記事・レポート
「水が足りない」~ビジネス戦略と地球環境~
朝日新聞GLOBE創刊1周年記念パネルディスカッション
注目のオピニオン
更新日 : 2010年07月06日
(火)
第5章 世界3大「水メジャー」に対抗する日本チームをつくりたい
~パネルディスカッション【水ビジネスと国家戦略、環境とのかかわりは?】~
梶原みずほ: 最初に、望月さんと桑原さんにプレゼンテーションしていただきます。
望月晴文: 私は以前、資源エネルギー庁長官を2年ほどやっておりました。30数年の役人生活では石油にかかわることが長く、「不都合な真実」の方をずっとやっておりました。今回、「都合のいい真実」に脱皮をしたいと思い、勉強してまいりました。
国際的な水供給事業に関しては、とにかく人口が爆発し、経済も大成長しているなかで、水需要が急増しています。中東には何回も行きましたが、私どもが石油に関心を持っているのとは逆に、先方の関心は水でした。水問題はもっと真剣に取り組むべきもので、大切な資源国に日本という国をわかってもらううえで、非常に意味があるものだと思います。
将来の予測では、2025年までに現在よりも3割ぐらい水需要が増えると言われています。世界の水ビジネスの市場は現在60兆円と言われていますが、2025年には100兆円を超えると予測されています。そのなかで、「海外水メジャーによる市場の寡占化」という問題があります。世界には「水メジャー」という大きな3企業があって水ビジネスを独占してきたわけです。
このうち2社は、スエズ・エンバイロメントとヴェオリア・ウォーターというフランスの会社です。もう1社は、イギリスのテムズ・ウォーターで、これはサッチャー政権時代に水ビジネスを民営化したプロセスのなかで生まれた会社です。
日本には、水の循環システム、海水淡水化などの水処理施設、特殊用途向けの半導体などに使う超純水製造、ポンプの分野などで高度な技術があります。それから、漏水防止の技術と管理技術も優れています。加えて、1960年代以降の公害問題のなかで、水処理の技術も大変進みました。
注目していただきたいのは、水メジャーはこういった日本の技術を全部使っているということです。ただし、水ビジネスで世界を席捲するためには、水処理や水供給のマネジメントをビジネスとして展開するところまで引き受けることが必要です。100兆円のビジネスになるかもしれない水ビジネスのなかで、今の日本が担当している部分はたったの1兆円です。
日本で水ビジネスの運営を行っているのは公共体、地方自治体で、ノウハウはそこにあるのですが、世界でビジネスをとりにいけるチームを組成したい。国際ビジネスのなかで日本チームとして、コンソーシアムとして展開をしていきたいと思っています。
記事をシェアする
ブログに書く
この記事のURLはこちら。
http://www.academyhills.com/note/opinion/10060205AsahiGLOBE.html
関連リンク
「水が足りない」~ビジネス戦略と地球環境~ インデックス
-
第1章 水が環境に与える好都合な真実と、今そこにある危機
2010年06月02日 (水)
-
第2章 黄河の断流。中国では、母なる大河が干上がっている
2010年06月11日 (金)
-
第3章 日本国民が、国と自分の将来を不安視する3つの理由とは?
2010年06月21日 (月)
-
第4章 前原国土交通大臣が描く、4つの成長戦略
2010年06月28日 (月)
-
第5章 世界3大「水メジャー」に対抗する日本チームをつくりたい
2010年07月06日 (火)
-
第6章 水ビジネスで国際競争力に勝つかぎは「システム」
2010年07月15日 (木)
-
第7章 日本の強みは雨水利用と節水技術
2010年07月26日 (月)
-
第8章 ODAの壁。装置納入後、5年過ぎたら運転保守ができない
2010年08月03日 (火)
-
第9章 日本の食料自給率向上=地球の水ストレス減少
2010年08月12日 (木)
-
第10章 日本の技術を活かせば、ビジネスと途上国支援を両立できる
2010年08月23日 (月)
注目の記事
-
11月26日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年11月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
11月26日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 01月30日 (木) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第2回。映画『ビリギャル』の主人公のモデルで教育家として活動する小林さやかさんと、元陸上選....
小林さやかと為末大が語る『人間の学び・成長のプロセスとマインドセット』