記事・レポート
ビジネスマンは人権問題と無縁か?
マネックスグループ 松本大社長、ノーベル平和賞受賞のNGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表とともに人権問題について考える
更新日 : 2009年10月14日
(水)
第2章 人権を侵害している政府に圧力をかける3つの方法
ケネス・ロス: 自分の権利を守るということを考えた場合、裁判に持ち込むのが通常だと思います。世界の多くの国には法の裁きというものがあるため、裁判を起こせば自分の権利を守れるわけです。
しかし私たちが活動を行っている様々な国では、そのように機能する裁判所、法廷というものがないのです。判事が殺されたり、あるいは汚職があったりして、裁判に持ち込んでも自分の権利を守ることができないのです。
私たちは、どうすれば裁判ができない状態でも人権を守ることができるかを考えてきました。そして、政府のほかの部分に圧力をかけることによって実現できるとわかったのです。というのは、政府のそれぞれの組織は権利を擁護するための責任を持っているからです。もし司法がだめなら行政、あるいは立法に働きかけて人権擁護を進めていくのです。ただ単に弁護士を雇うということだけでは、人権擁護はできません。
独裁者の目からすると、人権侵害にはメリットがあるわけです。例えば自分を批判する新聞を黙らせたい、あるいは野党や反体制活動家を黙らせたい場合、人権を蹂躙すれば自分の力を守ることができます。
私たちの仕事は、この人権侵害のコストを上げることです。つまり独裁者がコストとメリットを秤にかけて考えたとき、人権侵害をしたときのコストが大き過ぎると思うようにするのです。
具体的にはどうするかというと、最初に実地調査から始めます。調査を通してできるだけ具体的に、そして正確に、一体この政府は何をしているのか、どのような人権侵害を犯しているのかを突き止めます。そしてリサーチした情報をすべて1つにまとめて報告書を作成します。この報告書は包括的でバランスがとれていて、公平で正確でなくてはなりません。
こうした報告書を使うことによって、政府に対して3つの形でプレッシャーをかけることができるのです。
まず1つ目。「人権侵害の国」と思われたい国はありませんから、その政府が行った人権侵害に関して、プレスが書き立てるようにするのです。これはその政府にとって非常に恥ずかしいことですので、国民に対する政府の権威が色あせることになります。ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は精度が高いことで知られていますので、プレスは我々の情報内容をよくカバーしてくれます。
ちなみに昨日、私はフィリピンのマニラで、フィリピンで現在増え続けている暗殺集団に関する記者会見を行いました。70名のジャーナリストが来ましたが、先ほどグーグルで検索したところ、この記者会見に関する記事がすでに200件ぐらい出ていました。
政府は不正行為に光が当たることを恐れています。ということは、それをプレッシャーとして政府の行動を監視することができるということです。こうした報道をやめさせるには、自分たちの行動を変えなければいけない、人権侵害をやめなければいけないということに気づくのです。これがまず1つ目の方法です。
2つ目の方法は、人権を擁護する強力な政府の影響力を使って、人権侵害を行っている政府に対して圧力をかけることです。それが、例えば土井さんの仕事です。世界の主要国の首都にヒューマン・ライツ・ウォッチのオフィスがあります。ワシントンにもロンドンにもパリにもベルリンにもブリュッセルにも、そして今回、東京にもオフィスをつくりました。これは外交的、あるいは経済的、政治的な影響力を発揮して、人権侵害を行っている政府に圧力をかけるよう政府に働きかけてほしいからです。
人権侵害を継続すると援助が打ち切られてしまうかもしれない、あるいは特定の借款を受けることができなくなるかもしれないという恐れを植えつけるのです。単に評判だけではなく、こうしたプレッシャーがかかるようにすることも非常に強力な方法になります。これが人権に対して注意を払うようになる2つ目の方法です。
3つ目は、最悪のケースに対するものです。政府が集団虐殺や人道に対する罪、戦争犯罪などの国際犯罪にあたる行為などを行った場合に、その政府の責任者を訴追します。ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際的な裁判所を活用するという方法をとっています。独裁者が国内の裁判官を殺害したのなら、オランダのハーグにある国際刑事裁判所を活用して裁きを受けさせるのです。
しかし私たちが活動を行っている様々な国では、そのように機能する裁判所、法廷というものがないのです。判事が殺されたり、あるいは汚職があったりして、裁判に持ち込んでも自分の権利を守ることができないのです。
私たちは、どうすれば裁判ができない状態でも人権を守ることができるかを考えてきました。そして、政府のほかの部分に圧力をかけることによって実現できるとわかったのです。というのは、政府のそれぞれの組織は権利を擁護するための責任を持っているからです。もし司法がだめなら行政、あるいは立法に働きかけて人権擁護を進めていくのです。ただ単に弁護士を雇うということだけでは、人権擁護はできません。
独裁者の目からすると、人権侵害にはメリットがあるわけです。例えば自分を批判する新聞を黙らせたい、あるいは野党や反体制活動家を黙らせたい場合、人権を蹂躙すれば自分の力を守ることができます。
私たちの仕事は、この人権侵害のコストを上げることです。つまり独裁者がコストとメリットを秤にかけて考えたとき、人権侵害をしたときのコストが大き過ぎると思うようにするのです。
具体的にはどうするかというと、最初に実地調査から始めます。調査を通してできるだけ具体的に、そして正確に、一体この政府は何をしているのか、どのような人権侵害を犯しているのかを突き止めます。そしてリサーチした情報をすべて1つにまとめて報告書を作成します。この報告書は包括的でバランスがとれていて、公平で正確でなくてはなりません。
こうした報告書を使うことによって、政府に対して3つの形でプレッシャーをかけることができるのです。
まず1つ目。「人権侵害の国」と思われたい国はありませんから、その政府が行った人権侵害に関して、プレスが書き立てるようにするのです。これはその政府にとって非常に恥ずかしいことですので、国民に対する政府の権威が色あせることになります。ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は精度が高いことで知られていますので、プレスは我々の情報内容をよくカバーしてくれます。
ちなみに昨日、私はフィリピンのマニラで、フィリピンで現在増え続けている暗殺集団に関する記者会見を行いました。70名のジャーナリストが来ましたが、先ほどグーグルで検索したところ、この記者会見に関する記事がすでに200件ぐらい出ていました。
政府は不正行為に光が当たることを恐れています。ということは、それをプレッシャーとして政府の行動を監視することができるということです。こうした報道をやめさせるには、自分たちの行動を変えなければいけない、人権侵害をやめなければいけないということに気づくのです。これがまず1つ目の方法です。
2つ目の方法は、人権を擁護する強力な政府の影響力を使って、人権侵害を行っている政府に対して圧力をかけることです。それが、例えば土井さんの仕事です。世界の主要国の首都にヒューマン・ライツ・ウォッチのオフィスがあります。ワシントンにもロンドンにもパリにもベルリンにもブリュッセルにも、そして今回、東京にもオフィスをつくりました。これは外交的、あるいは経済的、政治的な影響力を発揮して、人権侵害を行っている政府に圧力をかけるよう政府に働きかけてほしいからです。
人権侵害を継続すると援助が打ち切られてしまうかもしれない、あるいは特定の借款を受けることができなくなるかもしれないという恐れを植えつけるのです。単に評判だけではなく、こうしたプレッシャーがかかるようにすることも非常に強力な方法になります。これが人権に対して注意を払うようになる2つ目の方法です。
3つ目は、最悪のケースに対するものです。政府が集団虐殺や人道に対する罪、戦争犯罪などの国際犯罪にあたる行為などを行った場合に、その政府の責任者を訴追します。ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際的な裁判所を活用するという方法をとっています。独裁者が国内の裁判官を殺害したのなら、オランダのハーグにある国際刑事裁判所を活用して裁きを受けさせるのです。
ビジネスマンは人権問題と無縁か? インデックス
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第1章 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが東京に進出した理由
2009年09月02日 (水)
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第2章 人権を侵害している政府に圧力をかける3つの方法
2009年10月14日 (水)
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第3章 事例紹介:ヒューマン・ライツ・ウォッチの交渉術
2009年10月01日 (木)
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第4章 資金の3分の2は、個人からの寄付
2009年10月14日 (水)
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第5章 日本には、世界から尊敬される国になれるポテンシャルがある
2009年10月22日 (木)
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第6章 ビジネス界からの寄付が多い理由~プロのNGOと企業の共通点~
2009年11月02日 (月)
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第7章 大きな力と対峙するには、「公」と「集団」がリスクヘッジになる
2009年11月13日 (金)
該当講座
ビジネスマンは人権問題と無縁か?マネックスグループ・松本社長が緊急提起
~ノーベル平和賞受賞NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表と考える~
松本大(マネックスグループ㈱代表取締役社長CEO)
ケネス・ロス(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表)
一人のビジネスマンとして、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の活動を側面から個人的に支援するマネックス・グループの松本氏と、ノーベル平和賞受賞団体であるHRWを率いて15年になるロス代表が、人権とビジネスマンの関係について議論します。
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