記事・レポート
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~
アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年11月04日
(火)
第13章 マニフェストには、普通ではできないブレークスルー型のものを書け
竹中平蔵:今の話に関連して、いくつか考えるところを申し上げたいのですが、実は政策を決めるというのは、すごく複雑な手続きが要るのです。普通、政府の中でやるときは審議会で1年か2年かけて議論をします。そして、出てきたら、それをパブリックオピニオンにかけて、またいろいろな国民の意見を聞く。
一方で、これは政府の話ですけれど、政府与党一体だから、与党で、つまり、自民党と公明党の各部会で議論をして、政調会で決めて、そして総務会で最終決定する。総務会と同時に、政府の方は閣議で決定する。このように、ものすごく複雑な手続きが要るので、その間にものすごい骨抜きになって、グタグタになるわけです。
だから、何が重要かというと、実はマニフェストがすごく重要なんです。マニフェストにガーンと「やる」と書きます。そしてその人が総理総裁になったら、それをやらざるを得ないのです。郵政民営化は、だからできたんです。郵政民営化は、郵政省の審議会で「郵政民営化するかどうか」を議論して、部会で議論をしていたら絶対できません。しかし、小泉さんのような変わった人が、「俺はこのために総理になる」というふうにガーンと掲げて、そして総理になってしまったから、実現せざるを得なくなった。
だから、マニフェストでは、「普通ではできないようなブレークスルー型のものを書き込む」というのが、すごく重要なんです。ブレークスルーの問題として書かれていることは何かといいますと、よく見てみると2人しかないですね。
1人は石破さん。石破さんは「議員の歳費、国会議員の歳費を2割削減する」と書いている。これは普通ではできません。
一番たくさん書いているのは小池さん。小池さんはすごいですよ、「一院制にする」と書いているのです。衆議院と参議院を一院制にする。やればいいですよ。「国会議員の数を500人以下にする」、そして「東大を民営化する」というのもいいですよ。そういうことを入れているのは、石破さんが1つと、小池さんだけ。ほかは全くありません。役人とうまくやっていこうという、そういう匂いがプンプンします。
与謝野さんは「景気対策としての財政出動はしない」と書いているんです。ところが、この間の対策は、「景気刺激のための財政出動を定額減税という形でやる」という。言っていることと、やっていることが全然違うんです。言っていることとやっていることが、こうも足元で、こんなに極端に違っていいのか。これはやはりリーダーとしての資質の問題だと、私は思います。
繰り返しますけれど、そういうことが何も追求されていないのではないか。
大変見通しが暗い、厳しい状況だということが、加藤先生と木村さんから報告があって、私も実はこの間、小泉さんに、「相当経済は悪くなると思うし、相当政治も悪くなると思うし、見通しは非常に暗いのではないかと思っています」と言いました。小泉さんは、「うん、厳しいかもしれないな。しかし、ここまできたら、そんなに極端な逆戻りができないというのもあるよな」と。小泉さんはリアリストですから、その辺、いろいろな可能性を考えておられると思うのです。
一方で、これは政府の話ですけれど、政府与党一体だから、与党で、つまり、自民党と公明党の各部会で議論をして、政調会で決めて、そして総務会で最終決定する。総務会と同時に、政府の方は閣議で決定する。このように、ものすごく複雑な手続きが要るので、その間にものすごい骨抜きになって、グタグタになるわけです。
だから、何が重要かというと、実はマニフェストがすごく重要なんです。マニフェストにガーンと「やる」と書きます。そしてその人が総理総裁になったら、それをやらざるを得ないのです。郵政民営化は、だからできたんです。郵政民営化は、郵政省の審議会で「郵政民営化するかどうか」を議論して、部会で議論をしていたら絶対できません。しかし、小泉さんのような変わった人が、「俺はこのために総理になる」というふうにガーンと掲げて、そして総理になってしまったから、実現せざるを得なくなった。
だから、マニフェストでは、「普通ではできないようなブレークスルー型のものを書き込む」というのが、すごく重要なんです。ブレークスルーの問題として書かれていることは何かといいますと、よく見てみると2人しかないですね。
1人は石破さん。石破さんは「議員の歳費、国会議員の歳費を2割削減する」と書いている。これは普通ではできません。
一番たくさん書いているのは小池さん。小池さんはすごいですよ、「一院制にする」と書いているのです。衆議院と参議院を一院制にする。やればいいですよ。「国会議員の数を500人以下にする」、そして「東大を民営化する」というのもいいですよ。そういうことを入れているのは、石破さんが1つと、小池さんだけ。ほかは全くありません。役人とうまくやっていこうという、そういう匂いがプンプンします。
与謝野さんは「景気対策としての財政出動はしない」と書いているんです。ところが、この間の対策は、「景気刺激のための財政出動を定額減税という形でやる」という。言っていることと、やっていることが全然違うんです。言っていることとやっていることが、こうも足元で、こんなに極端に違っていいのか。これはやはりリーダーとしての資質の問題だと、私は思います。
繰り返しますけれど、そういうことが何も追求されていないのではないか。
大変見通しが暗い、厳しい状況だということが、加藤先生と木村さんから報告があって、私も実はこの間、小泉さんに、「相当経済は悪くなると思うし、相当政治も悪くなると思うし、見通しは非常に暗いのではないかと思っています」と言いました。小泉さんは、「うん、厳しいかもしれないな。しかし、ここまできたら、そんなに極端な逆戻りができないというのもあるよな」と。小泉さんはリアリストですから、その辺、いろいろな可能性を考えておられると思うのです。
※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~ インデックス
-
第1章 国民はこの事態をどう評価し、あしたに向かってどう行動するのか
2008年10月15日 (水)
-
第2章 政治で10年、経済で10年、伝統で10年。混乱は合計30年
2008年10月20日 (月)
-
第3章 選挙のキーポイントは「成長なくして老後もなし」
2008年10月21日 (火)
-
第4章 建築基準法、貸金業法、日雇い派遣——規制の問題点
2008年10月22日 (水)
-
第5章 日本再生に向けた戦略の最重要ポイントは「何を捨てるか」
2008年10月23日 (木)
-
第6章 マニフェストを読み比べる方法。改革への道筋は描かれているか
2008年10月24日 (金)
-
第7章 不況の原因と対策をはっきり示している人は?
2008年10月27日 (月)
-
第8章 今、経済政策に必要なのは「ショックセラピー」
2008年10月28日 (火)
-
第9章 問題3兄弟。政治家の国民不信、メディアの怠慢、国民の逃避
2008年10月29日 (水)
-
第10章 今、日本経済の回復は不可能。行革の後退を防ぐことが重要
2008年10月30日 (木)
-
第11章 「格差を縮めよう」ではなく、「貧困を撲滅しよう、底辺を上げよう」
2008年10月31日 (金)
-
第12章 評価できる政界再編の基軸を各マニフェストからピックアップ
2008年11月03日 (月)
-
第13章 マニフェストには、普通ではできないブレークスルー型のものを書け
2008年11月04日 (火)
-
第14章 日本を明るくする2つの方法——教育と政策
2008年11月05日 (水)
-
第15章 既得権を維持するためにたくさん法律をつくっている官僚
2008年11月06日 (木)
-
第16章 知識集約的なものづくりをしない限り、今の所得は維持できない
2008年11月07日 (金)
-
第17章 利害を持つ人が政策意思決定にかかわると、必ずゆがむ
2008年11月10日 (月)
-
第18章 日本が競争している相手がどれほど頑張っているか見よ
2008年11月11日 (火)
注目の記事
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 12月17日 (火) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第1回。近著『きみのお金は誰のため』が25万部超のベストセラーとなっている、社会的金融教育....
「そもそもお金って何?未来をつくるためのお金の教養」
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」