記事・レポート

折れない心をつくる

メガストレス時代のメンタルタフネス術:渡部卓
〜ケロッグ経営大学院 モーニング・セッションより

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年02月02日 (月)

第4章 折れやすい心 3つの傾向 (2)

渡部卓(帝京平成大学 現代ライフ学部 教授 株式会社ライフ バランス マネジメント研究所 代表取締役 )

 
現代型うつが生まれた背景

渡部卓: 心が折れやすい性格には、メランコリー気質と執着気質がありますが、最後の3つ目は、自己愛・依存心が強いという傾向です。先の2つを「従来型」とした場合、3つ目を「現代型」「新型」と呼ぶこともあります。根拠となるデータがないため、学術的な定義はありませんが、1975年以降に生まれた若い人に多いと言われています。私の印象では、中高年のなかにも、この傾向をもつ人が増えているように感じています。

ストレスの原因はほぼ同じですが、従来型と現代型ではいくつかの違いが見られます。従来型では、休業しても職場復帰の意欲は高く、休業により自責の念や後ろめたさを感じることが多い。現代型では、周囲の環境や上司・同僚に対して不満をもつなど他責傾向があり、職場復帰への意欲が低く、休業が長期化するケースも多い。また、従来型に比べて休業や抗うつ薬の効果が薄く、カウンセリングの効果も見えにくいといった特徴があります。

現代型うつが生まれた背景には、4つの要因があると考えられています。1点目は、家庭や学校、職場での過保護・過干渉、マニュアル主義の影響です。そのため、依存心が強くなり、周囲からサポートを受けられない状況になると、不安や孤独を感じやすい。また、小さな変化にもストレスを感じやすく、想定外の出来事に対してもうまく対応できない。

2点目は、失敗する、怒られる、諦める、恥をかく、裏切られるといった経験の少なさです。最近の若者は、事前にテクニックやノウハウを吸収し、何事もそつなくこなす人が増えています。また、他者との距離の置き方も上手です。しかし、あくまでもそれらは表面的なものであるため、ストレスへの耐性や、真の意味でのコミュニケーション能力が伴わないまま社会に出てしまい、上司やクライアントの言葉を曲解する、必要以上に重く受け止めてしまうといったことが起こります。


3点目は、自己効力感が高いこと。現在は、バーチャルな体験のみで「やったつもり・わかったつもり」になる人が増えています。また、同年代の若者が活躍する姿を見て、「私もできる」という感覚になり、自らの能力を過大評価してしまう。こうして築かれた自尊心が否定されると、途端に強い不安や怒りを感じる。さらに、自己愛の強すぎる人は、周囲への関心や感謝、共感といった感覚が乏しいため、問題が起こると環境や他人に不満を覚えるという、自己中心的な考え方をしてしまいがちです。

4点目は、専門性や適性を重視するキャリア教育を受けるなかで、「これが自分の天職だ!」といった思い込みが強くなっていること。実際に働き始めると、目標に直接関連しない仕事を依頼され、ストレスを感じるようになります。キャリアとは本来、いろいろな回り道をしながら築いていくものであり、理想どおりに築けるものではありません。それがなかなか理解できず、理想と現実のギャップに苛まれるようになるのです。

心が折れやすい性格については、専門家の間でもいまだに意見が分かれていますが、私は3つの傾向が最もわかりやすいと考えています。特に気をつけていただきたいのは、メランコリー気質と執着気質を併せ持つ人です。真面目で几帳面、常に周囲に気を配りつつ、完璧を求めるあまり人知れず頑張ってしまう。こうした人が壁にぶつかったとき、心が激しく折れてしまいます。


該当講座

折れない心を作る

~経営戦略としてのメンタルタフネス経営~

折れない心を作る
渡部卓 (帝京平成大学 現代ライフ学部 教授 株式会社ライフ バランス マネジメント研究所 代表取締役  )

渡部 卓(㈱ライフバランスマネジメント研究所代表)
急激な変化、不確実性の拡大、グローバル化の進展など、厳しい経営環境において結果を出すことが期待されている現代のビジネスパーソンは、これまでにないプレッシャーの中で成果を出すことが求められています。ストレスに負けず、メンタルタフに生きるにはどうしたらいいのか?渡部氏がお話します。


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