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福祉がいまできること~横浜市副市長の経験から

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション 講師:前田正子

更新日 : 2009年04月07日 (火)

第6章 地方より都市部で生活保護率が高い理由

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション「福祉がいまできること 横浜市副市長の経験から」会場様子

前田正子: なぜ社会福祉費が増えているのか、お話ししたいと思います。2006年時点で3,700億円の横浜市の福祉関係費の内訳に、まず生活保護費があります。1997年に548億円だった生活保護費が958億円になっています。

ちなみに、日本全体の生活保護費は約2.6兆円です。日本国民の1.16%の人が生活保護費をもらっています。これは2005年時点の国の統計の数字です。消費税の1%は約2.4兆円ですので、額で見ると消費税1%強で生活保護費が賄われているわけです。

生活保護率は都会の方が高いです。横浜市の生活保護率は1.38%、大阪市は4%ほど、田舎はとても少なくて、富山市などは生活保護率は0.3%ぐらいです(編注:厚生統計「平成18年度社会福祉行政業務報告」参考)。

田舎でなぜ生活保護受給者が少ないかということは、一族から生活保護受給者を出すことが恥だと考える文化があるらしいのですが、富山などは家の床面積も大きく、大家族主義です。大家族なので1人が失業しても、家族が5、6人一緒に暮らしていれば、誰かほかに働き手がいるので食べていけるわけです。

おじいちゃん、おばあちゃんがちゃんと国民年金をもらっていれば、それで収入もある。田舎で家に畑があれば、そんなに現金も要らないので、失業してしまった孫がいてもしばらく養うことができる。だから生活保護として出てこないのです。都会は1人暮らしの人が多いとか、家族は面倒を見られないということで、生活保護率が増えています。この生活保護率はどんどん増える傾向にあると思います。

生活保護は不正受給が問題になったり、一方では生活保護費がもらえるはずの人がもらえなくて餓死したりということでバッシングを受けたり、いろいろありますが、生活保護が減る見込みがない1つの理由は、現在新規に生活保護をもらう人の大体半分が高齢者だからです。

国民年金は25年間払っていないともらえないですから、年金がない人は、高齢で引退して収入がなくなって貯金を使い果たすと生活保護になります。そういう人たちに今さら働けというのは無理です。


該当講座

福祉がいまできること
横浜市副市長の経験から
前田正子 (財団法人横浜市国際交流協会 理事長)

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