記事・レポート
ビジネスマンは人権問題と無縁か?
マネックスグループ 松本大社長、ノーベル平和賞受賞のNGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表とともに人権問題について考える
更新日 : 2009年11月13日
(金)
第7章 大きな力と対峙するには、「公」と「集団」がリスクヘッジになる
会場からの質問: ヒューマン・ライツ・ウォッチがやっている活動と、貧困という問題を結びつけることはできるのでしょうか。また、人権の基準というものは国々によって質の違うものではないかと思うのですが、ヒューマン・ライツ・ウォッチは人権の基準をどこにおいて活動しているのでしょうか。
ケネス・ロス: 人権と貧困という問題は、直接的につながりがあると私たちは思っています。政府が市民に対して説明責任をきちんと果たすことで、政府のリソースが市民生活の改善にために使われることになります。独裁政権では、きちんとした説明責任が果たされないで、人々のお金が独裁者のために使われてしまうのです。
言論の自由を約束し、NGOなどに結社の自由を提供し、自由な意見を述べることができる政治的な権利を確保すれば、政府は市民に対して説明義務を持つという立場にならざるを得ないので、人々の生活はよくなると思います。
もし貧困を改善するということであれば、政府のリソースが精査され、何が行われているかがプレスに暴露されることで、国際社会が糾弾していくことになると思います。それが貧困に終止符を打つことにつながると思います。
基準については、私たちが適用しているのは国際的な条約に書かれているものです。多くのさまざまな政府が加盟している条約が2つあります。1つは拷問を禁止し、言論の自由や結社の自由を約束し、誰もが公平で差別のない、きちんとした裁判が受けられるなどの政府の義務を定めた条約で、自由権規約と呼ばれています。もう1つは健康や住居に関する権利、仕事につく権利といったものを認めた条約で、社会権規約と呼ばれています。両方とも世界の各国が批准している条約ですから、この基準をベースとして私たちは政府に対して警鐘を鳴らしています。
会場からの質問: お話を伺っていると、こうした活動をするために、恐怖心を克服する勇気みたいなものが要るのではないかと思いました。日本では、言いたいことを言うと報復を恐れなくてはならなかったり、嫌がらせを受けることがあったり、一人ひとりがアクションを起こしにくい文化ではないかと思います。
ご本人や家族の保護というものがあると思いますが、言いたいことを言ったときに身を守るということに対しするお考えを伺わせてください。大きなパワーを持つ人たちと戦うときのコツといったものを教えていただけましたら幸いです。
松本大: ちゃんとリスクを回避できているかどうかは、まだわかりません。日本は問題があると思います。民主主義の国なのに、例えば検察の東京地検特捜部が扱った事件に関しては、何十年、何百年経とうが明かされることがない。検察はスーパーパワーを持っていて、検察が「黒だ」と言ったら、もうそれでおしまいということです。
マスコミもぶれています。「指定暴力団」という言葉が日本にはありますが、暴力団を指定して残しているわけで、これは世界の中からすればあり得ない話です。
こういう国なので非常に危険は大きいと思います。しかし、ちゃんと言う方が、公な場所に出れば出るほど、セキュリティは高くなると思うのです。狭いところから始めて、周りの人、会社の人、社会へと、なるべくいろいろなところ、そして広いところで伝えることが安全保障の効果が一番あると私は思っています。それでも怖いことはいっぱいありますが。
ケネス・ロス: きょうは人権に関心のある方が来ていると思います。もし人権に関して話すことが難しければ、ここにいる人間が集団になることで、自分たちを守ることができると思います。こうした問題に関してグループとして討議をしていく、発言をしていくことです。知的なエネルギーのある方が集まっていると思いますので、皆さんが力を合わせれば、守ることができると思います。
松本大: そういうことが言えないままこの社会を放っておいたら、家族、子どもはもっと危ない目に遭います。だから、今直していかないと。「怖いから……」と避けていると、次の世代の子どもも同じ目に遭います。そしてそのときにはもっと悪い社会になっていて、本当に危ないことになる。だから家族の安全を考えると、そういうことを今ちゃんと言った方がいいと思うのです。変えていかないと。言うのとやるのとではかなり違いますが、最後は踏ん切りをつけてやるしかないと思います。(了)
ケネス・ロス: 人権と貧困という問題は、直接的につながりがあると私たちは思っています。政府が市民に対して説明責任をきちんと果たすことで、政府のリソースが市民生活の改善にために使われることになります。独裁政権では、きちんとした説明責任が果たされないで、人々のお金が独裁者のために使われてしまうのです。
言論の自由を約束し、NGOなどに結社の自由を提供し、自由な意見を述べることができる政治的な権利を確保すれば、政府は市民に対して説明義務を持つという立場にならざるを得ないので、人々の生活はよくなると思います。
もし貧困を改善するということであれば、政府のリソースが精査され、何が行われているかがプレスに暴露されることで、国際社会が糾弾していくことになると思います。それが貧困に終止符を打つことにつながると思います。
基準については、私たちが適用しているのは国際的な条約に書かれているものです。多くのさまざまな政府が加盟している条約が2つあります。1つは拷問を禁止し、言論の自由や結社の自由を約束し、誰もが公平で差別のない、きちんとした裁判が受けられるなどの政府の義務を定めた条約で、自由権規約と呼ばれています。もう1つは健康や住居に関する権利、仕事につく権利といったものを認めた条約で、社会権規約と呼ばれています。両方とも世界の各国が批准している条約ですから、この基準をベースとして私たちは政府に対して警鐘を鳴らしています。
会場からの質問: お話を伺っていると、こうした活動をするために、恐怖心を克服する勇気みたいなものが要るのではないかと思いました。日本では、言いたいことを言うと報復を恐れなくてはならなかったり、嫌がらせを受けることがあったり、一人ひとりがアクションを起こしにくい文化ではないかと思います。
ご本人や家族の保護というものがあると思いますが、言いたいことを言ったときに身を守るということに対しするお考えを伺わせてください。大きなパワーを持つ人たちと戦うときのコツといったものを教えていただけましたら幸いです。
松本大: ちゃんとリスクを回避できているかどうかは、まだわかりません。日本は問題があると思います。民主主義の国なのに、例えば検察の東京地検特捜部が扱った事件に関しては、何十年、何百年経とうが明かされることがない。検察はスーパーパワーを持っていて、検察が「黒だ」と言ったら、もうそれでおしまいということです。
マスコミもぶれています。「指定暴力団」という言葉が日本にはありますが、暴力団を指定して残しているわけで、これは世界の中からすればあり得ない話です。
こういう国なので非常に危険は大きいと思います。しかし、ちゃんと言う方が、公な場所に出れば出るほど、セキュリティは高くなると思うのです。狭いところから始めて、周りの人、会社の人、社会へと、なるべくいろいろなところ、そして広いところで伝えることが安全保障の効果が一番あると私は思っています。それでも怖いことはいっぱいありますが。
ケネス・ロス: きょうは人権に関心のある方が来ていると思います。もし人権に関して話すことが難しければ、ここにいる人間が集団になることで、自分たちを守ることができると思います。こうした問題に関してグループとして討議をしていく、発言をしていくことです。知的なエネルギーのある方が集まっていると思いますので、皆さんが力を合わせれば、守ることができると思います。
松本大: そういうことが言えないままこの社会を放っておいたら、家族、子どもはもっと危ない目に遭います。だから、今直していかないと。「怖いから……」と避けていると、次の世代の子どもも同じ目に遭います。そしてそのときにはもっと悪い社会になっていて、本当に危ないことになる。だから家族の安全を考えると、そういうことを今ちゃんと言った方がいいと思うのです。変えていかないと。言うのとやるのとではかなり違いますが、最後は踏ん切りをつけてやるしかないと思います。(了)
ビジネスマンは人権問題と無縁か? インデックス
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第1章 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが東京に進出した理由
2009年09月02日 (水)
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第2章 人権を侵害している政府に圧力をかける3つの方法
2009年10月14日 (水)
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第3章 事例紹介:ヒューマン・ライツ・ウォッチの交渉術
2009年10月01日 (木)
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第4章 資金の3分の2は、個人からの寄付
2009年10月14日 (水)
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第5章 日本には、世界から尊敬される国になれるポテンシャルがある
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第6章 ビジネス界からの寄付が多い理由~プロのNGOと企業の共通点~
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2009年11月13日 (金)
該当講座
ビジネスマンは人権問題と無縁か?マネックスグループ・松本社長が緊急提起
~ノーベル平和賞受賞NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表と考える~
松本大(マネックスグループ㈱代表取締役社長CEO)
ケネス・ロス(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表)
一人のビジネスマンとして、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の活動を側面から個人的に支援するマネックス・グループの松本氏と、ノーベル平和賞受賞団体であるHRWを率いて15年になるロス代表が、人権とビジネスマンの関係について議論します。
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