記事・レポート
僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
東京R不動産が提案する、心地よい空間づくり
建築・デザイン不動産オンラインビジネス
更新日 : 2014年08月28日
(木)
第10章 馬場正尊、古田秘馬が描く未来の東京
会場からの質問(1): 馬場さんが考える「未来の東京」のビジョンを教えてください。
馬場正尊: ビジョンといいますか、妄想は常に抱いています(笑)。最近の妄想は「東京は自然回帰したがるのではないか?」ということ。有史以来、人類は自然を開拓し、都市をつくってきました。けれども、東京R不動産では「緑が見える」「自然が豊か」といった物件の人気が年々高まっている。つまり、都市の人間は自然を希求するようになっています。それが大きな集団的欲望になれば、やがて人類は都市に自然を取り戻そうと、アスファルトをバキバキ剥いで土に変え、草や木を植えるようになるかもしれない。現在の土木技術や災害対応技術をもってすれば、実現できる可能性はあると思います。
東京はさまざまな技術を駆使して緑を増やし、都市としてのバリューを上げ、そのなかに現在と同様、もしくはより洗練されたテクノロジーを内包するようになる。緑のなかに埋もれたスーパーハイテク都市の誕生です。多くの人がそのビジョンに共感すれば、僕たちは自然とそちらの方向に技術と経済を傾けていくのではないか。そのような妄想を勝手に描いています。
会場からの質問(2): おふたりが人を巻き込むためにビジョンを語るとき、必ず行っていることはありますか?
古田秘馬: 僕は「ささやき戦法」です。基本的に、僕はプレゼンを一切行いません。代わりに、誰かが横に来たとき、「こんなことやったら面白いよね」と、ひたすらアイディアをささやく。それをあちこちで展開します。すると、次第に噂になって広がり、「あの話だけど、実はすごく興味をもった人がいてね」と言う人が現れる。噂が次のつながりを生み出してくれるのです。
「六本木農園」の隣は当初、駐車場でした。僕は土地の所有者でもないのに、「駐車場を畑にしようと思っている」と言い続けていました。その噂が真の所有者である森ビルの方に伝わり「畑をつくるらしいですが、誰と話をされているのですか?」と質問されてしまいました(笑)。しかし、「ちょうど良かった。実はこんなプロジェクトが……」と話をもちかけたところ、「面白い!」と森ビルの先代会長・森稔氏のひと言で本当に実現してしまいました。
馬場正尊: 僕は人の話を聞くことが大好きで、「それ、いいね!」と共感することも好きです。この言葉が新しいものをたくさん呼び寄せてくれるような気がしています。
会場からの質問(3): 2020年の東京五輪が決定し、今後は東京を訪れる外国人が増えると思います。その点について「こうしたい!」というアイディアはありますか?
馬場正尊: 面白くない公共空間を、楽しく変える絶好のチャンスが来たと感じています。「ここは行政が管轄する場だ」という従来の公共空間に対する考えを見直したいですね。最終的には、五輪後もいろいろな人が継続的に楽しくコミットメントできる公共空間にできればと考えています。
古田秘馬: 僕が考えるのは、東京を訪れること自体を「選挙ツーリズム」にしてしまうこと。まずは日本人だけでなく、東京を訪れた外国人も「東京の公共空間は、こうしたらもっと楽しくなる」と、アイディアを提案できるしくみをつくる。五輪の開催期間中、集められたアイディアに投票してもらい、五輪終了後は投票数の多いアイディアを実際のプロジェクトとして動かしていく。
馬場正尊: 何ともスケールの大きい話ですね。
古田秘馬: 世界の人々に「皆さんも一緒につくりませんか?」と呼びかけ、街づくりのプロセスに参加してもらうわけです。現在は「海外からのお客様を迎えるためにはこうすべし」とShouldで考え、限られた人だけで五輪に向けた街づくりを行おうとしています。それをLet’sに変え、街づくりを世界に開く。言うなれば「Open Tokyo」でしょうか。
馬場正尊: そのフレーズ良いですね! 何だかワクワクします。
古田秘馬: 馬場さんも一緒にやりませんか?
馬場正尊: いいですね! 早く誰かにささやかないと(笑)。
古田秘馬: (笑)。ほかの都市と競争するとか勝負をするといった考えではなく、比較から離れた独自の視点をもちながら都市計画や街づくりを考えたほうが、絶対に楽しいはずですし、オリジナリティも高まると思います。
馬場正尊: 東京には面白いリソースがたくさんありますから、それを活用しない手はないですよね。ぜひやりましょう!(了)
気づきポイント
●リノベーションとは、既存の価値観を見直し、再編集することである。
●使う側がコミットメントした瞬間、空間や街のカタチは心地よい方向へと変化する。
●新しいアクションを成功させるコツは、Let’sの精神で、小さく始めること。
●使う側がコミットメントした瞬間、空間や街のカタチは心地よい方向へと変化する。
●新しいアクションを成功させるコツは、Let’sの精神で、小さく始めること。
僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
インデックス
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第1章 メディアと都市計画 〜臨海副都心で考えたこと
2014年07月30日 (水)
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第2章 メディアはプロジェクトを動かすためのドライバーになる
2014年07月31日 (木)
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第3章 場の記憶の継承による都市の再生
2014年08月05日 (火)
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第4章 住空間はもっと自由でいいのだ
2014年08月07日 (木)
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第5章 僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった〜東京R不動産の誕生
2014年08月12日 (火)
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第6章 リノベーションがイノベーションを生んだ
2014年08月14日 (木)
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第7章 公共空間のリノベーション
2014年08月19日 (火)
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第8章 Let’sで始めるソーシャルデザイン
2014年08月21日 (木)
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第9章 多くの人を巻き込むコツとは?
2014年08月26日 (火)
-
第10章 馬場正尊、古田秘馬が描く未来の東京
2014年08月28日 (木)
該当講座
馬場正尊(建築家/Open A ltd代表/東京R不動産ディレクター)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
本業は建築家であり「東京R不動産」の中では、常に新しい視点で情報を編集し、発信するディレクターの役割を担う馬場氏。建築家として、公共空間のリノベーションも手がけ、その必要性を語る馬場氏が考える、これからの時代の「気持ちよくて心地いい住空間・公共空間・都市空間」とは何か。その実現のために何をするべきか、今後の取り組みも含めてお話いただきます。
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