記事・レポート
カフェブレイク・ブックトーク「辞書、辞典の季節」
更新日 : 2008年06月13日
(金)
第7章 総合国語辞典と異なる使い方をする類語・同義語辞典
澁川雅俊: 類語と同義語と反対(反義)語は何かを説明する必要はないでしょう。簡単な例を挙げると〔本=図書=書物=書籍〕は同義語、〔本≒雑誌≒資料≒論文〕は類語、〔真vs.偽、善vs.悪、美vs.醜〕は反対語です。
この種の辞典は、論文・随筆・小説・詩句・手紙など文章を書くときに、例えば、いい換える語彙を探すとき、考えを飛躍させたいとき、ことば概念の広がりや範囲を知りたいとき、ことばの適正な使い方を確認したいときに、総合国語辞典では得られない便利さがあります。一つだけ事例を上げるならば、例えば「遠くの山際が満開の桜に霞んでみえる」を別の表現で表したいときなどにこの種の辞典を上手に使うと、いとも簡単に「満開の桜が遠くの山際を煙らせている」と書き改めることができます。
その理由は、端的に言えば、総合国語辞典は語彙(ことば)の解説目録であるのに対して、類語・同義語辞典は、語意(ことばの意味)の分類表として編成されているからです。つまり総合国語辞典は私たち人間が私たちの身の回りに存在するあらゆるモノやコトをそれが何であるかを適正に認識して、それを他のモノやコトと識別するために付けた呼び名としてのことばのすべてを集めて、記録して、まとめ上げたことばの解説付きリストです。リストですから、一つひとつのことばを検索しやすいような仕掛けを施している。その仕掛けが、五十音順とかアルファベット順排列ということになります。
それに対して類語・同義語辞典は、ことばの意味、つまり一つひとつのことばが背負っている概念によって、モノやコトを分類し、同じモノ・コトや類似のモノ・コトを表すことばの集合を体系化するという意図で編纂されています。
「概念によって、モノやコトを分類、あるいは体系化する」方法としては、昔から〈天・地・人〉などという大区分があります。例えば以下に挙げる類語辞典では、このような体系でことばの分類をしていいます。まず『三省堂類語新辞典』(中村明編集主幹、05年三省堂刊)では、
A自然(A1天文・気象、A2現象、A3土地、A4自然物、A5植物、A6動物)
B人間(B1人体、B2生理、B3関係、B4属性、B5感性、B6活動)
C文化(C1社会、C2生活、C3学芸、C4物産・製品、C5抽象、C6認定・形容)
この種の辞典は、論文・随筆・小説・詩句・手紙など文章を書くときに、例えば、いい換える語彙を探すとき、考えを飛躍させたいとき、ことば概念の広がりや範囲を知りたいとき、ことばの適正な使い方を確認したいときに、総合国語辞典では得られない便利さがあります。一つだけ事例を上げるならば、例えば「遠くの山際が満開の桜に霞んでみえる」を別の表現で表したいときなどにこの種の辞典を上手に使うと、いとも簡単に「満開の桜が遠くの山際を煙らせている」と書き改めることができます。
その理由は、端的に言えば、総合国語辞典は語彙(ことば)の解説目録であるのに対して、類語・同義語辞典は、語意(ことばの意味)の分類表として編成されているからです。つまり総合国語辞典は私たち人間が私たちの身の回りに存在するあらゆるモノやコトをそれが何であるかを適正に認識して、それを他のモノやコトと識別するために付けた呼び名としてのことばのすべてを集めて、記録して、まとめ上げたことばの解説付きリストです。リストですから、一つひとつのことばを検索しやすいような仕掛けを施している。その仕掛けが、五十音順とかアルファベット順排列ということになります。
それに対して類語・同義語辞典は、ことばの意味、つまり一つひとつのことばが背負っている概念によって、モノやコトを分類し、同じモノ・コトや類似のモノ・コトを表すことばの集合を体系化するという意図で編纂されています。
「概念によって、モノやコトを分類、あるいは体系化する」方法としては、昔から〈天・地・人〉などという大区分があります。例えば以下に挙げる類語辞典では、このような体系でことばの分類をしていいます。まず『三省堂類語新辞典』(中村明編集主幹、05年三省堂刊)では、
A自然(A1天文・気象、A2現象、A3土地、A4自然物、A5植物、A6動物)
B人間(B1人体、B2生理、B3関係、B4属性、B5感性、B6活動)
C文化(C1社会、C2生活、C3学芸、C4物産・製品、C5抽象、C6認定・形容)
また『類語大辞典』(柴田武・山田進編、02年講談社刊)(※7)では、ちょっと分かりにくい分類なのですが、人の命に関する「00生きる・死ぬ」から始まって「98ない・なくなる」まで、人に近いところから遠いところへ、すなわち、もっぱら人にかかわる語群から、主として物にかかわる語群、さらにはそれらすべてにかかわる語群へと100区分に展開されていています。この辞典の分類も、前者どうよう基本的に〈天・地・人〉です。
それに対して『日本語大シソーラス-類語検索大辞典』(山口翼編、03年大修館書店刊)(※8)は、日本で最大の類語辞典で、20 数万語を収録していますが、編集者のいうように「先に分類ありき」ではなく、ことばとその表現を収集しながら、それを連想に基づいて群にまとめ、分類を練り上げる作業を繰り返して作られた関係で、ことばによる“日本人の文化・感性の総索引”を目指したため、かなり複雑な体系(総区分1044)となっています。
いずれにしてもこの種の辞典はその体系、つまり分類表をよく理解していないと、上手く使えないところがありますが、収録されている全語彙の五十音順索引が付けられているので、適切に一つのことばを選べば、その同義語や類語群にアクセスすることは、それほど、むずかしくありません。
(※7)『講談社『類語大辞典』の研究—辞書がこんなに杜撰でいいかしら』(西山里見著、04年洋泉社)
(※8)「シソーラス」は19世紀半ばに刊行された英語の類語辞典『ロジェ・シソーラス』からの命名
いずれにしてもこの種の辞典はその体系、つまり分類表をよく理解していないと、上手く使えないところがありますが、収録されている全語彙の五十音順索引が付けられているので、適切に一つのことばを選べば、その同義語や類語群にアクセスすることは、それほど、むずかしくありません。
(※7)『講談社『類語大辞典』の研究—辞書がこんなに杜撰でいいかしら』(西山里見著、04年洋泉社)
(※8)「シソーラス」は19世紀半ばに刊行された英語の類語辞典『ロジェ・シソーラス』からの命名
●擬音語・擬態語辞典
ここでもう一つ変わった辞典を挙げておきます。それは『擬音語・擬態語4500-日本語オノマトペ辞典』(小野正弘編、07年小学館)というものです。
擬音語・擬態語というのは、例えば「おてもやん」という民謡の一節に「ぴーちくぱーちく雲雀の子、げんぱくなすびのいがいがどん」の「ぴーちくぱーちく」が擬音語、「いがいが」が擬態語です。また「4月1日六本木でもぴかぴかの新入社員が目立った」の「ぴかぴか」とか「ぴっかぴっかおばさんたちが群れをなして六本木ヒルズに向かってきた」の「ぴっかぴっか」などが擬態語です。そしてこの辞典では、豊富な用例が挙げられ、「ぴかぴか」と「ぴっかぴっか」意味と用法の違いを分かりやすく示しています。
擬音語・擬態語というのは、例えば「おてもやん」という民謡の一節に「ぴーちくぱーちく雲雀の子、げんぱくなすびのいがいがどん」の「ぴーちくぱーちく」が擬音語、「いがいが」が擬態語です。また「4月1日六本木でもぴかぴかの新入社員が目立った」の「ぴかぴか」とか「ぴっかぴっかおばさんたちが群れをなして六本木ヒルズに向かってきた」の「ぴっかぴっか」などが擬態語です。そしてこの辞典では、豊富な用例が挙げられ、「ぴかぴか」と「ぴっかぴっか」意味と用法の違いを分かりやすく示しています。
関連書籍
類語大辞典
柴田武講談社
日本語大シソーラス
山口翼大修館書店
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