記事・レポート

ビジネスとクリエイティブの新しい関係

ライフスタイルサロン「編集力シリーズ」第二回 ゲスト:佐藤可士和

更新日 : 2009年05月20日 (水)

第1章 編集とは、対象を整理して本質を導きだすこと

佐藤可士和氏

安藤礼二: 皆さんは、普段、いろいろな情報に取り囲まれていると思います。その中で、情報をいかに捨てて自分の形にしていくか。それは整理であると同時に、組み合わせて新しい形をつくっていく、編集だと思います。

佐藤可士和さんは、アートディレクターという肩書きですが、アート、デザインといった分野にはとらわれず、教育をデザインし、これから国を新しくデザインしていくことをお仕事になさっている方です。

佐藤可士和: はじめに、今までやってきたプロジェクトを、「整理」というキーワードでご紹介したいと思います。

今、この画面にあるのは僕のウェブサイトで、手がけているプロジェクトを「色」というキーワードで整理し、各プロジェクトで使っている主要な色を抜き出して、再編集した実験的なウェブサイトです。

ブランディングの仕事が非常に多いのですが、ホットなところでユニクロの話をしたいと思います。ちょうど2年前の2006年から、グローバルのクリエイティブディレクターとしてかかわってきました。

佐藤可士和氏

KASHIWA SATO.COM
ユニクロは、去年(2008)の11月に過去最高の売上を上げ、この不況の中で一人勝ちといわれていますが、これも「再編集」した仕事といえます。

社長の柳井正さんは即断即決の方で、初めてお会いしたときに「4日前にニューヨークで1,000坪の物件を押さえて、世界戦略に打って出ようと思っているから、クリエイティブディレクションをやってほしい」と言われました。

そこで、ユニクロを変えるのではなく、もともとあったものをピカピカに磨いて世界に向けて再提案しようと考え、柳井さんへのヒヤリングに取り掛かりました。柳井さんは、「Made in Japan」のクオリティの高さを打ち出したいということで、初心に戻るためにロゴから見直すことにしました。

柳井さんの言葉で、「服は服装の部品だ」というコンセプトがあります。セーター、ジーンズ、Tシャツというパーツを提供し、組み合わせるのは顧客の自由、という考えです。海外の人たちに、このユニクロのコンセプトを理解してもらうために、ロゴを単に形としてつくっていくのではなく、ユニクロの本質を象徴するような世界中で使える書体をオリジナルで考え、合理的なシステムでユニクロのビジュアルアイデンティティを築いていったのです。

関連書籍

佐藤可士和の超整理術

佐藤 可士和
日本経済新聞出版社

1冊まるごと佐藤可士和。

pen編集部
阪急コミュニケーションズ

佐藤可士和×トップランナー31人

集英社編集部
集英社