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これからの時代に求められる学びのスタイル:茂木健一郎×波頭亮

私塾がコモディティ化しない人材をつくる

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更新日 : 2012年11月22日 (木)

第8章 世の中の問題に文系・理系の線引きはない

写真左:波頭亮(経営コンサルタント) 写真右:茂木健一郎(脳科学者)

司会: 茂木さんのお話では「文系と理系、両方の要素が必要」ということですが、既に大学で文系・理系のどちらかを学び、現在は社会人になっている方が、反対側の要素を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。

茂木健一郎:  まず、理系・文系という発想をやめること。「学部のたった4年間で、自分の人生、決まるんですか?」と言いたい。俺だって、一応、法学部出ているんですよ。「私は文系だから、理系だから、これは私の専門ではありません」と言うのは、「私はバカです」と言っているようなものだと思いません?(笑)

例えば「私は理系だから法律は関係ない」って言う人がいますが、関係あるじゃないですか。アメリカでインターネットビジネスが発達したのは、デジタルミレニアム著作権法のおかげです。プロバイダーは、著作権法違反のコンテンツがあると指摘されたら、それを削除すれば免責されるという法律的なインフラストラクチャーがあったから、ネットビジネスがあれだけ発達したんです。

だから「自分が学んだ反対側の要素を身につけるには、どうしたらいいでしょうか?」と聞かれたら、ただ「やればいいんです」というだけの話です。例えば、ヒッグス粒子が話題になったら、ちょっと調べればいいじゃないですか。Wikipedia(ウィキペディア)でも出てきますよ。そうやって調べたら、キーワードだけでもわかります。

「私は文系です、理系です」と言って、ほかの分野の知識を拒否するのは、単なる怠け者だと僕は判断します。そういうステレオタイプな思考は、ほかのことにも影響すると思うので、もし僕がベンチャー企業の経営者だったら、そういう人は採らないですね。波頭さんは、どう思いますか?

波頭亮: 同感です。文系とか理系とか、何々学部ということにとらわれるのは、意味がないと思います。僕は高校時代、数学や物理のほうが得意だったし、おもしろいとも思っていたのですが、経済学部に行きました。でも大学1、2年生のときに「文系と理系、どっちかだけでは、ものがちゃんとわからないな」と思って、工学部や理学部の1年生が使うような理系の教養教科書を30冊ぐらい読みました。振り返ってみると、あのときにいろいろなベースができたと思います。

学部で使われるベーシックな原論や概論ですから、10年ぐらいで何かドラスティックに内容が変わるわけじゃない。そういう本を30冊、いい本だけをピックアップすれば10冊でいいかもしれない、日本のすべての文系の人が読んだら、日本の知的インフラは1つグレードが上がると思います。

読むといっても、流し読みでいいわけじゃないですよ。理解しながら読むことです。1冊読むのに、最初は四苦八苦するだろうし、もしかしたら50時間ぐらいかかるかもしれない。でも、どんどん効率は上がっていくので、10冊目ぐらいには5時間ぐらいで済むようになります。専門書って、何でもそうですから。

僕にとっては、力学の本も、法哲学の本も、社会学の本も、心理学の本も、自分が専門にやっていた経済・経営とは別のおもしろい話という形でやっていたのですが、そうしたものに使った時間を全部足したら、やはり数千時間になっていると思います。

茂木健一郎: 最後に、誤解されるといけないのでひと言だけ。日本の悪口を含めて、いろいろ言いましたが、日本のことは大好きですからね(笑)。危機感から、若者がかわいそうだと思うから、余計なことだとは思いつつ言っているだけです。

それから、「そんなにいろいろ言うなら、自分でやってみせろよ」って、みなさん思うでしょう? そう、そこなんです。僕の一番の関心事は「自分が何をやるか、自分に何ができるか」ということで、24時間必死になってやっています。だから、本当は人様にいろいろ言うつもりはないんです。この2つだけ補足させてください。波頭さんも、最後に何か補足することはありませんか?

波頭亮: とにかく「努力の総量」という言葉を自分のメルクマールとして動くようにしてほしいですね。そうすれば、いろいろなことが違ってきますから。愚直に信じて、何かつらいことを1,000時間やってみてください。(終)

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茂木健一郎 (脳科学者)
波頭亮 (経営コンサルタント)

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