記事・レポート

「まちの保育園」が実践する、コミュニティデザイン

地域ぐるみで子どもを育てる

建築・デザインマーケティング・PRキャリア・人
更新日 : 2014年02月06日 (木)

第6章 対話の力 〜保育とは、教育とは何か?


 
誰が理想を決めるのか?

松本理寿輝: 「そもそも保育・教育とは何か?」というテーマで、保育者と対話を重ねたこともあります。この問いを突き詰めた結果、保育や教育は、理想的な社会や人間像、子どもの“らしさ”(個性)、これら2つの視点から組み立てられるべきもの、という結論に至りました。

「理想」は、特権的な誰かや教育者が決めるものではありません。社会を構成するあらゆる立場・考え・価値観をもつ人たちが対話を重ね、導き出していくものです。多種多様な答えがあり、決定的な答えはすぐには導き出せないでしょう。あるいは、一生かけても出てこないかもしれません。

そうであれば答えを急がず、開かれた問いとして、地域と一緒に考えていく。様々な人との対話を重ねながら、刻々と変化する子どもたちの姿に合わせて、その時点における最善の答えを導き出していく。私たちは、こうした子どもを中心に据えた対話こそが、保育・教育の本質的なあり方だと考えています。

私たちは普段から保育者、保護者、地域の人々、あらゆる関係性において、対話の機会をつくり出しています。

対話を生み出す「ドキュメンテーション」というツール

松本理寿輝: 私たちの保育園では、「ドキュメンテーション」というツールを活用しています。子どもの育ち・学びの様子をとらえた写真や動画、子どもたちの日々の気づき・発見などを保育者が詳細に記録したものです。これを見ることで、保育の現場に立ち会っていない人も、子どもの興味や想いを共有することができます。

ドキュメンテーションを媒体とすることで、大人は子どもたちの日々の学びについて対話を重ね、互いに協力していくようになります。また、保護者の立場であれば、自分の子どもがいま、何に夢中になっているのかを知ることができ、そこから親子の会話が生まれ、関係性が育まれていきます。ドキュメンテーションは単なる保育記録ではなく、保護者や地域の方々との対話を生み出すための大切なツールなのです。


該当講座

シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」
“地域ぐるみで子どもを育てる”
松本理寿輝 (まちの保育園・こども園 代表 / まちの研究所株式会社 代表取締役 )
古田秘馬 (プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)

松本理寿輝(ナチュラルスマイルジャパン代表取締役)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
2011年に小竹向原に開園した「まちの保育園」は、地域の人が利用できるベーカリーやカフェ、ギャラリーが併設され、従来の保育園のイメージとは異なる開放的な雰囲気。世代を超えた対話の中で、地域ぐるみで子どもを育てることを目指しています。今こそ、どのような幼児教育が必要なのか本質的に考え、街・地域の中で人々が対話し、大人も子どもも学びあえる社会のあり方を考えます。


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