記事・レポート

ビジネスとクリエイティブの新しい関係

ライフスタイルサロン「編集力シリーズ」第二回 ゲスト:佐藤可士和

更新日 : 2009年07月28日 (火)

第5章 発想のダイナミズムと制約との調和

佐藤可士和氏(左)、竹中平蔵(右)

安藤礼二: 具体的にお話しくださり、「全くの未知のものをつくる」のではなくて、「もともとあるものから余計なものを切り捨てることによって本質をあらわにし、その本質から全く新しいものをつくる」という、まさに編集や整理といったことを実践されているんだなと思いました。竹中先生、いかがですか?

竹中平蔵: とても触発されたことがいくつかありました。手続きや予算など、いろいろな制約の中でお仕事をしていらっしゃると思うのですが、「自由に発想しなければいけない、でも一方で必ず制約がある」というところをどのように調和していらっしゃるのか、僕はそこを一番聞きたいと思いました。

佐藤可士和: そうですね。制約がクリエイティブを生む場合もありますし、クリエイティブを殺してしまう場合もあると思います。

元となるコンセプトは、制約を度外視して発想します。最初のマグマみたいなダイナミックなものがないと、制約でどんどん冷めていってしまう。最初から制約を気にしていると、最初のクリエイションは強いものができないと思っています。

現実化していくときは、慎重に制約のことを考えながらも、諦めずにうまくバランスをとる。制約があることで面白くなる場合もあるので、斜めから見たり、後ろから見たりして、「本質は何だ」ということを外さないようにしています。

安藤礼二(左)、佐藤可士和氏(中央)、竹中平蔵(右)
竹中平蔵: 「最初のコンセプトが大事だ」ということですが、感性や想いの部分がある一方で、狙う顧客層など積み上げの部分が必ずあると思うのです。その相互チェックが必要だと思うのですが。

佐藤可士和: 発想するときに突飛なことを考えようとは全く思っておらず、「本質は何なんだ」ということに近づこうとしています。先ほどの幼稚園も、「園児が毎日行きたくなるような楽しい場所とは?」と、そこだけを考えました。そこがうまくコンセプト化できると、そんなにずれないと思うのです。検証も当然しますが。

なるべく本質に迫る方が効率いいというか、バランスもとらないで済むし、いい答えが出るんじゃないかと思っています。

竹中平蔵: 同感です。Back to Basic、基本に立ち返る。これがまさにおっしゃった「本質」だと思うのですが、ここが揺らいでいる人と揺らいでいない人の差は、ものすごく大きいと思うのです。

私たちは何をやりたいのか、何をやるべきなのかという基本を強く意識して、自分自身がいかにぶれないようにするか。そうすると、自由な発想が出てくると思います。