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「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年06月05日 (木)

第10章 黒人がオバマを支持しないのは、潜む差別と共和党への拒絶感

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ジェラルド・カーティス: アメリカの社会にはいろいろな変化が起こっています。とても面白いことを経験したのは、ニューヨークのタクシー運転手さんにインタビューしたときのことです。タクシーの運転手さんにインタビューするのが私の1つの研究の方法で、『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』(日経BP社)の中にも、タクシーの後部座席から見る日本社会の変化について書いた部分があるぐらい、私はタクシーに乗ると運転手さんにできるだけ話を聞いています。

去年(2007年)の11、12月ごろ、民主党からオバマが出る、ヒラリーも出る、共和党からはエドワードが出ると、出馬の顔ぶれが決まったころ、私はニューヨーク市内に住んでいました。ニューヨークのタクシーの運転手さんは黒人が多いのですが、1月10日ごろまでは、私が乗ったタクシーの黒人の運転手に聞いても「オバマを支持している」と答える人は1人もいませんでした。面白いことに、みんなヒラリーでした。

私が勤めているコロンビア大学はハーレムの隣にあって、私はそこによく音楽を聞きに行きます。ハーレムは安全で楽しいところですから、ニューヨーク にいらしたら、ぜひ足を運んでみてください。ハーレムのクラブは安いんです。それに、顔が白くても黒くても、みんな非常にフレンドリーで、とても居心地がいい。

私は昔ミュージシャンだったので若いころはハーレムに行っていたのですが、だんだん居心地が悪くなって入れなくなった時期が長かった。しかし今、アメリカの社会はだいぶ変わってきました。変わってきたからこそ、オバマが出られるようになったのです。例えば『Showman's』というライブ音楽を やっている酒場があるのですが、そこに日本の国会議員を何人か連れて行ったことがあります。今そうした人たちがニューヨークに行くと、1人でも行けるような楽しいところなんです。

なぜタクシーの運転手さんは、ヒラリーの支持だったかというと、ある運転手さんが僕に説明してくれたのですが、「オバマはすばらしい。ただ、お客さん、この国はまだ黒人を大統領にするような国になっていない。オバマを支持したら、結局共和党が勝つことになる。どうしても今度は民主党に政権をとってほ しい。オバマはすばらしいと思うけれど、ヒラリーの方が本選挙で共和党に勝つ可能性が高い。だからヒラリーを支持しているんだ」という話でした。

去年(2007年)の12月ごろに、いろいろな黒人の解放運動のリーダーたちが「ヒラリーを支持している」と発表したのです。ジョージア州のジョン・ルイスは、マーティン・ルーサー・キングの右腕みたいな役割を果たした人ですが、彼は早くからヒラリー支持を表明していました。

関連書籍

政治と秋刀魚—日本と暮らして四五年

カーティス,ジェラルド
日経BP社

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