記事・レポート
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間
~今求められる消費者の品格~
更新日 : 2009年01月29日
(木)
第6章 「安いから買う」という消費生活からの脱却
サラ・ボンジョルニ: 中国のものを使うことで非常に消費をしやすくなります。世界の製造業の中で、中国が大きな役割を果たし、中国製品が値段を下げるということになりました。アメリカの経済学者が、「アメリカの消費者にとって中国との貿易は全体的に見るといい」と言っていることの理由は、こういったことなのではないかと思っています。
こうした傾向からショッピングの性質が変わってきたのです。もともとは必要性から買い物に行っていたのに、娯楽としての買い物になってきたわけです。私はカリフォルニアで育ちましたが、若いころ、一生懸命お小遣いをためて友達と買い物に行っても、買えるものは何か1つだけでした。
ところが、今アメリカでは、考えられないほど安いものが多く売られています。例えばTシャツは6ドルとか7ドル、赤ちゃんの靴なら5ドルというようなお安いものもあります。こうしたトレンドから、やはり使い捨て社会ということになってきました。このような社会になったことによる副作用、あるいは環境への有害な影響について私は非常に深く憂慮しています。
ボイコットをしたことで、私にとって考えていなかったプラスの結果がありました。それは、今となっては、こうしたお安いアイテムというものを以前ほどは欲しくなくなったということです。こうしたものはほとんどすべてが中国製だったので、ボイコットをやっている間は家の中に持ち込むことを禁止していました。ボイコットという人工的に自ら課した制限というものがあったので、消費者としての規律を得ることができたわけです。それはボイコット前には持っていなかったものでした。なぜボイコットなしではそうした規律を得ることができなかったのか、それは私にも分かりません。
ボイコットによって分かったことというのは、実は私たちが必要と思っている以上に少ないものだけでも生活できるんだということでした。
私の家では、とても小さいテレビを使っています。アメリカ人は通常、非常に大きなテレビを好みます。「アメリカ人なのにテレビが好きじゃないのではないか」と思われるかもしれませんが、私たちはテレビを見ることが好きですし、小さいテレビも非常に気に入っています。ボイコットの最中、このテレビにいろいろな問題が出てきました。もしこれが動かなくなったらほかのものに買えることはできないので非常に心配していましたが、うまく壊れずに取り替えすることなく過ごすことができました。
今も、あまりよく動いているとはいえないので、子どもたちがときどき文句を言うのも無理もないことで、いいテレビを買わなくてはいけないかなとも思います。ただ、まだ買い替えていません。なぜかというと、長い間これに頼ってきたので、もしかしたら新しいものを買うのはそんなに重要ではないかもしれないと思い始めたからです。
ボイコットの実験を始めるちょっと前に壊れてしまったコーヒーメーカーも、買い換えるわけにはいきませんでした。アメリカで使われているコーヒーメーカーは、ほとんどすべて中国製だったからです。ですから毎日やかんでお湯をわかして、コーヒーカップに注がなくてはいけませんでした。これは通常のアメリカ人であれば、山に行ってテントで寝るときぐらいしかやらない方法なので、友達からも「ちょっとおかしいんじゃないか?」と思われたりしました。私もそう思ったので、「ボイコットが終わったら新しいものを買おう」と思っていたのですが、やめました。今でもお湯をわかしています。
なぜかというと、こういったスローのやり方でコーヒーを淹れるのも、そんなに気にならないものだと思ったからです。新しいものを買う必要性を感じなくなったのです。ボイコットを終了した今でも残っている影響というのは、「多くのものを持つということが、以前ほど魅力的ではない、以前ほど大事ではない」と思えるようになったことです。
(その7に続く、全15回)
こうした傾向からショッピングの性質が変わってきたのです。もともとは必要性から買い物に行っていたのに、娯楽としての買い物になってきたわけです。私はカリフォルニアで育ちましたが、若いころ、一生懸命お小遣いをためて友達と買い物に行っても、買えるものは何か1つだけでした。
ところが、今アメリカでは、考えられないほど安いものが多く売られています。例えばTシャツは6ドルとか7ドル、赤ちゃんの靴なら5ドルというようなお安いものもあります。こうしたトレンドから、やはり使い捨て社会ということになってきました。このような社会になったことによる副作用、あるいは環境への有害な影響について私は非常に深く憂慮しています。
ボイコットをしたことで、私にとって考えていなかったプラスの結果がありました。それは、今となっては、こうしたお安いアイテムというものを以前ほどは欲しくなくなったということです。こうしたものはほとんどすべてが中国製だったので、ボイコットをやっている間は家の中に持ち込むことを禁止していました。ボイコットという人工的に自ら課した制限というものがあったので、消費者としての規律を得ることができたわけです。それはボイコット前には持っていなかったものでした。なぜボイコットなしではそうした規律を得ることができなかったのか、それは私にも分かりません。
ボイコットによって分かったことというのは、実は私たちが必要と思っている以上に少ないものだけでも生活できるんだということでした。
私の家では、とても小さいテレビを使っています。アメリカ人は通常、非常に大きなテレビを好みます。「アメリカ人なのにテレビが好きじゃないのではないか」と思われるかもしれませんが、私たちはテレビを見ることが好きですし、小さいテレビも非常に気に入っています。ボイコットの最中、このテレビにいろいろな問題が出てきました。もしこれが動かなくなったらほかのものに買えることはできないので非常に心配していましたが、うまく壊れずに取り替えすることなく過ごすことができました。
今も、あまりよく動いているとはいえないので、子どもたちがときどき文句を言うのも無理もないことで、いいテレビを買わなくてはいけないかなとも思います。ただ、まだ買い替えていません。なぜかというと、長い間これに頼ってきたので、もしかしたら新しいものを買うのはそんなに重要ではないかもしれないと思い始めたからです。
ボイコットの実験を始めるちょっと前に壊れてしまったコーヒーメーカーも、買い換えるわけにはいきませんでした。アメリカで使われているコーヒーメーカーは、ほとんどすべて中国製だったからです。ですから毎日やかんでお湯をわかして、コーヒーカップに注がなくてはいけませんでした。これは通常のアメリカ人であれば、山に行ってテントで寝るときぐらいしかやらない方法なので、友達からも「ちょっとおかしいんじゃないか?」と思われたりしました。私もそう思ったので、「ボイコットが終わったら新しいものを買おう」と思っていたのですが、やめました。今でもお湯をわかしています。
なぜかというと、こういったスローのやり方でコーヒーを淹れるのも、そんなに気にならないものだと思ったからです。新しいものを買う必要性を感じなくなったのです。ボイコットを終了した今でも残っている影響というのは、「多くのものを持つということが、以前ほど魅力的ではない、以前ほど大事ではない」と思えるようになったことです。
(その7に続く、全15回)
関連書籍
チャイナフリー—中国製品なしの1年間
ボンジョルニ,サラ, 雨宮 寛, 今井 章子東洋経済新報社
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間 インデックス
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第1章 なぜ「中国製品を買わずに1年間生活してみよう」と思ったのか
2008年10月29日 (水)
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第2章 おもちゃや電気製品はもちろん、ブランドスーツも中国製
2008年11月10日 (月)
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第3章 中国製以外の子ども靴を見つけるのに2週間。かかったお金は約5倍
2008年11月21日 (金)
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第4章 チャイナフリーの実験で、親戚や家族関係に危機が生じることも
2008年12月05日 (金)
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第5章 「Made in China」以外にも中国製はある
2008年12月05日 (金)
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第6章 「安いから買う」という消費生活からの脱却
2009年01月29日 (木)
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第7章 中国に対して背を向けるわけにはいかない
2009年02月19日 (木)
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第8章 中国との貿易はいいことなのか、悪いことなのか
2009年03月04日 (水)
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第9章 「チャイナフリー」。言うは易く行うは難し
2009年03月11日 (水)
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第10章 グローバリゼーションは私たちの生活を本当に豊かにするのか
2009年03月19日 (木)
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第11章 たくさんの好きなものに囲まれる生活が一番豊かなのか?
2009年03月27日 (金)
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第12章 「ものの豊かさだけでは人間は幸せにはなれない」
2009年04月08日 (水)
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第13章 価格を追求するアメリカ、品質を追及する日本
2009年04月27日 (月)
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第14章 日本の親は、子どもが欲しがるものを何でも買い与えてしまう
2009年05月19日 (火)
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第15章 「恥知らずな生活」を見直そう
2009年06月04日 (木)
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中国——この急成長を遂げる屈指の製品輸出国ほど、21世紀のグローバル経済が引き起こす功罪に深く関わっている国はないでしょう。中国製品には、安心・安全、環境問題、格差問題、資源獲得競争、少子高齢化など、世界の多くの国が共有する社会問題が凝縮されているといってもいいでしょう。しかし、私たちはそうした問題....
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