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宮本亜門: 違うから面白い、違わないから素晴らしい

更新日 : 2009年04月09日 (木)

第9章 「舞台はライブ。劇場でなければ得られない体験がある」

宮本亜門さん

宮本亜門: 日本では演劇はたくさんの観客層がいるものの、固定ファンが多いです。いつも同じ舞台を何回も観に行く、ほかの劇場には行かない。みていると、演劇によって面白いぐらい観客層が変わります。

宝塚大劇場は98%女性といってもいいでしょう。休憩時間には、何人かのおばさまは平気で男子トイレに入ってくるほどです。そうかと思うと、オペラ、特に来日公演はほとんど男性です。今70%男性、特に年を重ねた方たちが多くなっています。

小劇場は10代、20代が多く、年齢層が劇場によってバラバラです。日本も面白いなというぐらい多様化しているものの、ちょっと残念なのはお互いの交流がうすいというとことです。

ミュージカルがお好きな方は、ぜひオペラを観てほしいし、お芝居も観てほしい。お芝居しか観たことない方は、オペラというのをぜひ観てほしい。それぞれが違う魅力を放っています。ぜひ劇場に足を運んでください。

人生と同じです。いつも自分の好きな舞台に当たるとは限らない。何回か行っているうちに、あなたの人生の中でも最も大切な瞬間、グーッと心をつかまれ、離れられないことがあるかもしれません。

舞台というのはライブです。つまり人間が人間を観ている瞬間です。贅沢なのは、今こんなにチャネルの切り替えの早い、何でもすぐに変えられるスピードの速い時代に、劇場では2、3時間、同じ席に座っているということです。

最近は皆さん、教会も行かなくなりました。ゆっくりある1カ所で時間を過ごすということがほとんどなくなってきています。観ながら、考えながら、知らない人たちと共にある時間を共有しながら、人間が人間のことを考え、楽しむ時間と空間。それが劇場の魅力だと僕は思っています。

舞台にはいろいろな種類がありますので、ぜひ観に来てください。私が今度(2009年)1月、日生劇場で藤原紀香さんたちとやる『ドロウジー・シャペロン』というのは、純粋なお笑いです。

そのあと2月には『ラ・トラヴィアータ』をやります。ヴェルディ作曲のオペラです。オペラの解釈の面白さというものを楽しんでいただきたいと思っています。

僕の2つの作品だけでもこれほど違うのですから、日本にはいろいろなものがあるので、ぜひ調べて劇場に足を運んでいただければと思います。時間が短くなったので、舞台の話はあえてここまでにし、少し沖縄の話をさせていただきます。

該当講座

違うから面白い、違わないから素晴らしい
宮本亜門 (演出家)

2004年、東洋人初の演出家としてニューヨークのオンブロードウェイにて「太平洋序曲」を上演した宮本亜門氏。演劇・ミュージカル界で最高の栄誉とされるトニー賞4部門にノミネートされ、米国の演劇界でも高い評価を得ました。 その後も次々に国内外で作品を発表し、常に新しい表現を試みるとともに、テレビ番組出演....


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