記事・レポート
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間
~今求められる消費者の品格~
BIZセミナーその他
更新日 : 2009年04月27日
(月)
第13章 価格を追求するアメリカ、品質を追及する日本
サラ・ボンジョルニ: 先生がおっしゃったことで非常に興味深いのは、現地の食品に関してのお話です。私の感想なのですが、例えば途上国の方たちは少ないリソースをできるだけ使いたいでしょうし、今後、例えば食料がどういうふうに生産地から実際の消費者まで移動しているのかといったことに対する認識を変え、意識を高めていただきたいと思うのです。
何かを買うときには、そこに伴う生産プロセスがあるということを皆さんに理解していただければ、環境問題にもいい影響があるのではないかと思います。
坂東眞理子: アメリカはこれまであまり環境問題に熱心な国ではなかったと思うのですが、環境について良心的な消費者の人たちが少しずつ増えてきて、フード・マイレージのような考え方にも共感する人が増えてきたという気がします。
私が『チャイナフリー:中国製品なしの1年間』のなかで一番印象的だったのは、チャイナフリーの暮らしを始める前から、例えば「自分の買うジーンズ150ドルは、アフガニスタンの人の年収の何割なんだろう」とかいうように、自分の使うお金を貧しい国の人たちの所得と比較していたことです。「こんなものを買っていいのかしら?」と考える習慣というのは、日本人にはとても少ないと思うのですが、アメリカの人たちでも、そこまで考えている人はあまり多くはないですよね? サラさんが特別なのでしょうか。
サラ・ボンジョルニ: 私はCIAの刊行物『ザ・ワールド・ファクトブック』を読み、多くのいろいろな国の数字が頭の中に残っていたのではないかと思います。
私が1つ興味があるのは、バーゲンハンティングに関してで、価格を非常に気にする人たちが多いということです。安いものに消費者が流れてしまうことで、どういった影響があると思いますか? 消費者だけではなく、日本社会全体にも、価値ではなく価格追求ということがあると思いますが。
坂東眞理子: 日本の消費者は、輸入品に対しては、値段よりも安全の問題に非常に関心が深いといわれています。実は昨年(2007年)、日本で中国製の餃子に毒が入っていたという問題があったのですが、その後、中国から輸入した食品を「国産だ」と偽って売ったりするような例がたくさんあり、大変消費者の怒りを買っています。
嘘をつくのは、もちろん厳しく禁止されるべきだと思うのですが、一般に日本の消費者は、自分の消費が世界の経済とつながっているとか、自分たちの消費スタイルが環境とつながっているという意識は比較的弱いのではないかという気がします。それよりも、より質のいいものを求めます。性能に対しては、日本の消費者はとても厳しいのです。
例えばキュウリが曲がっている、衣服の縫い目がそろっていない、電気製品にちょっとでもゆがみがあるなど、そうした欠点があるということに対してはすごくシビアです。ですから、日本製品は性能はいいんだけれど価格が高い傾向があります。これには、高いからむだな消費を抑えるという側面もあるのかなという気もして、ちょっと複雑な感じがします。
それに比べると、アメリカの一般的な人たちは、ものの性能の高さ、質の高さということをそれほどシビアに求めないような気がしますけれど、どう思いますか。
サラ・ボンジョルニ: やはり、価格ですね。価格にシビアだと思います。例えば、ウォールマートは非常に成功しているビジネスです。
(その14に続く、全15回)
何かを買うときには、そこに伴う生産プロセスがあるということを皆さんに理解していただければ、環境問題にもいい影響があるのではないかと思います。
坂東眞理子: アメリカはこれまであまり環境問題に熱心な国ではなかったと思うのですが、環境について良心的な消費者の人たちが少しずつ増えてきて、フード・マイレージのような考え方にも共感する人が増えてきたという気がします。
私が『チャイナフリー:中国製品なしの1年間』のなかで一番印象的だったのは、チャイナフリーの暮らしを始める前から、例えば「自分の買うジーンズ150ドルは、アフガニスタンの人の年収の何割なんだろう」とかいうように、自分の使うお金を貧しい国の人たちの所得と比較していたことです。「こんなものを買っていいのかしら?」と考える習慣というのは、日本人にはとても少ないと思うのですが、アメリカの人たちでも、そこまで考えている人はあまり多くはないですよね? サラさんが特別なのでしょうか。
サラ・ボンジョルニ: 私はCIAの刊行物『ザ・ワールド・ファクトブック』を読み、多くのいろいろな国の数字が頭の中に残っていたのではないかと思います。
私が1つ興味があるのは、バーゲンハンティングに関してで、価格を非常に気にする人たちが多いということです。安いものに消費者が流れてしまうことで、どういった影響があると思いますか? 消費者だけではなく、日本社会全体にも、価値ではなく価格追求ということがあると思いますが。
坂東眞理子: 日本の消費者は、輸入品に対しては、値段よりも安全の問題に非常に関心が深いといわれています。実は昨年(2007年)、日本で中国製の餃子に毒が入っていたという問題があったのですが、その後、中国から輸入した食品を「国産だ」と偽って売ったりするような例がたくさんあり、大変消費者の怒りを買っています。
嘘をつくのは、もちろん厳しく禁止されるべきだと思うのですが、一般に日本の消費者は、自分の消費が世界の経済とつながっているとか、自分たちの消費スタイルが環境とつながっているという意識は比較的弱いのではないかという気がします。それよりも、より質のいいものを求めます。性能に対しては、日本の消費者はとても厳しいのです。
例えばキュウリが曲がっている、衣服の縫い目がそろっていない、電気製品にちょっとでもゆがみがあるなど、そうした欠点があるということに対してはすごくシビアです。ですから、日本製品は性能はいいんだけれど価格が高い傾向があります。これには、高いからむだな消費を抑えるという側面もあるのかなという気もして、ちょっと複雑な感じがします。
それに比べると、アメリカの一般的な人たちは、ものの性能の高さ、質の高さということをそれほどシビアに求めないような気がしますけれど、どう思いますか。
サラ・ボンジョルニ: やはり、価格ですね。価格にシビアだと思います。例えば、ウォールマートは非常に成功しているビジネスです。
(その14に続く、全15回)
※この原稿は、2008年7月10日にカデミーヒルズで開催した「チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間~今求められる消費者の品格~」を元に作成したものです。尚、サラ・ボンジョルニのスピーチは英語で行われたため、翻訳しています。
関連書籍
チャイナフリー—中国製品なしの1年間
ボンジョルニ,サラ, 雨宮 寛, 今井 章子東洋経済新報社
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間 インデックス
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第1章 なぜ「中国製品を買わずに1年間生活してみよう」と思ったのか
2008年10月29日 (水)
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第2章 おもちゃや電気製品はもちろん、ブランドスーツも中国製
2008年11月10日 (月)
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第3章 中国製以外の子ども靴を見つけるのに2週間。かかったお金は約5倍
2008年11月21日 (金)
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第4章 チャイナフリーの実験で、親戚や家族関係に危機が生じることも
2008年12月05日 (金)
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第5章 「Made in China」以外にも中国製はある
2008年12月05日 (金)
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第6章 「安いから買う」という消費生活からの脱却
2009年01月29日 (木)
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第7章 中国に対して背を向けるわけにはいかない
2009年02月19日 (木)
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第8章 中国との貿易はいいことなのか、悪いことなのか
2009年03月04日 (水)
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第9章 「チャイナフリー」。言うは易く行うは難し
2009年03月11日 (水)
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第10章 グローバリゼーションは私たちの生活を本当に豊かにするのか
2009年03月19日 (木)
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第11章 たくさんの好きなものに囲まれる生活が一番豊かなのか?
2009年03月27日 (金)
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第12章 「ものの豊かさだけでは人間は幸せにはなれない」
2009年04月08日 (水)
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第13章 価格を追求するアメリカ、品質を追及する日本
2009年04月27日 (月)
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第14章 日本の親は、子どもが欲しがるものを何でも買い与えてしまう
2009年05月19日 (火)
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第15章 「恥知らずな生活」を見直そう
2009年06月04日 (木)
該当講座
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