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折れない心をつくる

メガストレス時代のメンタルタフネス術:渡部卓
〜ケロッグ経営大学院 モーニング・セッションより

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年02月12日 (木)

第8章 コミュニケーションに役立つ傾聴

渡部卓 (帝京平成大学 現代ライフ学部 教授 株式会社ライフ バランス マネジメント研究所 代表取締役 )

 
「聞く」と「聴く」

渡部卓: 皆さんは普段、同僚や部下の話にきちんと耳を傾けていますか? 「きく」という漢字を思い浮かべてください。何の説明もなければ、「聞」を思い浮かべる人が多いと思います。この漢字は、門のなかに小さな耳が閉じ込められています。これでは、相手の話はよく聞こえないでしょう。「耳」を外に出し、それにプラスして「目」と「心」を相手に向ける。全身を使って話を聴いていると、自然と体は相手のほうへと傾いていきます。「聴」という漢字こそ、正しい耳の傾け方なのです。

ストレスの影響は、自分ではなかなか気づくことができません。そうしたとき、周囲のサポートとしてできることが、傾聴です。職場でのコミュニケーション不足は、うつの主要な原因の1つです。特に、現代型うつになりやすい若者には傾聴が効果的です。傾聴には9つの心得があります。

傾聴 9つの心得

(1) とにかく最後まで聴く。途中で口を挟まない。
(2) しっかりと相手の目を見て相づちを打ち、うなずく。重要なフレーズには、オウム返しをする。
(3) ○○しながら聴かない。
(4) 理解できない内容であっても、受容、共感、承認を心がける。
(5) 批評・批判はしない。
(6) 自己開示(心を開く)する。フィード・フォワード(フィード・バック)する。
(7) 聴き役の熱意のかけ過ぎは、「話主聴従」になりやすい点に注意する。
(8) 自分が落ち着いていなければ、相手の話は聴けない。
(9) 腹式呼吸で話を聴く。

ここで強調したいのは、「腹式呼吸で話を聴く」です。仕事に熱心すぎる管理職のなかには、空回りしてしまい、パワハラのようになってしまう人がいます。こうした人はすぐに神経が高ぶってしまい、呼吸が浅くなりやすい。傾聴するときだけでなく、普段の仕事のなかでもイライラや怒りが現れそうになったら、ぜひ腹式呼吸を心がけてみてください。


叱るときは「かりてきたねこ」

渡部卓: 職場でのコミュニケーションについては、もう1点あります。管理職のなかには、「本気で叱ることが部下の成長につながる」と考えている方が多いと思います。しかし、ある調査によると、若手社員の過半数が「逆効果であり、萎縮してしまうだけ」と回答しています。部下を思う気持ちは大切ですが、年齢や価値観が異なり、さらに普段から信頼関係も築けていない間柄であれば、「パワハラ上司」のレッテルを貼られてしまいかねません。

私が行う管理職研修では、傾聴の重要性とともに、叱り方の基本として「かりてきたねこ」というキーワードを紹介しています。

か:感情的にならない
り:理由を話す
て:手短に
き:キャラクター(性格・人格)に触れない
た:他人と比較しない
ね:根にもたない
こ:個別に叱る

ミスをした部下を叱る時などは、できるだけ自分の感情を抑えながら、叱る理由について端的に説明します。原因とミスの因果関係を理解させ、ミスが起こった経緯について本人に語らせるよう促す。性格や人格を否定するような発言、他人との比較は避けるように配慮してください。また、「なぜ、ミスしたのか?」といった否定的な進め方ではなく、「どうしたらミスをしなくなるか、改善できるか?」と前向きに話を進めていくことも大切です。さらに、ほかの社員がいる前で叱るのではなく、必ず1対1の場を設け、ジャケットを脱ぐなどして、リラックスできる環境を整えましょう。


該当講座

折れない心を作る

~経営戦略としてのメンタルタフネス経営~

折れない心を作る
渡部卓 (帝京平成大学 現代ライフ学部 教授 株式会社ライフ バランス マネジメント研究所 代表取締役  )

渡部 卓(㈱ライフバランスマネジメント研究所代表)
急激な変化、不確実性の拡大、グローバル化の進展など、厳しい経営環境において結果を出すことが期待されている現代のビジネスパーソンは、これまでにないプレッシャーの中で成果を出すことが求められています。ストレスに負けず、メンタルタフに生きるにはどうしたらいいのか?渡部氏がお話します。


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