記事・レポート
宮本亜門: 違うから面白い、違わないから素晴らしい
更新日 : 2009年03月12日
(木)
第6章 世界で活躍する日本人クリエーターが少ない悔しさ
宮本亜門: 私の公演は3カ月のリミット公演でした。最初からロングランという条件ではありません。なので、儲けはそれほど出ていません。そこで今日は少し経済の話もしようかと思います。
実はブロードウェイでは平均的に約8割の作品が1年足らずの興行で消えてしまいます。つまり10本のうち8本が消える、あとの2本だけがロングランする可能性があるのです。つまり、大変リスクが大きいのがミュージカルへの投資なのかもしれません。
しかし、ブロードウェイの業界で成功すると、トータルで約4,000億ドルというビッグビジネスで、うまくロングランすれば大変なお金が入ってくるというのも事実です。ブロードウェイの観客動員は9.11の影響は全くなく、それどころか9.11の前よりも倍近くといっていいぐらい伸びております。作品の数も増えています。
そして、皆さんご存じでしょうけれども、ブロードウェイだけではなく、ロンドン、シンガポール、韓国など、あらゆる国でブロードウェイミュージカルは上演されます。『ライオンキング』は今、世界何十カ国という国でやっています。1つの作品をつくると、それが世界中に広がることがあるという意味では、大きなビジネスになるわけです。日本の投資家の方、スポンサーの方も多いのです。
しかし、残念なことにお金を出す方は多くなっているものの、クリエーターが少ないのが日本側の現状です。いや、日本人どころかアジア人が少ない。演出家になった人は、僕が「ブロードウェイで最初だ」といわれているぐらいなんですから(笑)。
私は常々、日本人はもっと自分たちの考え方やアイディア、そういうものを世界に売るべきだと思っています。もうそういう時代に来てもいいのではないでしょうか。もっと対等に文化を交流するべきだと思うのです。
例えば3年前、タン・ドゥンという作曲家から依頼がありました。それは日本のサントリーホールで上演したオペラ『TEA』をサンタフェオペラで再演しないかというものでした。
タン・ドゥンは、この前の北京オリンピックの開会式でも作曲をした人です。彼は映画音楽や、2年前にはメトロポリタンオペラで『ファースト・エンペラー』というタイトルのオペラをやりました。アジアで最も期待されている作曲家の一人といっても過言ではないでしょう。
まさにそれは「アジア人がつくったオペラ」という点で評価されました。不思議な面白さ、ある意味で「エキゾチズムの楽しさ」みたいな批評も出ました。
しかしエキゾチズムではまだまだこれからです。本当の文化交流だとは思えません。どうやってミュージカル、オペラ、演劇を世界に持っていき、人の心の内側を伝えるか。これは簡単なことではありませんが、しかし、何か道はあるはずです。
実はブロードウェイでは平均的に約8割の作品が1年足らずの興行で消えてしまいます。つまり10本のうち8本が消える、あとの2本だけがロングランする可能性があるのです。つまり、大変リスクが大きいのがミュージカルへの投資なのかもしれません。
しかし、ブロードウェイの業界で成功すると、トータルで約4,000億ドルというビッグビジネスで、うまくロングランすれば大変なお金が入ってくるというのも事実です。ブロードウェイの観客動員は9.11の影響は全くなく、それどころか9.11の前よりも倍近くといっていいぐらい伸びております。作品の数も増えています。
そして、皆さんご存じでしょうけれども、ブロードウェイだけではなく、ロンドン、シンガポール、韓国など、あらゆる国でブロードウェイミュージカルは上演されます。『ライオンキング』は今、世界何十カ国という国でやっています。1つの作品をつくると、それが世界中に広がることがあるという意味では、大きなビジネスになるわけです。日本の投資家の方、スポンサーの方も多いのです。
しかし、残念なことにお金を出す方は多くなっているものの、クリエーターが少ないのが日本側の現状です。いや、日本人どころかアジア人が少ない。演出家になった人は、僕が「ブロードウェイで最初だ」といわれているぐらいなんですから(笑)。
私は常々、日本人はもっと自分たちの考え方やアイディア、そういうものを世界に売るべきだと思っています。もうそういう時代に来てもいいのではないでしょうか。もっと対等に文化を交流するべきだと思うのです。
例えば3年前、タン・ドゥンという作曲家から依頼がありました。それは日本のサントリーホールで上演したオペラ『TEA』をサンタフェオペラで再演しないかというものでした。
タン・ドゥンは、この前の北京オリンピックの開会式でも作曲をした人です。彼は映画音楽や、2年前にはメトロポリタンオペラで『ファースト・エンペラー』というタイトルのオペラをやりました。アジアで最も期待されている作曲家の一人といっても過言ではないでしょう。
まさにそれは「アジア人がつくったオペラ」という点で評価されました。不思議な面白さ、ある意味で「エキゾチズムの楽しさ」みたいな批評も出ました。
しかしエキゾチズムではまだまだこれからです。本当の文化交流だとは思えません。どうやってミュージカル、オペラ、演劇を世界に持っていき、人の心の内側を伝えるか。これは簡単なことではありませんが、しかし、何か道はあるはずです。
宮本亜門: 違うから面白い、違わないから素晴らしい インデックス
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第1章 「ごめんね。僕ね、悪いけど、最後まで怒らないから」
2009年01月14日 (水)
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第2章 なぜ演出家になったのか
2009年01月23日 (金)
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第3章 「初めてのブロードウェイは怖かった。でも劇場は温かかった」
2009年02月02日 (月)
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第4章 『アイ・ガット・マーマン』の初上演前日に起きた9.11
2009年02月23日 (月)
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第5章 夢にまでみたブロードウェイが『太平洋序曲』で現実に
2009年03月05日 (木)
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第6章 世界で活躍する日本人クリエーターが少ない悔しさ
2009年03月12日 (木)
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第7章 ミュージカルのつくり方
2009年03月19日 (木)
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第8章 プロデューサーの熱い想いがブロードウェイを支えている
2009年03月30日 (月)
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第9章 「舞台はライブ。劇場でなければ得られない体験がある」
2009年04月09日 (木)
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第10章 沖縄が教えてくれたもの。瞬間、瞬間を大切に生き抜きたい
2009年04月30日 (木)
該当講座
宮本亜門 (演出家)
2004年、東洋人初の演出家としてニューヨークのオンブロードウェイにて「太平洋序曲」を上演した宮本亜門氏。演劇・ミュージカル界で最高の栄誉とされるトニー賞4部門にノミネートされ、米国の演劇界でも高い評価を得ました。 その後も次々に国内外で作品を発表し、常に新しい表現を試みるとともに、テレビ番組出演....
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