石倉洋子のグローバル・ゼミ
ゼミでの失敗を糧に、世界へ
グローバル•アジェンダ•ゼミナールのメインファシリテーター、石倉洋子さんに聞く
更新日 : 2009年11月05日
(木)
第6章 今回のゼミを国際会議の練習台に
■ 「グローバル・アジェンダ・ゼミナール」を考えられた背景には、ダボス会議での経験や前述のような問題意識があったのですね。
ええ。ダボス会議の様子を伝えたり、そこでの最新のワークショップのやり方を紹介したり、それを自分たちで実践してみる場をつくることが、日本の若い人たちの刺激になると思いました。世界が直面している課題にどう関わり、その解決策をどう導き出すか、そうした方法も実践しながらともに学ぶ。今回のゼミはそのためのひとつの試みです。
ダボス会議には歴史もあり、今までの会議や報告書などすばらしい資料やビデオなど豊富なリソースがあります。最近また一段と活性化して、世界の課題を多様な分野のひとが協働して解決しようとする強力なプラットフォームになっています。一方、日本のいわゆる「Establishment」は、世界の動きと逆行し、内向きになっています。『世界級のキャリアのつくり方』(共著、東洋経済新報社)でも、「将来、ダボス会議に参加するような人材」をつくろうというのが、ひとつのベンチマークでした。
■ ダボス会議のような国際舞台で、自分の意見や疑問をきちんと発言できるようになるには何が必要でしょう。また、そういう人材を増やすにはどんなことが必要だと思われますか。
まず、「世界でいま、何が起こっているか」をなるべく早い機会に知ること。そして、ダボス会議のリソースなども活用して、日本でも、世界が今直面している問題について多くの人が語り合う場をたくさんつくることです。
そうした場で経験を重ねれば、「何を言ったらいいかわからない」といった戸惑いもなくなってきます。私自身、そういう場に参加する機会をたくさんいただいて、そこで学んできました。だから、今度はこうした経験を重ねる場を日本の若い世代に提供したいのです。パネルで意見をいうのも、プレゼンテーションも、会議のモデレーターも、もっと若い世代に実際に体験してほしい。なんといっても場数を踏むのがカギですから。
■ 国際会議となると、最初はやはり緊張するでしょうね。
緊張もするし、失敗もします。私は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科長、竹内弘高氏に推薦していただいて、初めてダボス会議に行きましたが、最初の年は様子がわからず大変でした。パネル•ディスカッションで他のパネラーと意見が対立したり、聞いている人から厳しく批判されたり、と落ち込んだこともあります。でも、「僕は、あなたの意見に賛成だよ」と言ってくれる人も参加者の中にいらして、とても勇気づけられました。
短い時間にいろいろなことを言おうとして、逆にわかりにくくなってしまったという失敗や、緊張しているため、質問の背景や意味がわからず、ピントのはずれた答えをしたりという失敗はかなりあります。でも、こうした経験から学び、いろいろな人に教えてもらい、だんだん慣れてきたのです。
こうした場で短い時間を与えられている場合、誰でも覚えていられるように大きなメッセージを3つくらい簡潔に示すこと、そして、その事例などを挙げると、メッセージが明快になって参加者によく伝わります。私も準備しているときはできるけれど、突然、予想もしなかった質問が出たりするときは、なかなかポイントをついた簡潔な答えをいうことができません。
■ これほどのキャリアをお持ちの石倉さんでも、ですか。
大変ですよ、その場での勝負ですから。個人の力が明らかになります。大連のサマーダボスで、「競争力」のパネル・ディスカッションのパネリストをしましたが、直前にメンバーが変わったり、話す順序や内容が変わったりしたので、青ざめました(笑)。モデレーターのBBCのひとからは、予定外の要求も飛び出すし、会場からの質問もありましたから。。。。
■ 世界レベルの会議でも、突然のキャンセルやメンバー交代などが頻繁にあるのですか。
ええ、よくあります。会議の直前に、モデレーターをする予定の人がキャンセルしたため、やってほしいと頼まれることもあります。いい機会だから、あまり知らない分野でも私は大概引き受けます。引き受ける前に、その分野の専門家に「これ、私が引き受けても大丈夫でしょうか」と聞いて、その分野のことをざっと調べてから、ですが。こうして代役をつとめ、実際に何とかやれれば、スタッフからは、窮地を救ってくれたと感謝されるし、私自身も新しい分野を知ることができます。
ただし、かなり慎重に準備をします。事前にパネラーにメールを出して、「一般的な話ではなく、あなたの実際の経験から何か発言してください」とか、「インタラクティブ(双方向)な場にしたいので、なるべくインフォーマルでカジュアルな雰囲気で進めたいと思っていますが、いいですか」とか、「あなたが一番伝えたいことを教えてください」などを問い合わせておきます。それをパネリスト全員で共有して、発言の順番を決めます。全体の流れがある程度わかったうえで進めるわけですが、それでもその場で予想外の展開になることはよくあります。
(文・構成 太田三津子/撮影 御厨慎一郎)
プロフィール
関連書籍
世界級キャリアのつくり方
黒川清,石倉洋子東洋経済新報社
戦略シフト
石倉洋子東洋経済新報社
日本の産業クラスタ−戦略
石倉洋子,藤田昌久,前田昇,金井一頼,山崎朗有斐閣
ゼミでの失敗を糧に、世界へ インデックス
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第1章 原動力は、新しいことへの好奇心
2009年11月02日 (月)
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第2章 語学は頻度。失敗を怖れず、使うこと
2009年11月02日 (月)
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第3章 ダボス会議は発見と啓発に満ちている
2009年11月04日 (水)
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第4章 ダボス会議が進化しつづける秘訣
2009年11月04日 (水)
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第5章 バカな質問なんてない、何を言ってもいい
2009年11月05日 (木)
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第6章 今回のゼミを国際会議の練習台に
2009年11月05日 (木)
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第7章 世界に出て行く人を探し出して支えたい
2009年11月06日 (金)
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第8章 ゼミからダボスへ、そして世界へ
2009年11月06日 (金)
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