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「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年05月21日 (水)

第1章 オバマは黒人に対するアメリカ社会の意識変化をもたらした

ジェラルド・カーティスさん

ジェラルド・カーティス: 私は今、1年のうち半年をアメリカ、半年を日本で過ごすという生活をしています。ベースの半年は東京ですが、特に今年はアジアを走り回っています。

実は先週の火曜日に中国に行って、水曜日に中国の北朝鮮の専門家、特に共産党の情報部と話をしました。そして木曜日はピョンヤンに飛んで政府の高官と話をして、土曜日に東京に戻ってきました。昨日は国会議員30人ぐらいと超党派で北朝鮮の話をしました。これはちょっとホットな話で、アメリカの政治にも日米関係にも非常に関係のある問題なのですが、北朝鮮に対してアメリカと日本では対応にずれがあります。

ですから今日はちょっと欲張って、アメリカの大統領選挙と、日米関係と、中国のこれからの台頭に対して日本とアメリカはどうすればいいのかといったこと、さらには自分の目で見てきた北朝鮮、その印象など、いろいろな話を時間の許す限りさせていただきます。

まず、アメリカの大統領選挙について。ご存知のとおり、ものすごい盛り上がりで、大接戦です。今のところオバマがリードしています。大統領候補者は 8月末に行われる党大会で代議員が決めるのですが、その代議員を選ぶ「予備選」で、今オバマがリードしているということです。ヒラリーがどんなに頑張っても、代議員数でオバマを上回ることはないでしょう。ただ、誰が民主党の大統領候補者になるのかは分からない。オバマになるだろうとは思いますが、ひょっとしたら、ヒラリーになる可能性もないわけではない。

どうしてそういうことがあり得るのか——アメリカの大統領候補者を選ぶ仕組みは、おそらく皆さん、よく分からないだろうと思います。ですのでそれもちょっと説明しながら、この選挙戦から見えるアメリカの社会の変化について述べますが、これが非常に面白いのです。

候補者を見れば分かるのですが、女性は初めてで、ひょっとしたら女性が大統領候補者になるかもしれない。女性でなければ黒人です。日本ではオバマさんのことを黒人といいますが、今、アメリカではオバマさんを「ブラック」とはほとんど言いません。CNNをはじめマスコミは、「アフリカン・アメリカン」と言っています。

ずいぶん昔、「アイリッシュ・アメリカンもいれば、イタリアン・アメリカン、ジュイッシュ・アメリカンもいる、そう呼ぶのに、もともとはアフリカから来ている黒人だけをアフリカン・アメリカンと言わないでブラックと呼ぶのは差別だ。アフリカン・アメリカンと呼ぼう」というアメリカの黒人運動家たちの運動があったのですが、定着しませんでした。

ただ、オバマはそうした運動とはちょっと違う意味で、黒人ではなく、本当のアフリカン・アメリカンなのです。どういうことかというと、お父さんはケニアから、最初、ハワイ大学に留学して、そこにいた18歳のカンザス州の白人女性の学生と結婚し、それでバラク・オバマが産まれたのです。それからお父さんは、博士号をとるために奨学金をもらってハーバード大学に行きました。奥さんと子どものオバマはハワイで待っていたのですが、その間に結婚が駄目になって離婚しました。お母さんはインドネシア人と再婚をしたので、オバマはインドネシアのジャカルタに4年半住んでいたことがあります。だから小学校はインドネシアでした。

彼は日本語でいえばハーフです。黒人と白人のハーフですね。アメリカの黒人は、奴隷時代にレイプされるなどいろいろなことがあって血が混ざっていることが多いのですが、オバマは白人社会の文化、黒人社会の文化、アフリカの影響を全部持っています。だから誰が見ても、アフリカン・アメリカンなんです。

彼がアフリカン・アメリカンだということで、最近、黒人全体が「アフリカン・アメリカン」と言われるようになったのは、非常にいいことです。今回、アフリカン・アメリカンがもしかしたら大統領になるかもしれません。

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