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これからの時代に求められる学びのスタイル:茂木健一郎×波頭亮
私塾がコモディティ化しない人材をつくる
グローバルキャリア・人ビジネススキル政治・経済・国際
更新日 : 2012年11月19日
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第6章 傑出した能力を育てるポイントは、累積の努力の量とその中身
波頭亮: 一流のプロレベル——野球なら巨人軍に入れるとか、サッカーだったらJ1に入れるというレベル——の人が持つような傑出した能力はどうすれば育つのでしょうか。
優生学が全盛だった20世紀前半は、「素質が大きく関わっている」と考えられていましたが、「素質のウエイトは驚くほど小さい」ということが、だんだんと証明されてきました。その決定打になった調査があります。1990年代のはじめに、K.アンダース・エリクソンという心理学者が、西ベルリン大学のバイオリン学科の学生を次の3つのグループに分けて、練習時間や練習内容、意識などを調査したものです。(※調査タイトル「The Role of Deliberate Practice in the Acquisition of Expert Performance」)
A:国際的なコンクールで優勝したり、ソリストや世界一流のオーケストラ奏者として活躍できるレベル。
B:国際的なコンクールで入賞したり、トップではないけれどオーケストラ奏者として生活できるレベル。
C:学校の音楽の先生や市民楽団の奏者になれるレベル。
彼らの練習時間を調べたところ、A、B、Cの3グループとも、1週間の練習時間は51時間で同じでした。しかし、その練習内容が全く違っていたのです。AとBは一人きりで孤独にやる反復練習を51時間中24時間やっていたのに対し、Cは9時間しかやっていませんでした。
「どの練習がスキルを上げるのに役立つと思いますか?」という意識を聞いたところ、3グループとも「一人きりの孤独な反復練習」と答えています。と同時に、AとBは「この練習はつまらないし、つらい。一番嫌だ」と言っています。でも、AとBは大事だとわかっているから、やっているのです。それに対してCは、大事だとわかっているのにやっていない。つらい練習を避けてしまっているのです。
では、AとBの違い——国際コンクールで優勝する人と、入賞が精いっぱいの人の違い——はどこから来るのでしょうか? それは、大学に入学するまでの累積の練習時間です。3グループともバイオリンを始めたのはだいたい8歳で同じでしたが、大学に入る18歳までに、Aのグループは約7,400時間、Bは約5,300時間、Cは約3,400時間、累積で練習していました。つまり、AとBとCとでは、入学時点でそれぞれ約2,000時間ずつ累積の練習時間が違っていたのです。入学後の練習時間は週に51時間で一緒ですから、これでは永遠に差が縮まりません。
一流レベルになるには、累積の努力の量とその中身——おもしろくない、つらい練習——が問われるということです。では、つらい練習であれば何でもいいのかというと、そうではありません。具体的に有効な練習のポイントとして、3つ掲げられていました。
1つ目は、始める時点でよく考えられた設計をすることです。「よく考えられた設計をする」のは、よき教師ですよね。ウィンブルドンで優勝するようなテニスプレイヤーでも、オリンピックで金メダルをとるフィギュアスケーターでも、世界一の人たちには信頼しているコーチがいます。これと同じで、一流の先生がプログラムを設計してくれること、これが1つ目です。
2つ目は、反復練習です。英語でもゴルフでも、おそらく数学でも、反復しなければいけないのです。
3つ目は、反復をしながらプロセスでフィードバックを行うことです。このときも先生が必要だと思います。いっぱい反復練習をして「どこが良くなった。どこがまだ悪い。だから次はこうしてみよう」というフィードバックを受けて、また反復するのです。
優生学が全盛だった20世紀前半は、「素質が大きく関わっている」と考えられていましたが、「素質のウエイトは驚くほど小さい」ということが、だんだんと証明されてきました。その決定打になった調査があります。1990年代のはじめに、K.アンダース・エリクソンという心理学者が、西ベルリン大学のバイオリン学科の学生を次の3つのグループに分けて、練習時間や練習内容、意識などを調査したものです。(※調査タイトル「The Role of Deliberate Practice in the Acquisition of Expert Performance」)
A:国際的なコンクールで優勝したり、ソリストや世界一流のオーケストラ奏者として活躍できるレベル。
B:国際的なコンクールで入賞したり、トップではないけれどオーケストラ奏者として生活できるレベル。
C:学校の音楽の先生や市民楽団の奏者になれるレベル。
彼らの練習時間を調べたところ、A、B、Cの3グループとも、1週間の練習時間は51時間で同じでした。しかし、その練習内容が全く違っていたのです。AとBは一人きりで孤独にやる反復練習を51時間中24時間やっていたのに対し、Cは9時間しかやっていませんでした。
「どの練習がスキルを上げるのに役立つと思いますか?」という意識を聞いたところ、3グループとも「一人きりの孤独な反復練習」と答えています。と同時に、AとBは「この練習はつまらないし、つらい。一番嫌だ」と言っています。でも、AとBは大事だとわかっているから、やっているのです。それに対してCは、大事だとわかっているのにやっていない。つらい練習を避けてしまっているのです。
では、AとBの違い——国際コンクールで優勝する人と、入賞が精いっぱいの人の違い——はどこから来るのでしょうか? それは、大学に入学するまでの累積の練習時間です。3グループともバイオリンを始めたのはだいたい8歳で同じでしたが、大学に入る18歳までに、Aのグループは約7,400時間、Bは約5,300時間、Cは約3,400時間、累積で練習していました。つまり、AとBとCとでは、入学時点でそれぞれ約2,000時間ずつ累積の練習時間が違っていたのです。入学後の練習時間は週に51時間で一緒ですから、これでは永遠に差が縮まりません。
一流レベルになるには、累積の努力の量とその中身——おもしろくない、つらい練習——が問われるということです。では、つらい練習であれば何でもいいのかというと、そうではありません。具体的に有効な練習のポイントとして、3つ掲げられていました。
1つ目は、始める時点でよく考えられた設計をすることです。「よく考えられた設計をする」のは、よき教師ですよね。ウィンブルドンで優勝するようなテニスプレイヤーでも、オリンピックで金メダルをとるフィギュアスケーターでも、世界一の人たちには信頼しているコーチがいます。これと同じで、一流の先生がプログラムを設計してくれること、これが1つ目です。
2つ目は、反復練習です。英語でもゴルフでも、おそらく数学でも、反復しなければいけないのです。
3つ目は、反復をしながらプロセスでフィードバックを行うことです。このときも先生が必要だと思います。いっぱい反復練習をして「どこが良くなった。どこがまだ悪い。だから次はこうしてみよう」というフィードバックを受けて、また反復するのです。
関連書籍
突き抜ける人材
波頭亮, 茂木健一郎PHP研究所
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該当講座
私塾がコモディティ化しない人材をつくる
~これからの時代に求められる学びのスタイル~
茂木 健一郎(脳科学者)
波頭 亮(経営コンサルタント)
いま求められるコモディティ化しない人材を育成するためには、これまでの標準的な人材を生んできた教育システムでは限界があります。本セミナーでは、「今までのやり方と古い常識にとらわれずに自分で考え、自分で行動することができる」人材を育てる一つの試みとして、私塾の可能性に注目します。新しい時代に即した私塾とは?茂木氏と波頭氏が議論します。
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