記事・レポート
僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
東京R不動産が提案する、心地よい空間づくり
建築・デザイン不動産オンラインビジネス
更新日 : 2014年08月21日
(木)
第8章 Let’sで始めるソーシャルデザイン
面白さや楽しさが人の行動を変える
古田秘馬: まさにアイディアの宝庫のようなお話でした。世の中が「価値はない」と思うものを違う角度から見ることで、価値を再構築・再編集する。それは、すべてのソーシャルデザインに共通することです。
馬場正尊: 身の回りにある当たり前のものを、「こうしたほうがもっと楽しいのに……」という視点から見直してみると、面白いものがたくさん見つかります。
古田秘馬: 東京R不動産は、メディアから始まっているのがポイントだったと思います。メディアは、広く社会に対して疑問や論点を提示しやすい。僕は以前、「D30」という太った人向けのウェブマガジンをつくりました。メタボ検診が始まったとき、誰もが「痩せなければ」と思うようになった。そこに疑問を投げかけたわけです。初日は20万アクセスあり、ヤフーのトップニュースでも取り上げられました。つまり、誰もが正しいと考えていること、あるいはマイナスに捉えているものを逆から見ると、大きな可能性が生まれる。リノベーションも同じだと思います。
馬場正尊: たしかにそう思います。僕は、新しいアクションを成功させるためには、ShouldではなくLet’sで小さく始め、雪だるまのように膨らませていくこともコツだと考えています。「〜すべき」で物事を進めると、制限ばかりで暗くなりますし、柔軟性がないため、少しでも綻びが生まれれば一気に崩壊しがちです。しかし、「〜してみよう」で小さく物事を進めると、明るく取り組めますし、制限が少ないため柔軟性もある。何より、外部の人が気軽に参加しやすい。
古田秘馬: 実は、そうした進め方のほうがリスクは少ない。おそらく、馬場さんが日本橋で最初のリノベーションを行ったとき、それほどリスクは高くはなかったはずです。けれども、小さなアクションが結果として大きな可能性を生み出すきっかけとなった。そもそも、まったく誰も踏み込んでいない未知の領域には、最初からリスクなど存在しないのです。
馬場正尊: 本日は成功例を中心にお話ししましたが、その裏には膨大な数の失敗例があります。僕としては、絶えずさまざまな方向に「〜してみよう」を仕掛け続けたことで、時代や社会が良いもの・悪いものを勝手に取捨選択してくれた、といった印象をもっています。
古田秘馬: 東京R不動産というウェブサイトは、住宅に関する新たなプラットフォームをユーザーに提供したのだと思います。プラットフォームを提供する際に重要なのは、いままでにないコンセプトを打ち出すこと。さらに、一方的ではなく、閲覧者が気軽に参加できる余地があること。それが信頼や共感を生むことにつながります。つまり、「コンセプトとルールだけは渡すから、後はみんなが自由につくってね」という場のデザインです。それは、街づくりにも同じことが言えるでしょう。
ならば、ルールはどのようにデザインするのか。たとえば、フォルクスワーゲンによる「The Fun Theory」という実験的なプロジェクトがあります。スピード違反防止に関する実験では、違反車の写真を撮影するだけでなく、安全な速度で走る車もカメラで撮影した。そして、「この道を制限速度ピッタリで走ると現金が当たるかも?」という看板を掲げたところ、大多数の車が制限速度を守るようになった。「違反したら罰金」ではなく、「ピッタリを狙おう!」と、ルールを変えただけなのです。
馬場正尊: 面白い! まさにShouldではなくLet’sのルールですね。
古田秘馬: このプロジェクトのコンセプトは、「面白さや楽しさが人々の行動をより良い方向に変えていく」。同じく、ソーシャルデザインのルールをつくるときも、できるだけ楽しい方向へ視点が向くようにすることがポイントなのです。
古田秘馬: 東京R不動産というウェブサイトは、住宅に関する新たなプラットフォームをユーザーに提供したのだと思います。プラットフォームを提供する際に重要なのは、いままでにないコンセプトを打ち出すこと。さらに、一方的ではなく、閲覧者が気軽に参加できる余地があること。それが信頼や共感を生むことにつながります。つまり、「コンセプトとルールだけは渡すから、後はみんなが自由につくってね」という場のデザインです。それは、街づくりにも同じことが言えるでしょう。
ならば、ルールはどのようにデザインするのか。たとえば、フォルクスワーゲンによる「The Fun Theory」という実験的なプロジェクトがあります。スピード違反防止に関する実験では、違反車の写真を撮影するだけでなく、安全な速度で走る車もカメラで撮影した。そして、「この道を制限速度ピッタリで走ると現金が当たるかも?」という看板を掲げたところ、大多数の車が制限速度を守るようになった。「違反したら罰金」ではなく、「ピッタリを狙おう!」と、ルールを変えただけなのです。
馬場正尊: 面白い! まさにShouldではなくLet’sのルールですね。
古田秘馬: このプロジェクトのコンセプトは、「面白さや楽しさが人々の行動をより良い方向に変えていく」。同じく、ソーシャルデザインのルールをつくるときも、できるだけ楽しい方向へ視点が向くようにすることがポイントなのです。
僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
インデックス
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第1章 メディアと都市計画 〜臨海副都心で考えたこと
2014年07月30日 (水)
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第2章 メディアはプロジェクトを動かすためのドライバーになる
2014年07月31日 (木)
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第3章 場の記憶の継承による都市の再生
2014年08月05日 (火)
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第4章 住空間はもっと自由でいいのだ
2014年08月07日 (木)
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第5章 僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった〜東京R不動産の誕生
2014年08月12日 (火)
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第6章 リノベーションがイノベーションを生んだ
2014年08月14日 (木)
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第7章 公共空間のリノベーション
2014年08月19日 (火)
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第8章 Let’sで始めるソーシャルデザイン
2014年08月21日 (木)
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第9章 多くの人を巻き込むコツとは?
2014年08月26日 (火)
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第10章 馬場正尊、古田秘馬が描く未来の東京
2014年08月28日 (木)
該当講座
馬場正尊(建築家/Open A ltd代表/東京R不動産ディレクター)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
本業は建築家であり「東京R不動産」の中では、常に新しい視点で情報を編集し、発信するディレクターの役割を担う馬場氏。建築家として、公共空間のリノベーションも手がけ、その必要性を語る馬場氏が考える、これからの時代の「気持ちよくて心地いい住空間・公共空間・都市空間」とは何か。その実現のために何をするべきか、今後の取り組みも含めてお話いただきます。
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