記事・レポート
僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
東京R不動産が提案する、心地よい空間づくり
建築・デザイン不動産オンラインビジネス
更新日 : 2014年07月30日
(水)
第1章 メディアと都市計画 〜臨海副都心で考えたこと
レトロな味わい、改装OK、倉庫っぽい……。これまでにない視点で不動産を発見・発信するウェブサイト「東京R不動産」。ディレクターの馬場正尊氏は、本業である建築家として「リノベーション」のさまざまな手法を提案しています。いまや、公共空間のリノベーションも手掛ける馬場氏と、「丸の内朝大学」「六本木農園」を手掛けるコミュニティ・デザイナー古田秘馬氏が思い描く未来の住空間・公共空間とは? まるで、公開企画会議に参加したかのようなトークセッションとなりました。
ゲストスピーカー:馬場正尊(建築家/Open A ltd.代表取締役/東京R不動産ディレクター/東北芸術工科大学准教授)
ファシリテーター:古田秘馬(プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)
使い手がコミットメントする都市へ
馬場正尊: 僕はOpen Aという設計事務所を運営しています。建築を指すArchitectureと、コンピュータ用語のOpen Architectureに由来しています。事務所を開設したのは2003年です。当時から「次代の街づくりは、都市のリソースをオープンにすることで、多くの使い手がコミットメントする方向にシフトしていく」というイメージをもっていたのかもしれません。10年経ったいま、街づくりは行政や企業が主導するモードから、使う側、つまり一般市民が主導するモードに変化しつつあります。
僕はこの10年、古い建物をオフィスや店舗、住宅に変えるリノベーションを中心に手掛けてきました。最近では団地の再生にも携わっています。これまで、日本の住宅文化は「新築至上主義」でした。古くなったものは改修せず、壊して建て直す。しかし、最近の若い世代は中古住宅に魅力を感じ、まるで古着を着こなすように、自由にリノベーションしています。新築とリノベーションの境界線がフラットになり、両者を等価値で捉えるモードへと変化しています。
本日は「使い手がコミットメントする都市へ」というテーマをもとに、こうした変化への気づきのプロセスや、今後の街づくりについてお話ししていきます。
都市博の出来事から得た気づき
馬場正尊: 僕は少々変わったキャリアを経てきました。大学院で建築学科を出て、博報堂に入社しました。建築とは異なる視点から都市を見たいと思い、都市のしくみづくりに携わる会社を選んだのです。
入社2年目で担当したのが、世界都市博覧会というプロジェクトでした。すでに、会場となる臨海副都心では基礎工事が始まっていましたが、ある新聞に「都民の知らぬところで莫大な税金を投じた計画が進められている」という記事が出たのです。同時期に東京都知事選挙が行われ、開催の是非が争点となり、中止を公約として出馬した青島幸男氏が当選したことで、正式に中止が決定しました。僕は、大型トラックが行き交う建設現場でヘルメットをかぶったまま、呆然と立ち尽くしました。
小さな新聞記事がさまざまなメディアを通じて大きな力をもつようになり、そこにコンセンサスのとり方のまずさが加わったことで、何百億円と投入されていた都市計画がガラガラと音を立てて崩れ去った。20代半ばでそうした出来事を目の当たりにしたとき、ある気づきを得ます。
従来は建物や道路、電気、ガスなどハードのインフラをつくれば、都市ができていく感覚があった。しかし、今後はメディア・情報といったソフトが、都市計画の重要なインフラになるのではないか? そのように感じたのです。僕は「メディアと都市」について学ぶため、休職して大学院の博士課程に戻りました。しかし、当時は「メディアと都市」に関する先行研究がありませんでした。ならば自分で開拓するしかないと思い、大学院に籍を置いたまま、なぜか雑誌を創刊することになるのです。
博報堂にいた頃、もどかしさを感じていたのは、「自分自身がメディアではない」ということでした。あくまでもクライアントの代理であり、オリジナルの情報を発信することができないからです。
そうしたとき、ニューヨークで発刊されていた『INDEX』というアート系のインディペンデント・マガジンと出会いました。編集長であるピーター・ハリーは、「小さくとも鋭利で突破力のあるメディアをつくりたい」と言い、マスメディアの対極として「マイクロメディア」という単語を使っていました。同じように僕も、自分の思いを発信するメディアをつくろうと考えたのです。さまざまな出版社へのプレゼンを経て、『A』という雑誌を創刊しました。この取材・編集活動のなかで、現在につながる「メディアと都市」に対する考え方を学んでいくことになったのです。
僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった
インデックス
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第1章 メディアと都市計画 〜臨海副都心で考えたこと
2014年07月30日 (水)
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第2章 メディアはプロジェクトを動かすためのドライバーになる
2014年07月31日 (木)
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第3章 場の記憶の継承による都市の再生
2014年08月05日 (火)
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第4章 住空間はもっと自由でいいのだ
2014年08月07日 (木)
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第5章 僕の欲しいものは、みんなも欲しいものだった〜東京R不動産の誕生
2014年08月12日 (火)
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第6章 リノベーションがイノベーションを生んだ
2014年08月14日 (木)
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第7章 公共空間のリノベーション
2014年08月19日 (火)
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第8章 Let’sで始めるソーシャルデザイン
2014年08月21日 (木)
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第9章 多くの人を巻き込むコツとは?
2014年08月26日 (火)
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第10章 馬場正尊、古田秘馬が描く未来の東京
2014年08月28日 (木)
該当講座
馬場正尊(建築家/Open A ltd代表/東京R不動産ディレクター)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
本業は建築家であり「東京R不動産」の中では、常に新しい視点で情報を編集し、発信するディレクターの役割を担う馬場氏。建築家として、公共空間のリノベーションも手がけ、その必要性を語る馬場氏が考える、これからの時代の「気持ちよくて心地いい住空間・公共空間・都市空間」とは何か。その実現のために何をするべきか、今後の取り組みも含めてお話いただきます。
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