記事・レポート
“面白い”ビジネスのつくり方
小澤隆生、南壮一郎が語るスタートアップ
BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年05月13日
(水)
第3章 1.5トンの豆を投げ合う「すごい豆まき」
「面白い」を科学する
小澤隆生: 現在は、お金になる、ならないにかかわらず、さまざまなプロジェクトを手掛けています。その1つが、毎年2月に東京タワーで1.5トンの豆をまくイベント「すごい豆まき」です。このイベントを始めた動機は、単純に面白そうだったからです。
2006年に楽天を退職した後、「面白い」を真剣かつ科学的に研究するため、小澤総合研究所を立ち上げました。面白いことを考えつくためには、センスが必要だと言われます。僕はセンスがないと自認しているため、科学的に分析することで「面白い」をつくり出せないか、と考えたわけです。人は「何か面白そうだな」と感じたとき、行動を起こします。僕は、再現性をもつ「面白い」ことは、世界に通用する「面白い」になり得る、さらにビジネスにとっても非常に有効であると考えています。
あるとき、僕はスペインの「トマト祭り」の面白さとは何か、と考えました。なぜ、世界のメディアはこの祭りに注目するのか? そこで、「面白い」の構成要素を分解し、細かく分析してみました。
トマト祭りとは何か? 本来は投げてはいけないもの(食べ物)を投げている。しかも、膨大な量のトマトを、数万人もの参加者が投げ合う。そして、人も街も真っ赤に汚れる。本来はやってはいけないこと、あり得ないことばかりですが、トマト祭りは途方もない規模で、それを合法的に行うことができる。だから、誰もが面白いと感じるわけです。
このフォーマットに近い日本の祭りは何か? 節分の豆まきがありました。しかし、一般的な豆まきは、少人数で少量の豆をまくだけで、あまり面白くない。ならば、「すごい」豆まきにしてみようと思ったのです。
ビジネスでも同じですが、ある程度アイデアが固まった段階になると、僕は小さな実験を行います。このときも、食用にならないクズ豆を30kg購入し、フェイスブックで30人の仲間を集め、カラオケ店で実験しました。わかったことは、踏みつけられた大量の豆で、部屋中が汚れること。豆は小石のようなものなので、当たれば結構痛いこと。さらに、鬼のコスプレをすると、一気に盛り上がること。終了後は、カラオケ店からこっぴどく怒られましたが(笑)、信じられないほど面白かった。
実験を行ったことで、トマト祭りと同じ面白さが再現できるとわかり、新たな要素として、日本ならではの文化、コスプレが加わりました。成功事例をそのまま輸入するのではなく、パターン認識を行い、本質的な部分を抜き出し、日本の文化に寄せていったわけです。
面白いことをやる際は、必ず押さえなければならない最低ラインがあります。どれほど面白い要素を加えても、大量の豆がなければ、「すごい豆まき」になりません。何よりも優先すべきは、大量の豆を確保する方法を考えること。もう1つは、不満やクレームにつながりそうなリスクを取り除くこと。実験では、痛い、汚れるといったリスクがあるとわかった。目を守るゴーグルやサングラス着用をルールとし、投げ終わった豆はきれいに回収して、長野の農家で堆肥として活用することにしました。
僕はよく「とにかく最初は51点を取れ!」と言いますが、プロジェクトの“土台”を押さえておかなければ、やたらと勝手な意見が飛び交うだけになり、結局は途中で空中分解してしまいます。最低ラインである51点をクリアした上で、70点、80点に向けたアイデアを付け加えていくことが大切です。ちなみに、豆については、商社を通じて東北の農家から食用にならないクズ豆を、あえて少し割高な価格で購入し、微力ながら復興支援にも貢献しています。
冒頭で申し上げた通り、面白いことをするためには、お金がかかります。このイベントでも、会場を借りる費用や、大量の豆を購入する費用など、結構なコストがかかります。そこで参加費制とし、さらに「高い壇上からたくさんの人に向かって豆をまける権利」を10万円で販売したところ、数十人が購入してくれました。人間は不思議な生き物で、「面白い!」と思うことに対しては自然と体が動いてしまい、お金まで払ってしまうのです。
2012年の第1回では、ほとんどの在京キー局が取材にきましたが、僕の目標は、世界に通用する面白い祭りにすること。翌年の第2回では、インターネットで“This is Soybeans Festival !! ”などと広範囲に発信したところ、ロイター通信の取材を受け、世界中のメディアから問い合わせがくるようになりました。僕はそのとき、科学的に分析すれば、「面白い」は再現できるのだと実感しました。
実験を行ったことで、トマト祭りと同じ面白さが再現できるとわかり、新たな要素として、日本ならではの文化、コスプレが加わりました。成功事例をそのまま輸入するのではなく、パターン認識を行い、本質的な部分を抜き出し、日本の文化に寄せていったわけです。
面白いことをやる際は、必ず押さえなければならない最低ラインがあります。どれほど面白い要素を加えても、大量の豆がなければ、「すごい豆まき」になりません。何よりも優先すべきは、大量の豆を確保する方法を考えること。もう1つは、不満やクレームにつながりそうなリスクを取り除くこと。実験では、痛い、汚れるといったリスクがあるとわかった。目を守るゴーグルやサングラス着用をルールとし、投げ終わった豆はきれいに回収して、長野の農家で堆肥として活用することにしました。
僕はよく「とにかく最初は51点を取れ!」と言いますが、プロジェクトの“土台”を押さえておかなければ、やたらと勝手な意見が飛び交うだけになり、結局は途中で空中分解してしまいます。最低ラインである51点をクリアした上で、70点、80点に向けたアイデアを付け加えていくことが大切です。ちなみに、豆については、商社を通じて東北の農家から食用にならないクズ豆を、あえて少し割高な価格で購入し、微力ながら復興支援にも貢献しています。
冒頭で申し上げた通り、面白いことをするためには、お金がかかります。このイベントでも、会場を借りる費用や、大量の豆を購入する費用など、結構なコストがかかります。そこで参加費制とし、さらに「高い壇上からたくさんの人に向かって豆をまける権利」を10万円で販売したところ、数十人が購入してくれました。人間は不思議な生き物で、「面白い!」と思うことに対しては自然と体が動いてしまい、お金まで払ってしまうのです。
2012年の第1回では、ほとんどの在京キー局が取材にきましたが、僕の目標は、世界に通用する面白い祭りにすること。翌年の第2回では、インターネットで“This is Soybeans Festival !! ”などと広範囲に発信したところ、ロイター通信の取材を受け、世界中のメディアから問い合わせがくるようになりました。僕はそのとき、科学的に分析すれば、「面白い」は再現できるのだと実感しました。
“面白い”ビジネスのつくり方 インデックス
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第1章 面白いことをやるために、稼ぐ
2015年05月13日 (水)
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第2章 「EasySeek」でインターネットの本質に触れる
2015年05月13日 (水)
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第3章 1.5トンの豆を投げ合う「すごい豆まき」
2015年05月13日 (水)
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第4章 鳥肌が立つほど感動する仕事がしたい
2015年05月20日 (水)
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第5章 僕が楽天イーグルス創業を通じて学んだこと
2015年05月20日 (水)
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第6章 問題をつくり出す人、問題を解く人
2015年05月20日 (水)
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第7章 アイデアをビジネスに変換する方法
2015年05月27日 (水)
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第8章 ビジネスの本質を見抜くコツとは?
2015年05月27日 (水)
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第9章 スタートアップと、使命感・大義名分
2015年05月27日 (水)
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第10章 優れた経営者ほど、バランスが悪い
2015年05月27日 (水)
該当講座
小澤隆生(㈱ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南壮一郎(㈱ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦(㈱東洋経済新報社『東洋経済オンライン』編集長)
今注目の起業家をゲストにお迎えする「東洋経済スタートアップシリーズ」。今回は「成功するビジネスのつくり方」をテーマにお二人のゲストにご登壇頂きます。セミナー後は簡単な懇親会もございます。
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