないのです。
誰かが、「私は、国家公務員の罷免法の手続きをつくります」と言ったら、絶対に賛成しますよ。だって、あんなひどいことをやった、詐欺まがいの社会保険庁の職員を首にできないんですよ。そんなことを放置しているリーダーがリーダーといえるわけはないと、私は思います。
今からでも遅くないから、5人の方には、「社会保険庁の職員、俺はこれは許さない、こうする」ということをぜひ言ってもらいたいと思っています。
※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~ インデックス
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第1章 国民はこの事態をどう評価し、あしたに向かってどう行動するのか
2008年10月15日 (水)
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第2章 政治で10年、経済で10年、伝統で10年。混乱は合計30年
2008年10月20日 (月)
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第3章 選挙のキーポイントは「成長なくして老後もなし」
2008年10月21日 (火)
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第4章 建築基準法、貸金業法、日雇い派遣——規制の問題点
2008年10月22日 (水)
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第5章 日本再生に向けた戦略の最重要ポイントは「何を捨てるか」
2008年10月23日 (木)
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第6章 マニフェストを読み比べる方法。改革への道筋は描かれているか
2008年10月24日 (金)
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第7章 不況の原因と対策をはっきり示している人は?
2008年10月27日 (月)
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第8章 今、経済政策に必要なのは「ショックセラピー」
2008年10月28日 (火)
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第9章 問題3兄弟。政治家の国民不信、メディアの怠慢、国民の逃避
2008年10月29日 (水)
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第10章 今、日本経済の回復は不可能。行革の後退を防ぐことが重要
2008年10月30日 (木)
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第11章 「格差を縮めよう」ではなく、「貧困を撲滅しよう、底辺を上げよう」
2008年10月31日 (金)
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第12章 評価できる政界再編の基軸を各マニフェストからピックアップ
2008年11月03日 (月)
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第13章 マニフェストには、普通ではできないブレークスルー型のものを書け
2008年11月04日 (火)
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第14章 日本を明るくする2つの方法——教育と政策
2008年11月05日 (水)
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第15章 既得権を維持するためにたくさん法律をつくっている官僚
2008年11月06日 (木)
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第16章 知識集約的なものづくりをしない限り、今の所得は維持できない
2008年11月07日 (金)
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第17章 利害を持つ人が政策意思決定にかかわると、必ずゆがむ
2008年11月10日 (月)
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第18章 日本が競争している相手がどれほど頑張っているか見よ
2008年11月11日 (火)
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