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『ケロッグ大学大学院 モーニング・セッション「異能の時代~ダイバーシティを活かした価値創造のマネジメント」』

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更新日 : 2008年06月26日 (木)

第3章 ダイバーシティとは多様な人材を生かす戦略

星野朝子さん

星野朝子: 日産CEOのカルロス・ゴーン氏が言った言葉です。「CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)はラインに対してどれだけチャレンジし、どれだけアイディアを提供したかによって評価される。日産における今までの自分の経験では、ほとんどのブレークスルーはCFTによって提案されたもので、CFTなくしては日産の改革はなかった。それは、これから先も同じですよ」と。

また、明快に「ダイバーシティは社会貢献ではありません。ビジネスのためにやるのです。社会貢献のために、あなたが私に対して何かの提案を持ってくるのは駄目です。これは日産の力にする、そういうダイバーシティなんです。そこだけは忘れないでください」とも言われました。

CFTというのは、信頼できる情報や証拠という確かなデータを積み上げること、いわゆるベンチマークによって確固たる信頼を築かなくてはいけません。ただの思いつきの提案はNGです。感情論とか政治的な配慮があってもいけません。一方、長期的な戦略・影響を考慮に入れながら、短期的に会社のパフォーマンスに対して即効性のある提案が期待されています。

会社のライン組織はだれもチャレンジされることを喜びません。ライン組織に厭われるということを気にしてはいけないのです。CFTメンバーは会社によって選ばれ、会社全体のベネフィットだけを考える人間の集まりであり、会社全体のベネフィットを考えるのはCFT以外にないのです。自己満足の打破という局面も期待されている重要な役割の一つで、CFTは現状維持、自己満足に陥りがちなライン組織にとって、それを許さない数少ない存在となっています。ゴーン氏からは、「ノータブー、ノーリミテーション」というキーワードもいただきました。

私の入社前からすでに10のCFTがあり、当時の「日産リバイバルプラン」をほとんど牽引してきました。ある日、「あなたは11番目のCFTのパイロットです」と言われたとき、私はその強者たちの噂は聞いていましたし、「CFTに指されると怖い」とも聞いていたので、まさか自分がCFTのパイロットにノミネートされるなんて夢にも思っていませんでした。「11番目のCFTはダイバーシティです」と言われた時も、私は恥ずかしながらダイバーシティ自体をほとんどよくわかっていなかったのです。

ゴーン氏は、「日産にダイバーシティを浸透させるんだ。あなた、やりなさい」と言うわけです。結局、「CFTってどうやってやるんですか?」「どうやってメンバー集めるんですか?」など、右も左もわからない状態から始めたんです。

ここでダイバーシティという言葉に始めて出会うのですけれども、日本語では多様性といいます。教科書的に言えば、ダイバーシティのカテゴリーで<目に見えるもの(表層的)>としては、「年齢」「性別」「民族的な伝統」「人種」「心理的/肉体的能力と特性」「性的傾向」が挙げられます。

また、<目に見えないもの(深層的)>としては、「第一次言語」「宗教」「収入」「仕事経験」「地理的な立地」「組織的な役割や階層」「家族の状況」「コミュニケーションのとり方」「軍隊経験」「働き方」「教育」が挙げられます。一番注目されるのは性別の話ですが、このようにダイバーシティには目に見えるものと目に見えないものがあるわけです。

経団連では、「ダイバーシティとは多様な人材を生かす戦略」とされていて、「従来と異なる新しい考え方や価値、意識を受け入れるだけの許容力を企業革新の一つの原動力に変えることである」というふうに言っています。

今の私がこう聞けばすごくよく分かるのですが、人事畑は全くのド素人だったこともあり、当時は「なんじゃらほい?」という感じでした。まあツールはブレインストーミングとベンチマーキングだというので、一所懸命それらを駆使しながら、いろいろな提案をしていきました。