記事・レポート

『美』という21世紀の文化資本

今、日本人が見失ってはならないこと

更新日 : 2010年03月02日 (火)

第7章 不況のときこそ、美が必要

伊藤俊治氏

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伊藤俊治: 美に触れると人は人生で何が大切なのかを問い直される、自分の置かれた状況を非常に創造的にクリエイティブに考えられるようになる、という説があります。やはり美というのは生命と非常に深く関連していて、生き延びるための1つの指針を示すのだと思います。

ちょっと独断的な考えになりますが、今のように経済不況で困難な時代であればあるほど、人間は自分と向き合って、本当に大切なことは何なのかを考え直すことが重要になるのではないでしょうか。

1929年にアメリカで恐慌が起こり、33年に大統領に就任したルーズベルトが行ったニューディール政策の一環に、大規模な芸術文化支援がありました。ロックフェラー・センターの壁画プロジェクトには、ディエゴ・リベラなどのアーティストが参加しました。そういうプロセスの中からたくさんの名作が生み出されたのです。

こうして名作を生むだけではなく、美や芸術がもたらす効果というものが大切だと思うのです。美や芸術に触れた人々の感性が活性化し、感覚が開放されて、創造的に物事や現実に取り組むことができるようになる。そこから新しいアイディアが生まれたり、次につながったりすることがいっぱい出てくると思うのです。

今、経済状況は非常に悪化していますが、悪化すればするほど、人間には美が必要になるのではないか、それは歴史が証明していると思います。美というのは、人々に生命力や活力を与えてくれると思うのです。

福原義春: バブル期は、何千万とか何億と積んで、美をお金で買う時代でしたよね。それが今ではお金で買うのではなく、美を美として求めていく時代になってきたので、ある意味ではそのほうが人間の生き方としては純粋になってきたのかもしれません。

アメリカ先住民族の文化は非常に豊かなものでしたが、ルーズベルト大統領以降の政策によって、アメリカはハリウッドをつくり、ポップアートをつくったわけで、それがなかったアメリカの現代文化というのはなかったと思います。

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福原義春 (株式会社資生堂 名誉会長)
伊藤俊治 (東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授)

福原義春(㈱資生堂名誉会長)
伊藤俊治(東京藝術大学教授)


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