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僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった

東京R不動産が提案する、心地よい空間づくり

建築・デザイン不動産オンラインビジネス
更新日 : 2014年08月19日 (火)

第7章 公共空間のリノベーション


 
公園はもっと楽しく使いこなすことができるはずだ

馬場正尊: 商業ビルやオフィスビル、住宅のリノベーションを数多く手掛けてきましたが、それが社会に浸透しつつあるいま、次のフェーズは公共空間(パブリック・スペース)のリノベーションだと感じています。今後、日本の人口は減少し、それに伴い税収も減ります。いっぽうで高齢者は増え、利便性を追求するなかで、市民はより高いサービスを求めるようになるでしょう。そうしたとき、公共空間は現在と同じシステムのままではいずれ立ち行かなくなるはずです。

昨年、『RePUBLIC-公共空間のリノベーション』という本を出しました。「従来の公共(パブリック)という概念はいま、問い直すべき時期に来ている。公園や図書館、学校などはもっと楽しく使いこなすことができるはずだ」といった問題提起です。

小さな児童公園を思い浮かべてください。たとえば、そこに小さなカフェがある。安い場所代でカフェを開くことができますが、その代わり、お店の人は公園の清掃を担当する。子どもは自由に遊び、親は手持ちぶさたを感じることなく、カフェのテーブルでコーヒーを飲みながらくつろぐ。あるいは仕事をしながら、子どもが遊ぶ姿を見ることができる。行政も収入が得られ、業者に依頼していた清掃費用も不要になる。つまり、すべての人が利益を享受できる空間になるわけです。しかし、現状の法律では特別な許可がない限り、公共空間では商売ができません。ほかにも多くの規制があり、その結果、誰にも利益をもたらさない空間となっています。

公園だけでなく、図書館や学校などの公共空間をどうしたらもっと楽しくできるのか? どうしたらそれが実現できるのか? この本にはアイディアとともに、法的なことまで含めて具体的に記しています。「メディアはプロジェクトを動かすためのドライバー」ですから、楽しい公共空間のアイディアを提示することで、新しいムーヴメントをつくりたいと考えています。ここから1つでも成功事例が生まれれば、全国に波及していくと思っています。

あらゆる空間のあり方を問い直す

馬場正尊: 公園しかり、図書館しかり、行政が管理する空間は現状、市民がコミットメントしにくい空間となっています。僕たち市民は、20世紀に起きた役割の細分化のなかで、無意識のうちに公共空間にコミットメントする権利を放棄してしまったのかもしれません。そのため、本来は市民のためにある公共空間を「行政が管轄する場所であり、私たちの自由にはならない場所」と思い込むようになったのではないでしょうか。

管理する側と使う側という二項対立的な構造を問い直し、使う側が自分事として考え、空間に対して自由にアイディアをインストールする。使う側が公共空間にコミットメントし始めた瞬間、街のあり方はガラリと変わっていくはずです。

僕は当初、リノベーションは古い建物の再生だと単純に思い込んでいました。しかし、10年取り組んだ結果、それは僕たちが建物に、ひいては街や都市に対してもっている価値観を再編集することだと感じています。

21世紀になり、人々の価値観は大きく変わりました。僕たちは今後、本当の意味での「豊かな生活」を手に入れるために、住宅・オフィス・公共空間など、あらゆる空間のあり方を問い直し、それらのしくみを再編集していくことになるでしょう。いまはその入口に立っているような気がしています。


該当講座

シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」
“気持ちいい空間を再構築する —東京R不動産の先に”
馬場正尊 (建築家/Open A ltd.代表取締役 東京R不動産ディレクター/東北芸術工科大学准教授 )
古田秘馬 (プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)

馬場正尊(建築家/Open A ltd代表/東京R不動産ディレクター)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
本業は建築家であり「東京R不動産」の中では、常に新しい視点で情報を編集し、発信するディレクターの役割を担う馬場氏。建築家として、公共空間のリノベーションも手がけ、その必要性を語る馬場氏が考える、これからの時代の「気持ちよくて心地いい住空間・公共空間・都市空間」とは何か。その実現のために何をするべきか、今後の取り組みも含めてお話いただきます。


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