記事・レポート
ライフスタイルサロン ~遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』~
カルチャー&ライフスタイル
更新日 : 2008年04月07日
(月)
第11章 「ワークライフバランス」は、"会社"と"自分のために何かすること"のバランス
竹中平蔵: 「ハイフニスト」というのは、すばらしい言葉ですね。私もそうありたいと思いますし、皆さんも例えば企業経営者-(ハイフン)何とかである、そういう人生であらねばならないと改めて思ったのではないでしょうか。実は、非常に若いときに私もそう感じたことがあります。
私が経済学者になったのは、日本の高度成長の設計者になられた下村治さん——池田勇人の所得倍増計画の理論的な支柱であった下村治さんに憧れたからです。その下村治さんのライバルに、吉野俊彦さんという日銀のエコノミストがいました。
この吉野さんの本に、結構おもしろいことが書かれてありました。吉野さんというのは、下村さんに匹敵する当代一流のエコノミストであったと同時に、その当時の森鴎外研究者の第一人者だったんです。こんな人がいるのかと思ってその人のエッセイを読んでいると、自分には書庫が2つある、書斎が2つあるというのです。12時までは第一書庫にいて経済のことをやっている、12時になった途端に第二書庫に移って森鴎外の研究をする。すごいなと思ったんですけど、こんなこと普通の人はできないですよね。
あえて、特に若い世代の方々に、「若いころから、こんなことに注意して生きなさい」「こういうことをやってみたらどうだ?」というようなアドバイスがありましたら、一言お願いできますか。「そんなことは自分で考えなさい」というのも1つのアドバイスですが(笑)。
福原義春: 「ハイフニスト」という話が出ましたけれど、サラリーマン兼サーファーであるとか、あるいは銀行屋兼囲碁何段とか、そういう方はいっぱいいらっしゃいます。
今「ワークライフバランス」というのが流行語になっていますが、会社の拘束時間を下げることだと誤解されています。あるいはワークライフバランスができてないので子育てができないと思ってしまう、それはあまりよくないのです。結果としてそういうことがあるかもしれないけれど、そうじゃなくて、会社にいて、会社の仕事をすることと、自分のために何かをやること、それをバランスさせようということではないかと思うのです。
そうなると、せっかくの余った時間をゲームだとかパチンコだとかテレビだとか、そういった時間消費的なものに使うのを少し減らして、プロダクティブな、あるいはクリエーティブなものに変えたらどうかと思うのです。雑誌を読むことでもいいし、本を読むことでもいい。それから何か1つの研究、まあ研究というとちょっと大げさになるのですが——いろいろな世界がありますから、それを追求、探求するとびっくりするような世界が見えてきます。
例えば、最近の若い人たちの間で、万年筆を集めるというのが流行っているようです。万年筆のペン先というのは、だんだん突き詰めていくと、これまた難しいんです。いろいろなタイプのペン先があって、合金もいろいろな種類があって、どういう会社がどういう経緯でそれをつくってきたかなどということを考えていくと、これまた切りがないんです。
このように、何か自分だけのクリエーティブなことに取り組むようにすればいいんじゃないかしらと思うのです。仕事をしているといつかは定年が来てしまうわけですが、定年のときにはご自分の財産として必ず残ります。それを基礎にNPOをつくったり、発信することができるようになるのです。
私が経済学者になったのは、日本の高度成長の設計者になられた下村治さん——池田勇人の所得倍増計画の理論的な支柱であった下村治さんに憧れたからです。その下村治さんのライバルに、吉野俊彦さんという日銀のエコノミストがいました。
この吉野さんの本に、結構おもしろいことが書かれてありました。吉野さんというのは、下村さんに匹敵する当代一流のエコノミストであったと同時に、その当時の森鴎外研究者の第一人者だったんです。こんな人がいるのかと思ってその人のエッセイを読んでいると、自分には書庫が2つある、書斎が2つあるというのです。12時までは第一書庫にいて経済のことをやっている、12時になった途端に第二書庫に移って森鴎外の研究をする。すごいなと思ったんですけど、こんなこと普通の人はできないですよね。
あえて、特に若い世代の方々に、「若いころから、こんなことに注意して生きなさい」「こういうことをやってみたらどうだ?」というようなアドバイスがありましたら、一言お願いできますか。「そんなことは自分で考えなさい」というのも1つのアドバイスですが(笑)。
福原義春: 「ハイフニスト」という話が出ましたけれど、サラリーマン兼サーファーであるとか、あるいは銀行屋兼囲碁何段とか、そういう方はいっぱいいらっしゃいます。
今「ワークライフバランス」というのが流行語になっていますが、会社の拘束時間を下げることだと誤解されています。あるいはワークライフバランスができてないので子育てができないと思ってしまう、それはあまりよくないのです。結果としてそういうことがあるかもしれないけれど、そうじゃなくて、会社にいて、会社の仕事をすることと、自分のために何かをやること、それをバランスさせようということではないかと思うのです。
そうなると、せっかくの余った時間をゲームだとかパチンコだとかテレビだとか、そういった時間消費的なものに使うのを少し減らして、プロダクティブな、あるいはクリエーティブなものに変えたらどうかと思うのです。雑誌を読むことでもいいし、本を読むことでもいい。それから何か1つの研究、まあ研究というとちょっと大げさになるのですが——いろいろな世界がありますから、それを追求、探求するとびっくりするような世界が見えてきます。
例えば、最近の若い人たちの間で、万年筆を集めるというのが流行っているようです。万年筆のペン先というのは、だんだん突き詰めていくと、これまた難しいんです。いろいろなタイプのペン先があって、合金もいろいろな種類があって、どういう会社がどういう経緯でそれをつくってきたかなどということを考えていくと、これまた切りがないんです。
このように、何か自分だけのクリエーティブなことに取り組むようにすればいいんじゃないかしらと思うのです。仕事をしているといつかは定年が来てしまうわけですが、定年のときにはご自分の財産として必ず残ります。それを基礎にNPOをつくったり、発信することができるようになるのです。
ライフスタイルサロン ~遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』~ インデックス
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第1章 「複数人生」は、挫折しない生き方。1点集中より、多面的で強い
2008年02月21日 (木)
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第2章 私の人生に影響を与えたもの「蘭」「ダ・ヴィンチ」「流線型」
2008年02月25日 (月)
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第3章 子どものときの原体験は、後に必ず活きてくる
2008年02月27日 (水)
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第4章 突然社長に。心の支えになった「複線人生」
2008年03月03日 (月)
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第5章 「複線人生」で、どんな世界にも通じるアナロジーを構築する力を養う
2008年03月06日 (木)
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第6章 多面的な経験が成功を導く
2008年03月12日 (水)
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第7章 「複線人生」は誰にでも可能。特殊な能力は要らない
2008年03月18日 (火)
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第8章 クリエーティブなことにエネルギーを使うと、脳は活性化する
2008年03月25日 (火)
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第9章 測れないもの、美しいものが評価される時代
2008年04月01日 (火)
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第10章 私たちは知ってるようで何も知らない
2008年04月04日 (金)
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第11章 「ワークライフバランス」は、"会社"と"自分のために何かすること"のバランス
2008年04月07日 (月)
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第12章 人間はマルチタスク。2つ3つのことは、同時処理できる
2008年04月14日 (月)
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第13章 努力し続けられる力は、どこから来るのか
2008年04月18日 (金)
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