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“面白い”ビジネスのつくり方

小澤隆生、南壮一郎が語るスタートアップ

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年05月20日 (水)

第6章 問題をつくり出す人、問題を解く人

写真左:佐々木紀彦(株式会社ニューズピックス 取締役)写真中央:小澤隆生(ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長)写真右:南 壮一郎(株式会社ビズリーチ代表取締役)

 
砂漠で水を売りなさい

佐々木紀彦: お二人の共通項といえば、楽天イーグルスの創業メンバーであること。まさにゼロからのスタートとなり、赤字必至と言われていました。しかし、「居酒屋シート」「負けても儲かる経営方法」など、常識を打ち破るアイデアを通じて初年度から黒字を達成するなど、大成功を収めています。陣頭指揮を執られた小澤さんから見て、成功の理由はどこにあると思われますか?

小澤隆生: ビジネスの基本は、「あるモノを欲する人に、望み通りのモノを届け、満足してもらう」ことです。プロ野球を心から欲している地域はどこか? その中で最も人口が多い地域はどこか? さらに、野球を行えるインフラが整っている地域はどこか? この条件に適う場所を探し出せるかどうかが、大きなカギでした。徹底的に情報収集し、最もポテンシャルの高い東北・仙台を選んだ時点で、勝ちは8割方決まりました。

スタートアップの方々と一緒に新しいビジネスをつくるとき、僕はよく「砂漠で水を売りなさい」と言います。砂漠で水は売れますが、砂は売れません。つまり、「何をやるべきか?(What)」という事業の方向性さえ間違わなければ、まず失敗しません。リーダーの仕事は、砂漠で売るものを決めること。さらに、「何をすべきか」について、シンプルなプランやスキームを提示してあげることです。この仕事を放棄してはダメです。よく「現場に任せる」と言う人がいますが、どこで何を売るかまで決めさせて成功した例はほとんどない。「部下を自由に遊ばせる」も、間違いだと思います。正解は「限られた自由の中で、遊ばせる」です。

事業の方向性が決まったら、メンバーの特徴を見ながら仕事を割り振り、どのように売るのかを考えてもらう。よりたくさんの水が売れるようにするために、パイプラインを引くのか、あるいはペットボトルで個別に売るのか。これを考えるのは、一人の力では絶対に無理ですから、チームの力が必要になります。

突然ですが、ここまでの話を数学にたとえてみましょう。「正三角形と円を重ねたときにできる、グレーに塗られた部分の面積を求めなさい」。こうしたとき、皆さんはさまざまな公式を使って面積を求めるはずです。これはHowを考える問題であり、得意な人は多いと思います。

しかし、問題(What)そのものを生み出せる人は、実はそれほど多くない。つまり、常識や既成概念など、世の中の“当たり前”に対して疑問をもち、新たな価値創造につながる問いをつくり出せる人です。リーダーの仕事は、「これなら、あの公式を使えば答えが求められる」と予測しながら優れた問題をつくり、メンバーに手渡すこと。優れたチームには、必ずリーダーよりも上手に答えを導き出せる人がいます。

ビジネスの世界において、上手に問題をつくり出せる人と、上手に問題を解ける人は、滅多に一致しません。さらに言えば、何度も問題を解いた経験がなければ、良い問題をつくることはできません。


 
佐々木紀彦: なるほど。成功した理由について、南さんはいかがでしょうか?

南壮一郎: 大きなポイントは、スキルも人間性も多様な人材を集めてきたことだと思います。現場のまとめ役である小澤さんは、まったく異なるバックグラウンドをもつ人々を集め、共通の目標へとベクトルを合わせていった。そして、個々のスキルはもちろん、チームのシナジーが最大限発揮されるよう役割分担し、活躍できるフィールドを用意した。そのおかげで、新球団をつくる事業は成功し、僕たちメンバーはビジネスパーソンとして“覚醒”できたのだと思います。実際に、創業メンバーは現在、さまざまな分野で大活躍しています。

佐々木紀彦: 『ビジョナリーカンパニー2』(日経BP社)には、「誰をバスに乗せるのか?」が事業の成否を決めると書かれています。小澤さんはどのような基準でメンバーを選ばれていたのでしょう?

小澤隆生: 極論を言えば、誰でも良かったのだと思います。新球団設立に向けてチームが始動したのは、2004年9月です。監督や選手、スタッフ、チームロゴ……野球ができる前提は、何ひとつ用意されていませんでした。しかし、5カ月後には、プロ野球の公式試合を行わなければならなかった。

人は究極まで追い込まれると、信じられないほどの力を発揮します。死に物狂いで取り組むうちに経験値が増え、あらゆる問題をものすごいスピードで解けるようになった。僕を含め、メンバーは新球団をつくり上げていく中で、飛躍的に成長したのだと思います。僕も南も、あの経験があったから、いまがある。むしろ、あれほど強烈な経験をして、成長しない人がいるのかと思うほどです。

ビジネスは、優秀なスキルをもつ人が集まれば成功する、というものではありません。まず、目指すべき方向性さえ間違わなければ、ある程度は成功しますが、その上で大切になるのは、素直であること、前向きであること、最後まで諦めずに頑張り抜くこと。この3つがあれば、成功の確率をさらに高めることができると思います。



該当講座

“面白くて、稼げる”ビジネスのつくり方
小澤隆生 (ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南 壮一郎 (株式会社ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦 (PIVOT CEO)

小澤隆生(㈱ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南壮一郎(㈱ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦(㈱東洋経済新報社『東洋経済オンライン』編集長)
今注目の起業家をゲストにお迎えする「東洋経済スタートアップシリーズ」。今回は「成功するビジネスのつくり方」をテーマにお二人のゲストにご登壇頂きます。セミナー後は簡単な懇親会もございます。


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