記事・レポート
これからの東京~ビジネスと感性が融合する都市像~
更新日 : 2008年03月07日
(金)
第14章 計画性より偶発的な集積や創発性が都市を変えていく?
米倉誠一郎: 僕もそう思います。フレデリック・ターマンというたった一人の学部長がスタンフォードをつくり、シリコンバレーをつくったと言われているんですね。
六本木ヒルズだって「国がつくれ」と言ったわけじゃない。東京ミッドタウンもそうです。お互いに何の関係性もないけれども、集積することで相乗効果が生まれている。
一方で「きちんと都市計画を描いてゾーン化すべきだ」という意見もあるけれど、僕はそれじゃ駄目じゃないかと思うんです。民間がそれぞれ知恵を絞って開発し、競い合いながら関係性をつくっていく。
昔なら「もう六本木にはヒルズとミッドタウンができちゃったから、別なところにつくろう」と思ったかもしれない。しかし、今は逆で「近くにつくろう、集積することで相乗効果を高めよう」となってきた。計画性ではなくて創発性です。
民間企業が「これはおもしろいな」と思ったことにどんどん乗ってくる。そういう形でしか、東京って再生しないんじゃないかなと思うんです。隈さんはどうお考えですか。
隈研吾: 行政が一般則でやっている限りは駄目だというのは、もはや世界の一般常識になっています。容積率とか建ぺい率といった規制でいい都市ができるものではない。行政がそういう道具だけしか持っていなかったら、行政の役割すら果たせない。
実際に、ロンドンなどでも容積率や建ぺい率はすべて個々相談して決めていくんですよ。プロジェクトの公共性や貢献度を勘案して容積率や高さが決まる。ですから、戦略的価値がわからない役人は価値がない。
今回、北京の都市計画局長が、突然、僕らの案を駄目だと言ってきました。容積率や建ぺい率、高さについての指導があるのかと思ったら、都市計画局長いわく「お前のデザインは単調すぎる」と(笑)。彼はデザインに大変詳しいんです。中国はもうそういう時代になっているんですよ。
日本の役人でデザインを熱く語れる人がどのくらいいるでしょうか。誘導的なことを言わないで、ルールの話しかしないんじゃもったいないと思いますね。
米倉誠一郎: アントレプレナーはベンチャーを起こすことだけじゃない。行政官も新しいタイプの都市計画行政官が必要です。そういう人間が出てきて創発を促すことが必要なんでしょうね。でも、裁量行政もある意味では怖い。その人の好き嫌いで決まっていくから……。
隈研吾: ルールを公表すれば、「どういうビジョンのもとにどういう行政指導をしたか」が世の中に知れ渡るわけです。そして世界が評価する。そうすればいいんです。
米倉誠一郎: 密室の裁量行政ではなくてオープンな裁量であれば、世界中からその手腕が問われるわけですね。
六本木ヒルズだって「国がつくれ」と言ったわけじゃない。東京ミッドタウンもそうです。お互いに何の関係性もないけれども、集積することで相乗効果が生まれている。
一方で「きちんと都市計画を描いてゾーン化すべきだ」という意見もあるけれど、僕はそれじゃ駄目じゃないかと思うんです。民間がそれぞれ知恵を絞って開発し、競い合いながら関係性をつくっていく。
昔なら「もう六本木にはヒルズとミッドタウンができちゃったから、別なところにつくろう」と思ったかもしれない。しかし、今は逆で「近くにつくろう、集積することで相乗効果を高めよう」となってきた。計画性ではなくて創発性です。
民間企業が「これはおもしろいな」と思ったことにどんどん乗ってくる。そういう形でしか、東京って再生しないんじゃないかなと思うんです。隈さんはどうお考えですか。
隈研吾: 行政が一般則でやっている限りは駄目だというのは、もはや世界の一般常識になっています。容積率とか建ぺい率といった規制でいい都市ができるものではない。行政がそういう道具だけしか持っていなかったら、行政の役割すら果たせない。
実際に、ロンドンなどでも容積率や建ぺい率はすべて個々相談して決めていくんですよ。プロジェクトの公共性や貢献度を勘案して容積率や高さが決まる。ですから、戦略的価値がわからない役人は価値がない。
今回、北京の都市計画局長が、突然、僕らの案を駄目だと言ってきました。容積率や建ぺい率、高さについての指導があるのかと思ったら、都市計画局長いわく「お前のデザインは単調すぎる」と(笑)。彼はデザインに大変詳しいんです。中国はもうそういう時代になっているんですよ。
日本の役人でデザインを熱く語れる人がどのくらいいるでしょうか。誘導的なことを言わないで、ルールの話しかしないんじゃもったいないと思いますね。
米倉誠一郎: アントレプレナーはベンチャーを起こすことだけじゃない。行政官も新しいタイプの都市計画行政官が必要です。そういう人間が出てきて創発を促すことが必要なんでしょうね。でも、裁量行政もある意味では怖い。その人の好き嫌いで決まっていくから……。
隈研吾: ルールを公表すれば、「どういうビジョンのもとにどういう行政指導をしたか」が世の中に知れ渡るわけです。そして世界が評価する。そうすればいいんです。
米倉誠一郎: 密室の裁量行政ではなくてオープンな裁量であれば、世界中からその手腕が問われるわけですね。
これからの東京~ビジネスと感性が融合する都市像~ インデックス
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第1章:「アジアと欧米のゲートウェイを目指すには、まず、空港の自由化を」
2008年02月06日 (水)
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第2章 「東京はものすごくゆっくりしちゃったな、と感じます」
2008年02月06日 (水)
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第3章 「失われた 10年」より人の気持ちが後退したことが問題
2008年02月06日 (水)
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第4章 中国は現代アートも建築も熱い。しかし、日本は未だに実績主義です
2008年02月08日 (金)
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第5章 「金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない」
2008年02月12日 (火)
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第6章 見当違いの格差論が日本や東京の発展を阻む
2008年02月14日 (木)
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第7章 毎朝毎晩350万人が通勤する、こんな都市は世界に類がない
2008年02月18日 (月)
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第8章 毎年青森県分の人口が減る時代、国土政策、都市政策は決定的に変わる
2008年02月20日 (水)
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第9章 米国の知恵は、寂れた場所をしばらく放っておくこと
2008年02月22日 (金)
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第10章 東京の魅力づくりには、歴史をずる賢く使うセンスが必要です
2008年02月26日 (火)
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第11章 経済も都市も「どん底」を見せれば、V字回復する
2008年02月27日 (水)
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第12章 知的リソースが集積し、交流し、結合する都市へ
2008年02月29日 (金)
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第13章 人的交流のゲートウェイを目指すなら、東大の民営化を
2008年03月04日 (火)
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第14章 計画性より偶発的な集積や創発性が都市を変えていく?
2008年03月07日 (金)
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第15章 自由な発想や発展を阻むのは、日本の古い法風土
2008年03月11日 (火)
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第16章 日本を、東京を変えるには根元的な議論が必要
2008年03月14日 (金)
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