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折れない心をつくる

メガストレス時代のメンタルタフネス術:渡部卓
〜ケロッグ経営大学院 モーニング・セッションより

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年01月26日 (月)

第2章 ストレスを取り巻く世界の現状

渡部卓(帝京平成大学 現代ライフ学部 教授 株式会社ライフ バランス マネジメント研究所 代表取締役)

 
増え続けるうつ病予備軍

渡部卓: 人間が生きていくうえで、ストレスは避けられないものです。しかし、近年は過度のストレスにより心身のバランスを崩してしまう人が増えています。厚生労働省の調査では、うつ病などメンタル疾患に関連して医療機関を受診した人は、1999年までは年間40万人台で推移していたものの、2000年以降は顕著に増加し、現在は100万人を超えています。

医療機関を受診する人は、まだ良いほうでしょう。実は、メンタルの不調はほかの病気やけがと同列に捉えられることが少なく、「医者にかかるほどでもない、薬など飲みたくない」と考える人も多いのです。そのため、未受診の“うつ病予備軍”とも言える人は、400〜500万人ほど存在すると考えられ、その数も年々増えています。

うつや不安と関係が深いと言われるのが、自殺です。2000年以降、日本の自殺者数は毎年3万人前後で横ばいに推移しています。また、WHO(世界保健機関)の報告書によれば、世界の年間自殺者数は約100万人となっています。

世界の現状を見ても、いまやメンタルヘルスは、政治や経済などと同列で議論されるべき問題と言えるでしょう。しかし、こうした問題は一律的な対応では解決が難しく、時間もコストも必要になるため、どの国でも脇に置かれてしまいがちです。日本のビジネスの現場でも、ごく一部の企業を除いては、対応に苦慮するあまり放置されているケースが多いのではないでしょうか。


ストレスの影響を身をもって感じた出来事

渡部卓: かく言う私も以前、ストレスの影響を受けたことがあります。40代初め、外資系IT企業でマーケティング・マネージャーを担当し、昼夜を問わず働いていました。当時は米国本社と日本支社をつなぐコーディネータも務めていましたが、本社からは「米国で成功したマーケティングを日本でも展開しろ!」といった指令が、毎日のように送られてきました。しかし、市場構造や顧客ニーズが異なるため、そのまま適用するわけにもいかず、板挟みの状態が続きました。

自分では気がつきませんでしたが、精神的に張り詰めた状況が続き、少しずつストレスを抱え込んでいたようです。ある朝、出勤前に鏡の前に立ったとき、頭の隅に白い箇所を見つけました。白髪かなと思いながら触ると、500円玉ほどの広さで髪が抜け落ちており、腰が抜けるほど驚きました。

このときを境に、メンタルヘルスやワーク・ライフ・バランスを真剣に意識するようになり、45歳でIT系のベンチャー企業に移籍後、これらについて本格的に学び始めました。学者や医者とは異なる方向、つまり、現場に根ざした方向からメンタルヘルス問題に取り組みたいと考え、自分なりに勉強を重ねました。現在の私の仕事は、これまでのキャリアを含め、数多くのビジネスの現場から得た知識と経験が根幹となっています。


該当講座

折れない心を作る

~経営戦略としてのメンタルタフネス経営~

折れない心を作る
渡部卓 (帝京平成大学 現代ライフ学部 教授 株式会社ライフ バランス マネジメント研究所 代表取締役  )

渡部 卓(㈱ライフバランスマネジメント研究所代表)
急激な変化、不確実性の拡大、グローバル化の進展など、厳しい経営環境において結果を出すことが期待されている現代のビジネスパーソンは、これまでにないプレッシャーの中で成果を出すことが求められています。ストレスに負けず、メンタルタフに生きるにはどうしたらいいのか?渡部氏がお話します。


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