記事・レポート
ネットいじめ~ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」
更新日 : 2009年06月19日
(金)
第3章 学校勝手サイトは本当にヤバイのか?
荻上チキ: 僕の話し振りからわかるように、学校勝手サイトとは、子ども同士が勝手にウェブサイトをつくって、そこでコミュニケーションをしているサイトの総称です。そこでは、「昨日、あの番組見た?」「見た」とか、そんな程度の書き込みがゴロゴロあって、基本的には使う人たちの所属する集団がもともと持っている秩序に左右されている。
もともといじめっ子といじめられっ子みたいな関係が強烈に学校の中で固定化されていて、そのいじめっ子みたいな人たちがウェブサイトをつくったら、それはもちろんいじめられっ子に対する悪口みたいなもので埋め尽くされるようなサイトになる。一方で受験シーズンや新学期シーズンになると、卒業生同士がつながりをキープするためにつくる、「これからよろしくね」みたいな形で、学校勝手サイトがあっちこっちにできたりします。受験シーズンの学校勝手サイトでは、「もうすぐ受験だよね、大丈夫?」「うん、頑張る」みたいな、和気あいあいとした書き込みで埋め尽くされていて、新入生の書き込みは、「お前、部活、どこ入るの?」みたいな、そういったコミュニケーションも行われていたりする。
「スレッド型学校勝手サイト」、要は『2ちゃんねる』型の学校勝手サイトのことなのですが、スレッドがダーッと並んでいて、『2ちゃんねる』を見たことがある人であればわかると思うのですが、荒れているスレと、荒れていないスレと、ほとんど誰にも書き込まれなくて過疎化しているスレと、それぞれあったりしますよね。恐らく『2ちゃんねる』よりははるかに健全なサイトが多いぐらいの比率で、子どもたちはコミュニケーションをしているという状況があります。
「学校勝手サイトって見つけにくいんじゃないか」という疑惑もよくあるのですが、そんなことはありません。こういう方法(と、パソコンをいじる)を使えば、かなり簡単に見つけられます。例えば、今、どこかの中学校のサイトが出てきましたけれど、BBSを開いてみると、「1年で格好いい人っていますか?」「あいつしかいないでしょう」。誰だよ、みたいな、本当にどうでもいい(笑)書き込みがあって、でもリアルタイムでコミュニケーションが行われていますね。
その下のページは若干荒れているかな?「何か1年で調子こいているやつが多い。1年で調子こいていると思うやつの名前書き、よろ」「3年で調子こいているやつ、めっちゃいる、例えば髪を染めて腰パンしてタバコ吸っている○○とか」と、人の悪口とか出てきたりとかしていますね。
こんな感じで、すべての学校勝手サイトが報道されているようなネガティブな形ではなくて、それぞれのサイトによって特徴が出ていますね。こうしたサイトには、元々の人間関係が大きく反映される。ウェブ上で作られた弱い紐帯であれば、短期的には悪口しか語り合うことがないというケースもありますが、長続きしにくい。もともといじめをたくらむようなコミュニケーションがあって、ネット上で行われて可視化してしまったがゆえに、想定していないような人たちのところにまで届いてしまう現象が起き、報道されたようなネガティブな帰結を招いているという状況もあります。
今日は細かい数字はパスしますが、さまざまなリサーチをした結果、学校勝手サイトには次のような特徴があるといえるでしょう。まず、学校勝手サイト利用者と認知者というのは何げに少ないです。「最近の子どもたちは携帯を使って、学校裏サイトで、バリバリ人の悪口を書いていて、いじめとか大変なんだよね」とかいった報道とかもちらほら見ますが、学校勝手サイトを継続的に利用している中高生は3%から5%以下(編注:2008年2月モバイル社会研究所調査〔著書『ネットいじめ』参照〕)。その人たちも、学校勝手サイトの主目的は情報交換や交流などで、悪口を目的に掲げているものというのは相対的に少ない。
だから、例えば「あしたの宿題は?」「誰の授業がわかりやすい?」、あるいはイベントのときにはどういった出し物をしたいかとか、そういった情報交換に使っている人たちが主で、インタビューをしたり、アンケート調査をさまざまな形で見た限り、特定の人の悪口を書くということを主目的に上げる人は少ない。
学校勝手サイトがいじめの舞台になってしまうことを「裏化」と呼んでいるのですけれども、そうしたサイトはしかし、全体の中では僅かです。ところが、多くの人に「学校裏サイトは携帯文化である」という連想があって、しかも、「携帯文化というのは大人にわかりづらいものであるから、放置しておくとまずいんじゃない?」ということで、「フィルタリングとか導入しましょう」みたいな議論が2007年ぐらいに前景化していた。
が、今検索して、膨大な学校裏サイトが出てきたことからもわかるように、別にそもそもネット文化に限定されたものではなくて、「もともとあった学校の中でのいじめとか、あるいは楽しんだりするコミュニケーションがネットに持ち越されました」というような話であるということを、まずは押えておかないといけないのです。でなければ、いじめ対策につなげることも難しくなってしまう。
もともといじめっ子といじめられっ子みたいな関係が強烈に学校の中で固定化されていて、そのいじめっ子みたいな人たちがウェブサイトをつくったら、それはもちろんいじめられっ子に対する悪口みたいなもので埋め尽くされるようなサイトになる。一方で受験シーズンや新学期シーズンになると、卒業生同士がつながりをキープするためにつくる、「これからよろしくね」みたいな形で、学校勝手サイトがあっちこっちにできたりします。受験シーズンの学校勝手サイトでは、「もうすぐ受験だよね、大丈夫?」「うん、頑張る」みたいな、和気あいあいとした書き込みで埋め尽くされていて、新入生の書き込みは、「お前、部活、どこ入るの?」みたいな、そういったコミュニケーションも行われていたりする。
「スレッド型学校勝手サイト」、要は『2ちゃんねる』型の学校勝手サイトのことなのですが、スレッドがダーッと並んでいて、『2ちゃんねる』を見たことがある人であればわかると思うのですが、荒れているスレと、荒れていないスレと、ほとんど誰にも書き込まれなくて過疎化しているスレと、それぞれあったりしますよね。恐らく『2ちゃんねる』よりははるかに健全なサイトが多いぐらいの比率で、子どもたちはコミュニケーションをしているという状況があります。
「学校勝手サイトって見つけにくいんじゃないか」という疑惑もよくあるのですが、そんなことはありません。こういう方法(と、パソコンをいじる)を使えば、かなり簡単に見つけられます。例えば、今、どこかの中学校のサイトが出てきましたけれど、BBSを開いてみると、「1年で格好いい人っていますか?」「あいつしかいないでしょう」。誰だよ、みたいな、本当にどうでもいい(笑)書き込みがあって、でもリアルタイムでコミュニケーションが行われていますね。
その下のページは若干荒れているかな?「何か1年で調子こいているやつが多い。1年で調子こいていると思うやつの名前書き、よろ」「3年で調子こいているやつ、めっちゃいる、例えば髪を染めて腰パンしてタバコ吸っている○○とか」と、人の悪口とか出てきたりとかしていますね。
こんな感じで、すべての学校勝手サイトが報道されているようなネガティブな形ではなくて、それぞれのサイトによって特徴が出ていますね。こうしたサイトには、元々の人間関係が大きく反映される。ウェブ上で作られた弱い紐帯であれば、短期的には悪口しか語り合うことがないというケースもありますが、長続きしにくい。もともといじめをたくらむようなコミュニケーションがあって、ネット上で行われて可視化してしまったがゆえに、想定していないような人たちのところにまで届いてしまう現象が起き、報道されたようなネガティブな帰結を招いているという状況もあります。
今日は細かい数字はパスしますが、さまざまなリサーチをした結果、学校勝手サイトには次のような特徴があるといえるでしょう。まず、学校勝手サイト利用者と認知者というのは何げに少ないです。「最近の子どもたちは携帯を使って、学校裏サイトで、バリバリ人の悪口を書いていて、いじめとか大変なんだよね」とかいった報道とかもちらほら見ますが、学校勝手サイトを継続的に利用している中高生は3%から5%以下(編注:2008年2月モバイル社会研究所調査〔著書『ネットいじめ』参照〕)。その人たちも、学校勝手サイトの主目的は情報交換や交流などで、悪口を目的に掲げているものというのは相対的に少ない。
だから、例えば「あしたの宿題は?」「誰の授業がわかりやすい?」、あるいはイベントのときにはどういった出し物をしたいかとか、そういった情報交換に使っている人たちが主で、インタビューをしたり、アンケート調査をさまざまな形で見た限り、特定の人の悪口を書くということを主目的に上げる人は少ない。
学校勝手サイトがいじめの舞台になってしまうことを「裏化」と呼んでいるのですけれども、そうしたサイトはしかし、全体の中では僅かです。ところが、多くの人に「学校裏サイトは携帯文化である」という連想があって、しかも、「携帯文化というのは大人にわかりづらいものであるから、放置しておくとまずいんじゃない?」ということで、「フィルタリングとか導入しましょう」みたいな議論が2007年ぐらいに前景化していた。
が、今検索して、膨大な学校裏サイトが出てきたことからもわかるように、別にそもそもネット文化に限定されたものではなくて、「もともとあった学校の中でのいじめとか、あるいは楽しんだりするコミュニケーションがネットに持ち越されました」というような話であるということを、まずは押えておかないといけないのです。でなければ、いじめ対策につなげることも難しくなってしまう。
ネットいじめ~ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」 インデックス
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第1章 本書に込めた裏テーマに踏み込む
2009年05月13日 (水)
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第2章 ネットいじめ、学校裏サイトのイメージは報道のトーンからつくられる
2009年06月01日 (月)
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第3章 学校勝手サイトは本当にヤバイのか?
2009年06月19日 (金)
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第4章 「ネット上のいじめ」と「ネットいじめ」の違い
2009年07月07日 (火)
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第5章 ネットいじめに対する一般的な誤解と実際
2009年08月17日 (月)
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第6章 ネットコミュニケーションの背景にあるニーズの分析が必要
2009年08月18日 (火)
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第7章 コミュニケーションの円滑化のための文字文化の変遷
2009年08月19日 (水)
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第8章 プロフにつながるポジショニングのアピールツール
2009年08月20日 (木)
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第9章 学校空間が求めるキャラ文化
2009年08月21日 (金)
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第10章 出会い系サイトと現代の恋愛観・結婚観
2009年08月24日 (月)
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第11章 子育てにおける環境やコミュニケーションの変化
2009年08月25日 (火)
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第12章 社会的身体の獲得と女性性の変容
2009年08月26日 (水)
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第13章 関係の流動化する現代のコミュニケーション
2009年08月27日 (木)
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