記事・レポート

今こそ読みたい『古くて新しい記事』

~ストックされた知識から学ぶということ~

更新日 : 2020年05月19日 (火)

『古くて新しい記事』2008




人が集まることがリスクとなった現在、これまで数多くのイベントを開催してきたアカデミーヒルズでもオンライン以外のイベントは全く開催できない状況が続いています。家で過ごす時間が増え、今までの生活の見直しを迫られる中、これまで新しい情報や刺激を追い求めてきた生活も考え直す時期がきているのではないでしょうか。
 
過去の書籍、過去の映画、過去の音楽ライブ、過去の演劇など、これまでにストックされてきた素晴らしいコンテンツの数々がいま脚光を浴びています。コンテンツを一過性で消費して終わりではなく、過ぎた時間と照らし合わせることによって気づきを得られることもある、と私たちは考えます。
 
アカデミーヒルズでも、これまで実施してきたイベントをレポート記事という形でご紹介し、2008年よりストックしてまいりました。登壇者の皆さまの素晴らしいお話のエッセンスが詰まっています。
 
この企画では、アカデミーヒルズでストックされている「古くて新しい」記事をピックアップしてお届けしてまいります。私たちは過去の登壇者のお話から今、何を学べるのか?自分を内省する時間の糧として、今でも新たな発見やヒントが散りばめられている過去の記事を読み直してみませんか。
 
 2008年ピックアップ記事

2008年はどういう年だったのでしょうか。夏にG8洞爺湖サミット、北京オリンピックが開催され、9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻を機に、世界中がリーマン・ショックといわれる経済危機に陥りました。11月には米国大統領選でバラク・オバマ氏が当選を決め、米史上初のアフリカ系大統領が誕生することになった歴史的な年でもありました。
 
今回ピックアップした記事には、G8洞爺湖サミットのシェルパ(首脳の個人代表)を務めた河野雅治氏が登壇した際の貴重なお話もあります。1975年以降、参加国の顔ぶれは違っても、毎年行われてきた主要国首脳会合。今年6月に予定していた米国での開催は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、現地に各国首脳が集まることができるのかどうか、検討が重ねられています。
 
他には、日本の古典、日本の文化・社会を振り返るものなど、私たちが知っているようで知らない、日本の文化的価値を見直すものが挙がっています。
また、「ハイフニスト」という独自の言葉を使い「複線人生」を説く資生堂の福原義春氏のお話は、今注目されるパラレルキャリアの先駆けとなる内容として必見です!
 

ライフスタイルサロン ~遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』~
【登壇者】福原義春(資生堂名誉会長)、竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長)
【連載開始】2008年2月



複数の専門を持つ「ハイフニスト」であれ!資生堂名誉会長である福原氏は、一点集中ではなく、多面的な経験を深める「複線人生」がどんな世界にも通じるアナロジーを構築する力を養い、折れない強さをもたらすと言います。レオナルド・ダ・ビンチや山種美術館創始者の山崎種二さんの例を聞くと、遠い話に思うかもしれません。でも、「特別な人」でなくても、誰でも「ハイフニスト」になれるのだ、と福原氏は主張します。「測れないもの」「美しいもの」が評価される時代になる、という視点も10年以上前のものとは思えず、今も考えさせられる内容です。

ライフスタイルサロン ~遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』~

カフェブレイク・ブックトーク「源氏物語千年」
【登壇者】澁川雅俊(ライブラリーフェロー)
【連載開始】2008年5月



今年3月までライブラリー・フェローとして長きに渡りエントランス・ショーケースの展示を手掛け、会員向けにブックトークを開催して下さった澁川氏が紹介する源氏物語と関連書籍の紹介。
2008年は『源氏物語』が書かれてから千年の年月が経ったと言われるタイミング。『竹取物語』に次いで千年以上前に創作された作品を現代語で読むことができ、漫画や、映画・演劇にもなり、その作者紫式部はお札のデザインにもなるなどのは世界の文学史上稀有なこと、と澁川氏は評します。この記事を読み進めると、『源氏物語』をじっくり読みたくなります。数多く出されている現代語訳の中で、どれが自分に合うか、これをきっかけに見つけることもできそうです。

澁川氏にコメントを頂きました(2020年5月)

最近邦訳された『世界を変えた本』〔M・コリンズほか、エクスナレッジ、2018年〕に過去数千年にわたって世界の人びとにインパクトを与えてきた80点ほどの書物が紹介されています。我が国のものとしては『源氏物語』のみ選ばれています。たしかにそれは、子どもは別として、日本人ならそれを知らない人はいないでしょう。しかしそのすべての人たちが読んでいるわけではありません。不思議なことです。

そこで紫式部がこれを書いて千年とされる記念すべき年に、しばしば源氏の二文字で親しまれているこの書物の読書誌を、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、田辺聖子、瀬戸内寂聴、橋本治、林望らの現代語訳を中心に語ってみました。

平安時代から国内で読み続けられてきた源氏ですが、世界を変えた本に選ばれるようになったのは、日本人ドナルド・キーンの功績もあったでしょうが、第一は英国人東洋学者アーサー・ヘイリーによる英訳本(1922-33)でしょう。この英訳源氏は2008年に国内で刊行されています。また興味深いことに、その邦訳本が昨年までに3巻で出されました。なお英訳だけでなく、独・仏・伊・西・阿・露・中国語で翻訳されていますが、欧米語訳はヘイリーの影響が多いと言われています。源氏は創作千年を超えて、いまも生き続けています。ちなみに、本年初春に角田光代もその新訳を刊行しています。


カフェブレイク・ブックトーク「源氏物語千年」

政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年
【登壇者】ジェラルド・カーティス(コロンビア大学政治学名誉教授)
【連載開始】2008年6月



アカデミーヒルズでもお馴染み「カーティス先生」のライブラリーメンバー向けトークの記事。今年は来日の機会が奪われてしまいましたが、毎年カーティス先生の講義を楽しみにしているメンバーが多数いらっしゃいます。本記事はカーティス先生の書籍『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』の出版記念でお話頂いたときのものです。ミュージシャンを目指して音楽大学に入学してから日本の研究をするに至った経緯、日本語の魅力、日本の政治現場での経験等、ファンでなくても楽しめる内容です。

政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年

G8洞爺湖サミット シェルパが語る首脳外交の舞台裏
【登壇者】河野雅治(外務省外務審議官)
【連載開始】2008年9月



毎年開催されている主要8カ国首脳会議・通称G8サミット。ニュースで知るのは、各国首脳が並んだ記念撮影と声明文だけですが、その舞台裏ではあらゆる水面下での交渉が行われています。2008年7月、当時の福田康夫首相が率いる日本が議長国を務めた北海道洞爺湖サミットで、何が起こっていたのか?首脳以外で唯一サミットに立ち会うことができる「シェルパ」(首脳の個人代表)を務めた河野雅治氏が、各国の利害が激しくぶつかり合う様子と、議長国としての調整について、貴重なお話をして下さいました。硬いタイトルですが、内容はユーモアもあり、面白く読める記事です。

G8洞爺湖サミット シェルパが語る首脳外交の舞台裏

「チャイナ・フリー」中国製品無しで暮らす1年間~今求められる消費者の品格~
【登壇者】サラ・ボンジョルニ(ジャーナリスト)、坂東眞理子(昭和女子大学学長)
【公開開始】2008年10月



身の回りの製品の製造元を見ると、多くのものに「MADE IN CHINA」と書いてあります。それに違和感を持ち、一消費者の視点から資本主義経済、グローバル経済を考えるために中国製品を家族で1年間ボイコットする実験を行ったジャーナリストのサラ・ボンジョルニ氏の体験をもとに、豊かな生活とは何かを論じたセミナー。その年のベストセラーとなった『女性の品格』の著者、坂東眞理子氏をモデレーターにお迎えし、「消費者の品格」という副題の下で消費者の在り方を考えたセミナーでもありました。今、資本主義経済の限界が議論される中、その原点ともなるような問いが投げかけられています。

「チャイナ・フリー」中国製品無しで暮らす1年間~今求められる消費者の品格~


※記載されている肩書は当時のものです。

 
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