記事・レポート
ビジネスマンは人権問題と無縁か?
マネックスグループ 松本大社長、ノーベル平和賞受賞のNGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表とともに人権問題について考える
更新日 : 2009年11月02日
(月)
第6章 ビジネス界からの寄付が多い理由~プロのNGOと企業の共通点~
松本大: お話の中で、1つのポストに対して300人の応募があるということだったのですが、人気の理由はどこにあるとお考えでしょうか。
ケネス・ロス: 1つは「プロとして、自分たちが信念を持ってできる仕事をしたい」という方が多いということではないでしょうか。1つの理想に向かって仕事ができるというのは、すばらしい充実感だと思います。
もう1つ魅力を語るならば、プロとしてみずからの育成を図ることができるということでしょう。ここで働けば課題をこなしていかなければいけないわけで、大変大きなチャレンジになります。調査員は、いろいろなことが起こっている現場に行かなければなりませんし、レポートを書く力も必要です。プレスに対してきちんと話もできなければいけません。また、政府の上層部に対して話ができ、対応できなければいけません。複合的なスキルが必要になってきます。
簡単なことではありませんが、皆さん大変努力をして仕事をしてくれます。信念を持って働いているから、時間を割くことに全く躊躇しないのです。それによって社会が変わるということ、例えば人が釈放された、もしくは拷問が止まった、もしくは暗殺集団を止めることができたといった大きな報償が得られる。そうした大変充実感のある仕事であり、それによって多くの方々が、「こういう仕事をしたい」と思ってくれているのではないでしょうか。
松本大: 極めて危険な状況に自分の身を置いてきたことが何度もあると思うのですが、何がそこまであなたを突き動かしているのでしょうか。
ケネス・ロス: 危険ということを過剰には語りたくないと思います。よく知られた団体ですし、私たちに攻撃をするとスキャンダルに発展しますから、ある意味保護されている環境にありますし、その保護をうまく活用しなければいけないという責任も感じています。
私は信念を持ってできる仕事がしたかったのです。弁護士としての教育を受け、ニューヨークの弁護士事務所で職を得ましたが、1年半ぐらい勤めて「これは私の生涯の仕事ではない」と思いました。
その後、5年ぐらい検事として犯罪に関する仕事をしましたが、人権問題にかかわることの方が充実感を得ることができると思ったのです。その後、幸いにもこの仕事を得ることができ、それからずっと21年間続けています。
毎日いろいろな新しい課題が突きつけられます。そこでやる気、エネルギーというのが湧いてくる、仕事というのは本来そうあるべきだと思っています。
松本大: ヒューマン・ライツ・ウォッチを育ててきた中で、何が一番大変でしたか。
ケネス・ロス: ヒューマン・ライツ・ウォッチの成長は非常に安定しています。一番大きな課題は、我々がどのような違いを生み出すことができるかを投資家に説明することです。「一体どうやって物事を変えられるのか」をうまく説明できると、積極的にかかわってくれる方が増え、組織が大きくなるのです。
松本大: ビジネスパーソンがより多くのお金を寄附するのは、なぜだと思いますか?
ケネス・ロス: 基本的には、我々と信念を共有できるから寄附をしてくださるのだと思いますが、国際的な仕事をしていらっしゃる方、つまり、グローバルな視点を持っている人が寄附をしてくれることが多いです。
しかし、そのビジネス分野について私たちが調査をしている場合などは、利害相反になってしまうので、寄附をお断りすることもあります。ある程度距離を置くことが重要だと思うからです。「お金をもらったから、こういったことをやっている」と思われては困るのです。
事業を運営するに当たってお金が必要だということを、よくわかってくださるのはビジネスパーソンだと思いますし、企業とプロとしてのNGOでは、共通項がたくさんあると思います。ですから私たちのサポートの大半はビジネス界からで、特に金融界の方が多いということは納得できることだと思います。
ケネス・ロス: 1つは「プロとして、自分たちが信念を持ってできる仕事をしたい」という方が多いということではないでしょうか。1つの理想に向かって仕事ができるというのは、すばらしい充実感だと思います。
もう1つ魅力を語るならば、プロとしてみずからの育成を図ることができるということでしょう。ここで働けば課題をこなしていかなければいけないわけで、大変大きなチャレンジになります。調査員は、いろいろなことが起こっている現場に行かなければなりませんし、レポートを書く力も必要です。プレスに対してきちんと話もできなければいけません。また、政府の上層部に対して話ができ、対応できなければいけません。複合的なスキルが必要になってきます。
簡単なことではありませんが、皆さん大変努力をして仕事をしてくれます。信念を持って働いているから、時間を割くことに全く躊躇しないのです。それによって社会が変わるということ、例えば人が釈放された、もしくは拷問が止まった、もしくは暗殺集団を止めることができたといった大きな報償が得られる。そうした大変充実感のある仕事であり、それによって多くの方々が、「こういう仕事をしたい」と思ってくれているのではないでしょうか。
松本大: 極めて危険な状況に自分の身を置いてきたことが何度もあると思うのですが、何がそこまであなたを突き動かしているのでしょうか。
ケネス・ロス: 危険ということを過剰には語りたくないと思います。よく知られた団体ですし、私たちに攻撃をするとスキャンダルに発展しますから、ある意味保護されている環境にありますし、その保護をうまく活用しなければいけないという責任も感じています。
私は信念を持ってできる仕事がしたかったのです。弁護士としての教育を受け、ニューヨークの弁護士事務所で職を得ましたが、1年半ぐらい勤めて「これは私の生涯の仕事ではない」と思いました。
その後、5年ぐらい検事として犯罪に関する仕事をしましたが、人権問題にかかわることの方が充実感を得ることができると思ったのです。その後、幸いにもこの仕事を得ることができ、それからずっと21年間続けています。
毎日いろいろな新しい課題が突きつけられます。そこでやる気、エネルギーというのが湧いてくる、仕事というのは本来そうあるべきだと思っています。
松本大: ヒューマン・ライツ・ウォッチを育ててきた中で、何が一番大変でしたか。
ケネス・ロス: ヒューマン・ライツ・ウォッチの成長は非常に安定しています。一番大きな課題は、我々がどのような違いを生み出すことができるかを投資家に説明することです。「一体どうやって物事を変えられるのか」をうまく説明できると、積極的にかかわってくれる方が増え、組織が大きくなるのです。
松本大: ビジネスパーソンがより多くのお金を寄附するのは、なぜだと思いますか?
ケネス・ロス: 基本的には、我々と信念を共有できるから寄附をしてくださるのだと思いますが、国際的な仕事をしていらっしゃる方、つまり、グローバルな視点を持っている人が寄附をしてくれることが多いです。
しかし、そのビジネス分野について私たちが調査をしている場合などは、利害相反になってしまうので、寄附をお断りすることもあります。ある程度距離を置くことが重要だと思うからです。「お金をもらったから、こういったことをやっている」と思われては困るのです。
事業を運営するに当たってお金が必要だということを、よくわかってくださるのはビジネスパーソンだと思いますし、企業とプロとしてのNGOでは、共通項がたくさんあると思います。ですから私たちのサポートの大半はビジネス界からで、特に金融界の方が多いということは納得できることだと思います。
ビジネスマンは人権問題と無縁か? インデックス
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第1章 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが東京に進出した理由
2009年09月02日 (水)
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第2章 人権を侵害している政府に圧力をかける3つの方法
2009年10月14日 (水)
-
第3章 事例紹介:ヒューマン・ライツ・ウォッチの交渉術
2009年10月01日 (木)
-
第4章 資金の3分の2は、個人からの寄付
2009年10月14日 (水)
-
第5章 日本には、世界から尊敬される国になれるポテンシャルがある
2009年10月22日 (木)
-
第6章 ビジネス界からの寄付が多い理由~プロのNGOと企業の共通点~
2009年11月02日 (月)
-
第7章 大きな力と対峙するには、「公」と「集団」がリスクヘッジになる
2009年11月13日 (金)
該当講座
ビジネスマンは人権問題と無縁か?マネックスグループ・松本社長が緊急提起
~ノーベル平和賞受賞NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表と考える~
松本大(マネックスグループ㈱代表取締役社長CEO)
ケネス・ロス(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表)
一人のビジネスマンとして、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の活動を側面から個人的に支援するマネックス・グループの松本氏と、ノーベル平和賞受賞団体であるHRWを率いて15年になるロス代表が、人権とビジネスマンの関係について議論します。
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