記事・レポート

「まちの保育園」が実践する、コミュニティデザイン

地域ぐるみで子どもを育てる

建築・デザインマーケティング・PRキャリア・人
更新日 : 2014年02月12日 (水)

第8章 都心のリソースを保育に活用する


 
六本木にもできた「まちの保育園」

松本理寿輝: 2012年12月、六本木一丁目のアークヒルズ仙石山森タワー内に「まちの保育園 六本木」を開園しました。

開園する前、私はスタッフと一緒に六本木のまちを歩き回り、地域のリソースを探しました。六本木と赤坂に挟まれたこの地域には、日本初の私立美術館・大倉集古館、サントリーホール、住友家が蒐集した美術品を展示する泉屋(せんおく)博古館など、文化的な施設がたくさんあります。また、スウェーデン、スペイン、アメリカなど各国の大使館もあります。さらには都心にもかかわらず緑が多く、子どもを育てる場所としてもふさわしい。地域のリソースを知り、改めて保育園を開きたいと感じたのです。

園内は小竹向原と同じく、木や石、レンガなど自然に近い素材を使いました。都心の真ん中ながらビオトープもあり、カエルの鳴き声やセミの鳴き声も聞こえます。園の内外にも子どもの興味を喚起する場所がたくさんあり、私自身も非常に気に入っています。

少しずつ地域に開く

松本理寿輝: 「まちの保育園 六本木」には、カフェのような保育園と地域を結ぶ施設はありません。開園から5カ月ほど経ったいま、小竹向原とは異なる方法を通して、少しずつ地域に開いていく取り組みを始めています。

現在、ある大使館と一緒に「ポテト大作戦」というプロジェクトを進めています。ジャガイモの苗を大使館の一角に植えさせていただき、子どもたちと保育者は毎日水をやりに行っています。ジャガイモが育てば、大使館の方々と一緒に収穫し、さらに大使館の施設をお借りして、その国のポテト料理を紹介してもらう。そうした取り組みを進めています。

また、この地域には外国籍の大人や子どもが多く生活しています。そこで、伝統的な技術をもつ職人さんと相談しながら、日本独特の精神や文化を表現した空間をつくろうと模索しています。子どもも大人も、アイデンティティについて深く考えられる場になればと思っています。


該当講座

シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」
“地域ぐるみで子どもを育てる”
松本理寿輝 (まちの保育園・こども園 代表 / まちの研究所株式会社 代表取締役 )
古田秘馬 (プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)

松本理寿輝(ナチュラルスマイルジャパン代表取締役)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
2011年に小竹向原に開園した「まちの保育園」は、地域の人が利用できるベーカリーやカフェ、ギャラリーが併設され、従来の保育園のイメージとは異なる開放的な雰囲気。世代を超えた対話の中で、地域ぐるみで子どもを育てることを目指しています。今こそ、どのような幼児教育が必要なのか本質的に考え、街・地域の中で人々が対話し、大人も子どもも学びあえる社会のあり方を考えます。


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