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これからの東京~ビジネスと感性が融合する都市像~

更新日 : 2008年02月29日 (金)

第12章 知的リソースが集積し、交流し、結合する都市へ

竹中平蔵
竹中平蔵: 今日のテーマに戻しますが、外国に住んでいる私の友人でも「東京に行きたい。東京はいい」と言う人がたくさんいます。その度に「どこがいいの」と思わず聞くんですが、「食事がおいしい」とか、「都市施設がどんどん良くなっている」とか、「歌舞伎や相撲のような独自の文化を持っている」という答えが返ってきます。それは全部正しいと思います。

そうしたいいところをもっとモービライズする(※編注:流通させる)には、今、一体何が必要か。そういう観点から、東京の改革の道筋を幅広く考えていくことが必要だと思います。アカデミーヒルズでもそういうセミナーシリーズをどんどんつくりたいと思っています。

経済の観点から都市の役割と魅力を考えてみますと住む人間にとって、都市には新しいライフスタイルとその提案がある。しかも、今は根本的にライフスタイルを組み替える重要なチャンスです。

ちょうど1920年代の日本がライフスタイルの転機でした。関東大震災があって、都市の郊外に人が住むようになり、新しいライフスタイルが生まれた。関西では阪急、関東では東急のような私鉄ができて、郊外から都心に通勤するようになった。

「ならば、駅に百貨店をつくろう」と阪急の小林一三が考えた。彼のつくった梅田駅の阪急百貨店は世界初のターミナル型百貨店です。その翌年に難波に高島屋ができた。ライフスタイルを提案し、そこに新しい産業が生まれる機会をつくったのです。

一方、ビジネスの観点から都市をみると、ビジネスチャンスを掴むためにいろいろな人が集まってくる。都市に知的リソースが集まり、互いに交流することで新しい結びつきができる。それが次の魅力になってくる。今の日本にとっても知的なリソースを結合する力が大変重要です。その意味では、やはり高等教育機関の役割が大きいのですが、ここが非常に弱いんです。

ただ、先ほどの日経センターのアジアの都市間比較でみると、東京はアジア諸都市のなかでダントツに高等教育機関の数は多いんですよ。2位の北京の2倍ぐらいあるし、上海の3倍ぐらいある。そこをモービライズする。

文部科学省が変な介入をするのを止めさせて競争原理が働くようにすればいい。新しい結び付きは、すべて日本人である必要はない。例えば、香港から優秀な人を連れてくればいいんです。

そうした意味からも、冒頭のオープンスカイを実現して香港と東京を日帰り圏にすべきです。役人も矮小な論理を超えて、「今、ここにある東京のチャンス」に目覚めてほしい。

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