記事・レポート
宮本亜門: 違うから面白い、違わないから素晴らしい
更新日 : 2009年01月14日
(水)
第1章 「ごめんね。僕ね、悪いけど、最後まで怒らないから」
宮本亜門: 「演出家って何なんですか?」、よく聞かれます。役者たちに自分の方向を語る、デザイナー、照明、セット、また企画プロデューサーたちとも話し合う。あらゆること、すべての演出をしているのが演出家で、「これが演出家」というよりも、キャスト、スタッフ含めてすべてを1つの方向に舵をとっていく仕事ということになるでしょうか。
演出家といっても人によって全くタイプが違います。灰皿を飛ばすといわれる方もいます(笑)。その方にとって、きっと灰皿を飛ばすことも1つのパフォーマンスなのでしょうが、人それぞれ場を盛り上げるとか、いろいろなやり方があります。
実は私は昔、机を倒したことがあります。「いい加減にしてください!」と役者に怒鳴りました。その後、役者は誰も従ってくれませんでした(笑)。そのようなパフォーマンスは自分に向いていないとわかり、今は一切怒りません。むしろ稽古場ではニコニコ。皆さんに「よく耐えられますね」と言われるのですが、見方を変えれば、その方が厳しいともいえます。
この前『スウィーニー・トッド』というミュージカルを日生劇場でやりました。そのとき、ある男優が「どうしても自分はこの役をつかめない」と、稽古場でイライラしていて、ちょっとよくない雰囲気になっていました。
そんななか、稽古場で初通し稽古を迎えました。頭から最後まで、「さあ、全員でやりましょう」と、音楽も含めて出演者30人ぐらいで進行していた。30分後、彼の番になったとき、突然、彼が舞台に出てこないのです。
稽古場が緊迫していました。そうしたら彼が、「だめだ、出られない」と言うのです。もう周りは、「さあ、どうするんだ。このまま本番にいくのか、いかないのか」と不安になりました。
結局、稽古を中断し、通し稽古はできなくなり、その後、その役者と話をしました。「亜門さん、僕は誰かにバシッと言ってほしいんです。怒られたいんです」と彼は言いました。そのとき、「ごめんね。僕ね、悪いけど、最後まで怒らないから」と言ったら、彼はおびえた目をしました。
役者によって、自分のレールがほしい人、自由にやりたい人、全くバラバラです。しかしその役者はその後、素晴らしく変わりました。何かのレールに乗るのではなくて、自分で自分をつくっていくことが役者なんだと気がついた、僕はそう思っています。他の役者さんたちも素晴らしかったけれど、あの舞台では彼の演技が最高だったと思っています。僕は言いました、「すっごい役者だね、君は」と。
演出家というのもいろいろなタイプがいます。キャスト、スタッフとつき合っていく形なので、これが正しいやり方、というのはありません。どれが一番正しいか、正しくないかということもありません。
演出家といっても人によって全くタイプが違います。灰皿を飛ばすといわれる方もいます(笑)。その方にとって、きっと灰皿を飛ばすことも1つのパフォーマンスなのでしょうが、人それぞれ場を盛り上げるとか、いろいろなやり方があります。
実は私は昔、机を倒したことがあります。「いい加減にしてください!」と役者に怒鳴りました。その後、役者は誰も従ってくれませんでした(笑)。そのようなパフォーマンスは自分に向いていないとわかり、今は一切怒りません。むしろ稽古場ではニコニコ。皆さんに「よく耐えられますね」と言われるのですが、見方を変えれば、その方が厳しいともいえます。
この前『スウィーニー・トッド』というミュージカルを日生劇場でやりました。そのとき、ある男優が「どうしても自分はこの役をつかめない」と、稽古場でイライラしていて、ちょっとよくない雰囲気になっていました。
そんななか、稽古場で初通し稽古を迎えました。頭から最後まで、「さあ、全員でやりましょう」と、音楽も含めて出演者30人ぐらいで進行していた。30分後、彼の番になったとき、突然、彼が舞台に出てこないのです。
稽古場が緊迫していました。そうしたら彼が、「だめだ、出られない」と言うのです。もう周りは、「さあ、どうするんだ。このまま本番にいくのか、いかないのか」と不安になりました。
結局、稽古を中断し、通し稽古はできなくなり、その後、その役者と話をしました。「亜門さん、僕は誰かにバシッと言ってほしいんです。怒られたいんです」と彼は言いました。そのとき、「ごめんね。僕ね、悪いけど、最後まで怒らないから」と言ったら、彼はおびえた目をしました。
役者によって、自分のレールがほしい人、自由にやりたい人、全くバラバラです。しかしその役者はその後、素晴らしく変わりました。何かのレールに乗るのではなくて、自分で自分をつくっていくことが役者なんだと気がついた、僕はそう思っています。他の役者さんたちも素晴らしかったけれど、あの舞台では彼の演技が最高だったと思っています。僕は言いました、「すっごい役者だね、君は」と。
演出家というのもいろいろなタイプがいます。キャスト、スタッフとつき合っていく形なので、これが正しいやり方、というのはありません。どれが一番正しいか、正しくないかということもありません。
宮本亜門: 違うから面白い、違わないから素晴らしい インデックス
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第1章 「ごめんね。僕ね、悪いけど、最後まで怒らないから」
2009年01月14日 (水)
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第2章 なぜ演出家になったのか
2009年01月23日 (金)
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第3章 「初めてのブロードウェイは怖かった。でも劇場は温かかった」
2009年02月02日 (月)
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第4章 『アイ・ガット・マーマン』の初上演前日に起きた9.11
2009年02月23日 (月)
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第5章 夢にまでみたブロードウェイが『太平洋序曲』で現実に
2009年03月05日 (木)
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第6章 世界で活躍する日本人クリエーターが少ない悔しさ
2009年03月12日 (木)
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第7章 ミュージカルのつくり方
2009年03月19日 (木)
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第8章 プロデューサーの熱い想いがブロードウェイを支えている
2009年03月30日 (月)
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第9章 「舞台はライブ。劇場でなければ得られない体験がある」
2009年04月09日 (木)
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第10章 沖縄が教えてくれたもの。瞬間、瞬間を大切に生き抜きたい
2009年04月30日 (木)
該当講座
宮本亜門 (演出家)
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