記事・レポート
ビジネスマンは人権問題と無縁か?
マネックスグループ 松本大社長、ノーベル平和賞受賞のNGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表とともに人権問題について考える
更新日 : 2009年10月01日
(木)
第3章 事例紹介:ヒューマン・ライツ・ウォッチの交渉術
ケネス・ロス: いくつか事例をお話します。西アフリカのリベリアで恐怖政治を敷いた元大統領チャールズ・テーラーをご存知でしょうか。隣国シエラレオネの内戦にもかかわって、武器を提供する代わりにダイヤモンドを手に入れ、それを売却して資金繰りを行っていました。
シエラレオネにはヒューマン・ライツ・ウォッチの果敢な調査員がいて、チャールズ・テーラーは大統領在任中に起訴されたのです。チャールズ・テーラーはすぐにナイジェリアに逃亡しました。ナイジェリアの当時の大統領オバサンジョは、アフリカのリーダーが裁かれる前例をつくりたくないと、チャールズ・テーラーに住居を提供して擁護しました。
ヒューマン・ライツ・ウォッチはオバサンジョ大統領と朝食対談をしましたが、「チャールズ・テーラーは引き渡さない」という態度をかえませんでした。そこで、大統領がどこかに出張する際にはジャーナリストが必ず「なぜ大量殺人、殺戮を行った大統領を擁護するのか?」という質問を投げかけるようにして、プレッシャーをかけました。
最終的には、オバサンジョ大統領の「アメリカの大統領の影響力を活用したい。ブッシュ大統領と会い、許可を得てナイジェリアの憲法を変え、3選の大統領として就任したい」という希望を利用したことが、大きな成果を生みました。アメリカ政府に働きかけて、チャールズ・テーラーを庇護している限りは、ブッシュ大統領はオバサンジョ大統領と面談しないという政策を実現させたのです。
そうしたところ、チャールズ・テーラーは、とつぜん身柄を拘束されたのです。ナイジェリアの説明によると、「注意深い国境警備員がたまたま車に乗っている後ろの人間がチャールズ・テーラーだということに気づき、逮捕に至った」(笑)ということです。チャールズ・テーラーはハーグに送られ、現在、大量の民間人の殺害など罪に問われて裁判を受けています。
このことから解かるのは、事実を調査してまとめることで、国際社会を動かすことができるということです。また、政府を動かしたいときには、その政府が何を欲しがっているかを理解しなければなりません。オバサンジョの場合には、ジョージ・ブッシュとの会見でした。我々はアメリカ政府と良好な関係にあり、信頼されていましたので、助けてもらうことができました。
ちなみに現在、リベリアは民主主義国家です。国民は人権を擁護する新しい大統領のもとで、テーラー大統領のときよりもずっといい環境で暮らしています。
別の例では、北アフリカにあるリビアではカダフィが何年も支配していました。しかし数年前に、カダフィは石油産業を開発するには欧米からの投資が必要だと気づいて、テロ行為をやめ、核開発プログラムを停止しました。しかし、欧米から受け入れられるには、人権を尊重する国家だという評判も必要だと思ったカダフィはヒューマン・ライツ・ウォッチの調査を受け入れました。しかし、実際に我々が行ってみると、人権状況は悲惨なものでした。政治犯もいましたし、拷問も行われているという典型的な独裁国家だったのです。
彼らは怒鳴ることで我々を恐れさせ、私たちの調査報告書を撤回させようとしました。しかし我々が「記者会見を開きますが、ジャーナリストから『トリポリ(リビアの首都)ではどんな会話があったのか?』と質問されたら、どう答えたらいいですかね?」と聞くと、我々に協力しなければいけないと気づいたのです。
そこで170名の政治犯の釈放を要求するリストを出したところ、2日以内に全員釈放されました。つまりリビアの場合には、もっと評判のいい国になりたかったのです。今でも独裁国家ですので問題が解決されたわけではありませんが、それでも建設的な対話が続いています。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、戦争のときにも、紛争当事者がジュネーブ条約を守っているかを監視する活動を行います。戦場に調査員を送り込み、どのような形で戦闘が行われているか、きちんとジュネーブ条約が守られているのか、民間人が保護されているかということを調べるのです。
これらが私たちの活動内容で、世界各国でこういったことを実施しています。政府に対する最大限の圧力のツボはどこで、それをどうすれば人権改善につなげることができるのか、それぞれのケースで調査を行っています。
シエラレオネにはヒューマン・ライツ・ウォッチの果敢な調査員がいて、チャールズ・テーラーは大統領在任中に起訴されたのです。チャールズ・テーラーはすぐにナイジェリアに逃亡しました。ナイジェリアの当時の大統領オバサンジョは、アフリカのリーダーが裁かれる前例をつくりたくないと、チャールズ・テーラーに住居を提供して擁護しました。
ヒューマン・ライツ・ウォッチはオバサンジョ大統領と朝食対談をしましたが、「チャールズ・テーラーは引き渡さない」という態度をかえませんでした。そこで、大統領がどこかに出張する際にはジャーナリストが必ず「なぜ大量殺人、殺戮を行った大統領を擁護するのか?」という質問を投げかけるようにして、プレッシャーをかけました。
最終的には、オバサンジョ大統領の「アメリカの大統領の影響力を活用したい。ブッシュ大統領と会い、許可を得てナイジェリアの憲法を変え、3選の大統領として就任したい」という希望を利用したことが、大きな成果を生みました。アメリカ政府に働きかけて、チャールズ・テーラーを庇護している限りは、ブッシュ大統領はオバサンジョ大統領と面談しないという政策を実現させたのです。
そうしたところ、チャールズ・テーラーは、とつぜん身柄を拘束されたのです。ナイジェリアの説明によると、「注意深い国境警備員がたまたま車に乗っている後ろの人間がチャールズ・テーラーだということに気づき、逮捕に至った」(笑)ということです。チャールズ・テーラーはハーグに送られ、現在、大量の民間人の殺害など罪に問われて裁判を受けています。
このことから解かるのは、事実を調査してまとめることで、国際社会を動かすことができるということです。また、政府を動かしたいときには、その政府が何を欲しがっているかを理解しなければなりません。オバサンジョの場合には、ジョージ・ブッシュとの会見でした。我々はアメリカ政府と良好な関係にあり、信頼されていましたので、助けてもらうことができました。
ちなみに現在、リベリアは民主主義国家です。国民は人権を擁護する新しい大統領のもとで、テーラー大統領のときよりもずっといい環境で暮らしています。
別の例では、北アフリカにあるリビアではカダフィが何年も支配していました。しかし数年前に、カダフィは石油産業を開発するには欧米からの投資が必要だと気づいて、テロ行為をやめ、核開発プログラムを停止しました。しかし、欧米から受け入れられるには、人権を尊重する国家だという評判も必要だと思ったカダフィはヒューマン・ライツ・ウォッチの調査を受け入れました。しかし、実際に我々が行ってみると、人権状況は悲惨なものでした。政治犯もいましたし、拷問も行われているという典型的な独裁国家だったのです。
彼らは怒鳴ることで我々を恐れさせ、私たちの調査報告書を撤回させようとしました。しかし我々が「記者会見を開きますが、ジャーナリストから『トリポリ(リビアの首都)ではどんな会話があったのか?』と質問されたら、どう答えたらいいですかね?」と聞くと、我々に協力しなければいけないと気づいたのです。
そこで170名の政治犯の釈放を要求するリストを出したところ、2日以内に全員釈放されました。つまりリビアの場合には、もっと評判のいい国になりたかったのです。今でも独裁国家ですので問題が解決されたわけではありませんが、それでも建設的な対話が続いています。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、戦争のときにも、紛争当事者がジュネーブ条約を守っているかを監視する活動を行います。戦場に調査員を送り込み、どのような形で戦闘が行われているか、きちんとジュネーブ条約が守られているのか、民間人が保護されているかということを調べるのです。
これらが私たちの活動内容で、世界各国でこういったことを実施しています。政府に対する最大限の圧力のツボはどこで、それをどうすれば人権改善につなげることができるのか、それぞれのケースで調査を行っています。
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該当講座
ビジネスマンは人権問題と無縁か?マネックスグループ・松本社長が緊急提起
~ノーベル平和賞受賞NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表と考える~
松本大(マネックスグループ㈱代表取締役社長CEO)
ケネス・ロス(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ代表)
一人のビジネスマンとして、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の活動を側面から個人的に支援するマネックス・グループの松本氏と、ノーベル平和賞受賞団体であるHRWを率いて15年になるロス代表が、人権とビジネスマンの関係について議論します。
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