記事・レポート

ネットいじめ~ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」

更新日 : 2009年08月25日 (火)

第11章 子育てにおける環境やコミュニケーションの変化

荻上チキさん

荻上チキ:  メディアが社会の変化と重なっていることの例として、ジェンダーに関する話をしましょう。例えば最近『Yahoo!ベビー』というサイトができました。こんなサイトです。これはママ同士の情報交換のサイトであると同時に、自分たちのかわいい赤ちゃんをペット自慢みたいなノリで「かわいいでしょう?」って写真をアップして、「3,000キュート獲得!」みたいな感じで、互いを褒めあったり励ましあったりみたいなことをやったりしています。

また、「何カ月のころのお腹は大体このぐらい出ていて、そのころに気をつけなくちゃいけないものは……」とか、「7カ月の段階だったら、ママはこんな感じになっていて……」、「そのママの経験者はこう語っていて……」と、ちょうど7カ月に位置する人たちに必要な情報などが掲載されていたりする。

かつて地域や家族ぐるみで子育てをするみたいなものを前提とした社会から、そうじゃない社会になっていったときに、例えば保育所といった設備や制度みたいなものは用意する必要はあるんですけれど、一方で、「どういうふうに子育てをすればいいのか、そもそも親から聞いてないんだけれど」みたいな、ナレッジが共有されていないという段階に対する解決策も必要となる。

「親近くにいないっつーか、すでに死んでるっつーか」さらには「地域の友達とかもあまりいなかったりっつーか」みたいな。20代後半とかで子どもを産むことになると、周りにそもそも産んだ経験のある人とかもいなかったりもするわけで、そういうときに頼りになるのが、ウェブ上のコミュニティだと。

子どもってすぐ成長するので、半年前に着ていた服がすぐに着れなくなったりするわけです。「ベビーベッド、せっかく買って超気に入っていたのに、2年間でもう役立たずなんだけれど」があったりすると、それをmixiとかのコミュニティで譲り合ったり、「安く売ります」的なリレーションを築いたり。

こんなふうにインターネットが登場することによって、地域や大家族で支えていくような子育てはしなくなったけど、ネットによって代替物を獲得することができている、というわけです。