記事・レポート

ライフスタイルサロン ~遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』~

カルチャー&ライフスタイル
更新日 : 2008年03月25日 (火)

第8章 クリエーティブなことにエネルギーを使うと、脳は活性化する

福原義春: 例えばサラリーマンをしながら、夜になるとカラオケで30曲ぐらいスコアなしで歌えるという人はいくらでもいらっしゃいますね。そういうエネルギーをクリエーションのエネルギーに変えたらもっといいのに、という感じがいたします。

物事、何でもクリエーティブなことにエネルギーを使うと、それだけ脳は活性化するし、違った領域のことでも、同じような普遍的な原理でもって切れるということが、だんだん分かってくるような気がします。1つの分野で学んだメタファーが、もう1つの分野で活かされるということがあると思うのです。

1人の人がより多くのメタファーをあやつれることになるのではないかと思うのです。そこで感性とかクリエーティビティというのが磨かれないわけはない、という気がします。

最近、脳科学がだんだん進歩して、人間の創造意欲、学習意欲、あるいはコミュニケーション、そういった主要な人間の能力というのは前頭葉の前の半分で扱っているということがだんだん証明されるようになってきました。いろいろな分野のことをやっていくと、そこが刺激されて、お年寄りになっても脳は活性化したままでいけるかもしれないと思っています。

現に、国会議員さんとか町医者の内科の先生というのは、いつまでもぼけないですよね。それはなぜかというと、どんどん相手が変わって、違う話をされる。一生懸命、相手に対して対応しているとぼけない、ということを脳科学の先生が言われています。

会う人はそう増えなくても会う領域が増えれば、多分同じようなことが起きるのではないかと思いますが、領域を増やせば、またそこで会う人も増えてくるんです。例えば、先ほど私の仲間の五十嵐邁(すぐる)さんのお話をしましたけれど、それは蝶の仲間でなければ会えない仲間です。

同じように機械会社の取締役開発部長の方で、一生懸命昆虫のことを研究していらっしゃる方がいるのですが、その人とは、先日1月の2日にお会いして、バラのトゲというのは上を向いていたか、下を向いていたか、などとつまらないことを議論いたしました。

しかし考えてみると、そんなことすら私たちは見ていないんですね。だから、私は「下を向いているのではないか」、彼は「上向いているんだ」と言ったわけです。それで家に帰って調べてみたら、同じ枝に上を向いているトゲもあるし、下を向いているトゲもあり、水平に出ているトゲもあるということが分かりました。多分、ランダムに生えてくるに違いないんです。

トゲには釘のように細長いものと、バラのトゲのように根元が太くて先にいくと細くなるものと、2つ種類あって、それぞれ英語の名前も違っているみたいです。そういうことを言い出すと切りがない。そういう話をしていると、本当にいろいろな友だちができてくるのです。

人生、何のために生きているのかというと、生きている間じゅう学んでいるんだというのが私の考えです。ですから、ちょっと話していても、「バラのトゲというのは下向きか、上向きか」というようなことを、いまだに子どものように面白がるわけですよね。それを考えているうちに、何かまた別な普遍的なアナロジーに到達することがあるんです。