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宮城県の村井嘉浩知事と、竹中平蔵ほか4人の専門家が本音で語る

『日本大災害の教訓』出版記念シンポジウム

東京政治・経済・国際
更新日 : 2012年06月14日 (木)

第7章 国家の危機管理能力を高めるには、地方分権が欠かせない

船橋洋一
船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ 理事長)

竹中平蔵: 村井知事は被災地の最前線で、まさにカオスの中で過ごされたと思います。そのとき地方の視点から、中央政府の問題点がいろいろ見えたのではないでしょうか。今回の教訓として、国と地方のあるべき姿について、何かご示唆をいただけませんでしょうか。

村井嘉浩: 政府とは、たびたび調整させていただきましたが、政府も混乱しており、タイムリーな情報提供や指示はなかなか得られませんでした。政府の混乱は、ある程度は止むを得なかったと思いますが、私は今の国のシステム自体に大きな問題があると考えています。

国があらゆる権限と財源を持っていて、国の主導の元でなければ我々は動けないという現在の仕組みでは、スピードに欠けるのは当然です。道州制のような形で思いきって我々に権限や財源を与えるような対応ができていれば、かなりスピーディに対応できたと思います。

市川宏雄: 1959年の伊勢湾台風の後につくられた災害対策基本法は「各地方自治体が第一次的な責任を負う」としています。これが西川先生の冒頭のお話にあったように、効果を上げたケースと、今回のように上げなかったケースがあるわけです。なぜ今回は効果がなかったかというと、災害時に対応すべき自治体がそもそもなくなってしまったからです。こういう場合の対応は考えられていませんでした。

ただし、自衛隊は阪神・淡路大震災の反省から、即座に動ける態勢をとっていたために機能しました。このことを考えると、災害対策基本法における「地方自治体を主体とすべき」という話と同時に、「広域災害は別」というバリエーションが必要だと思います。

船橋洋一: 今回、自衛隊は本当によくやったと思います。阪神・淡路大震災のときは、地方自治体の要請がなければ自衛隊は出動できなかったために、初動が遅れました。その反省から自衛隊法を改正し、被災地からの要請を待たずに迅速に対応できるようにしていたのがよかったんです。

基本的には、現場がまずは全力を挙げて取り組むことです。しかし災害が地方の能力を超える、あるいは広域化するときは、中央政府に依頼する。この連携をしなければいけないということですね。今回は、要請する自治体自体がつぶれていたケースも多く、やはり地方自治体だけでは無理だったと思います。

村井嘉浩: もしかしたら誤解を与えてしまったかもしれませんので、補足をさせてください。私が「道州制のような分権を思いっきり進めたらいい」と申し上げたのは、「今回のような危機のときに、我々に全部任せろ」ということではありません。やはり今回のような国家的な危機の場合は、国がやるべきだと思います。

東日本大震災の瞬間も、国は北海道から沖縄までいろいろな内政問題を抱えていて、地震の翌日でさえも各地方から上がってくる陳情に対処していたはずです。道州制などの仕組みを取り入れて地方分権を進めていけば、こうした内政に必要な国のエネルギーは極めて小さくて済むようになります。今回の震災は、地方分権を進めて日ごろから国の負担をできるだけ小さくしておき、国家的危機のときに最大限のエネルギーを注げるような国のシステムをつくるきっかけになるのではないかと私は捉えているのです。

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関連書籍

『日本大災害の教訓—複合危機とリスク管理』

竹中平蔵, 船橋洋一【編著】
東洋経済新報社


該当講座

『日本大災害の教訓~複合危機とリスク管理~』
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)
船橋洋一 (公益財団法人国際文化会館 グローバル・カウンシル チェアマン)
市川宏雄 (明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授 )
西川智 (国土交通省 土地・建設産業局 土地市場課長 / 工学博士)
吉岡斉 (九州大学 教授 / 副学長)
村井嘉浩 (宮城県知事)

竹中平蔵(慶應義塾大学教授)船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長)、市川宏雄(明治大学専門職大学院長)、西川智(国土交通省土地・建設産業局土地市場課長)、吉岡斉(九州大学教授)、村井嘉浩(宮城県知事)東日本大震災の被害詳細、原因、教訓を世界の人々と共有し、後世へ伝えることを目的に、各分野の専門家が執筆した『日本大災害の教訓』出版シンポジウム。


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