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「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年05月28日 (水)

第5章 日本の現職政治家が恐れる「インターネット革命」

ジェラルド・カーティス: 時間より、さらに掛かるのは「お金」です。日本は金権選挙だといいますが、アメリカと比べればかわいいものです。もう既にヒラリーとオバマは予備選挙で500億円を使っています。たぶん11月までに1,000億円が使われるでしょう。ものすごい金額です。でも、「お金が掛かり過ぎるアメリカの選挙を何とかしなければ」という意見が少ない。「こんなにお金が掛かるのはいいな」というのが、今のアメリカでの多い意見です。

なぜでしょう?このことをお伝えすれば、すぐお分かりになると思いますが、2月の1カ月間だけでオバマは5,000万ドル(約50億円)を集め、ヒラリーは3,000万ドル(約30億円)集めました。1カ月間ですから、大きい額です。オバマはこの5,000万ドルを780,000人から集めたのです。5,000万ドルを寄付した人たちの90%は100ドル以下、50%は25ドル以下、80%の寄付がインターネットで行われました。要するに、何万人もの人が2,000円とか5,000円、10,000円ぐらいの額を寄付しているのです。

一般国民が政治参加できるのは、投票することとボランティアでキャンペーンに参加すること、それと寄付をすることです。先ほどお話したようにインターネットでの寄付が80%ですが、これはクレジットカードで簡単に寄付ができる仕組みになっているからです。あまりお金のない方でも、オバマさんに20ドルを寄付することによって、ものすごいコミットを感じるわけです。

大企業からお金を集めたり、お金持ちがたくさん寄付したりするという時代が終わって、革命が起こっているのです。インターネット革命がアメリカの政 治を変えています。だから1カ月間で約70万人がオバマに寄付をして、50万人ぐらいがヒラリーに寄付をした。毎月毎月、今までにないような政治参加があるわけです。

それと比べて日本は、この革命が起こらないように政治家がやっているのです。選挙が始まる前の公示期間になると、候補者はメールもできない、禁止です。メールマガジンを出すだけでなく、自分がメールを出すのも禁止、もちろん寄付もできません。

今、どの民主主義国でもインターネットの政治革命が起きています。例えば隣の韓国のノ・ムヒョンが選挙に当選できたのは、インターネットでキャン ペーンをやったからです。ヨーロッパの国々も政治家や政党がすごくインターネットを使うのですが、日本の、特に年をとった自民党の政治家たちはインターネットの使い方が分からない、メールを送ったこともない、だから怖いんです。インターネットが自由に使われるようになったら、どうなるか分からない。若く て格好のいい人が現れて、インターネットを上手に使って、それでブームが起きていろいろな人たちが寄付をするようになると、自分が危なくなるから規制を絶対に緩めない。

日本の政治家は「規制緩和」という言葉をよく使いますが、一番規制が多いのは公職選挙法です。選挙事務所ひとつにしても、その選挙事務所の前にかける提灯の大きさが法律で決まっているのです。これは戦前からあるもので、日本はものすごく規制が多い選挙をやっています。

なぜかというと、現職に有利だからです。知名度があまりない新人には非常にやりにくい。何かの形で国民運動が起きて、もっと自由に活動ができるように日本の公職選挙法をすべきだと昔から考えているのですが、それこそ抵抗勢力が大変なものです。

今のアメリカでは、「このめちゃくちゃお金が掛かる制度はいいな」という意見が非常に強い。それは、インターネットの革命が政治に大きな影響を与え、今までにないような市民参加があるからです。

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