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『ケロッグ大学大学院 モーニング・セッション「異能の時代~ダイバーシティを活かした価値創造のマネジメント」』

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更新日 : 2008年07月15日 (火)

第5章 女性が生産ラインで働くと、"品質"が上がる?

星野朝子さん

星野朝子: ある時は、生産ラインにもチャレンジしました。日産にはいろいろな工場がありますが、ベンチマークすると、ラインワーカーにおける女性比率が日本の中でも下から数えた方がいいような状況でした。自動車産業の中では一番ビリ。もしかして、ここに何かヒントがあるんじゃないかと、いろいろな同業他社にお願いしてベンチマークに行きました。

そのとき、世界的に伸びている某企業の工場の方が、ポロッと「女性をラインに配置するのは"品質"だよ。うちの会社は品質にコミットしているんだから」と言われたのです。「何で女性がラインで働くと"品質"なんだろう」と疑問に思い、調べてみました。

工場の各工程の最後には、インスペクションという工程があるんです。ここで不良品を見逃すと、商品となって世の中に質のよくないものが出て行きます。もしかして、品質ってこのインスペクションに女性を置くということなのかなと、ちょっと思いました。

先ほど言いましたように、CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)は「客観的な事実やデータに基づく提案をしろ」ということなので、日産と関係会社の工場を全部当たり、女性の全員のパフォーマンスを調べたんですね。そうしたらすごいんですよ。彼女たちのパフォーマンスが、男性の平均に比べて統計的に有意に高かったんです。そこで、「ラインに女性を増やすべきだ」という提案をしたのです。

我々のチャレンジが採用された結果、思わぬ波及効果もありました。各工場には、エルゴノミクス(人間工学)の基準というのがあります。男性基準で、人間が「何キロまでの物をここまで上げる」などと決まっていて、それ以上重くなったらロボットでやるわけです。しかし、女性がラインで働くとなった途端、その基準を改めないといけないので、ものすごくエルゴノミクスが改善され、結果として男性にもとても評価されたのです。