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“面白い”ビジネスのつくり方

小澤隆生、南壮一郎が語るスタートアップ

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年05月27日 (水)

第9章 スタートアップと、使命感・大義名分


 
人間は理由もなくパズルに没頭できる

会場からの質問(3): お二人がビジネスを立ち上げた際、最初の段階から確固たる使命感、大義名分をもたれていたのでしょうか?

南壮一郎: 実は、ビズリーチを始める前は、確固たる使命感や大義名分はありませんでした。それ以前に、起業する気すらなく、転職活動をしていたほどです。楽天を退職後、僕は生まれて初めて本格的な転職活動を行い、人材紹介会社を30社ほど利用しました。しかし、同じ履歴書や条件を提示しても、毎回まったく異なる企業を「あなたにピッタリの会社」として紹介されました。さらに、僕の希望するような企業も見当たらない。大きな違和感を覚えたのと同時に、非常に不便だと感じました。

一般的な人材紹介会社は、自社が契約する企業しか紹介できない仕組みとなっています。そのため、優秀な人を採用したい企業と、仕事を探す求職者には全ての選択肢や可能性が与えられていません。海外では、企業と求職者をダイレクトに結びつけるオープンな人材市場が当たり前のように存在し、より良いマッチングがなされていました。

そこで僕は、ITの力を借りて人材市場を可視化・オープン化することで、日本の人材業界を可視化できないか、と考えました。つまり、最初は自分の感じた不満や不便さがきっかけでした。この問題を解決すれば、同じ悩みをもつ多くの人にもプラスになると思い、起業を考えるようになったのです。

僕が使命感や大義名分以上に大切にしているのは、とにかく走り出してみること。その後は、猛烈なスピードでPDCAを回していく。要素分解を行っていけば、解決すべきボトルネックは明らかになり、実現への道筋は自ずと見えてきます。使命感や大義名分は、このプロセスの中で固めていけば良いと思います。



佐々木紀彦: 小澤さんはいかがでしょうか?

小澤隆生: 僕は「自分のビジネスを通して、少しでも世の中が良くなればいいな」とは思いますが、大義名分といえるほどのものはありません。何が原動力になるのかといえば、問題を解く楽しさでしょうか。人間は不思議な生き物で、パズルや知恵の輪、ルービックキューブを与えられると、理由もなく没頭できるという特徴をもっています。それと同様に、僕は目の前に難しい問題を出されると、とにかく解決したくなるのです。

極端な話をすれば、Yahoo!ショッピングがなくても、楽天市場とアマゾンがあれば、人間は生きていくことができるでしょう(一同爆笑)。しかし、孫正義さんから「Yahoo!ショッピングを強くしろ!」という、極めて難しい問題を投げられてしまった。独力ではとても解決できませんから、優秀な仲間が必要になるため、「eコマース市場に革命を起こす!」という大義名分を一生懸命考え、多くの人に語りかけ、巻き込んでいるのです。しかし、自分の心を掘り下げてみると、自己の探求心を満足させるためにやっているようにも思います。

もちろん、パーソナリティの問題もあります。何年でも1つのパズルに没頭できる人と、途中で飽きてしまう人がいる。パズルは嫌いだけれど、知恵の輪は大好きという人もいる。「誰も完成させたことのないパズルしか興味がない」という人もいるでしょう。

使命感や大義名分が見つからないという人に対しては、「他人から与えられたものでもいいから、まずは目の前の課題・問題に一生懸命取り組みなさい」とアドバイスします。懸命に取り組んでいれば、必ず心の底から没頭できるものが見つかるはずです。

南壮一郎: 僕の場合は、「君の周りにいる使命感や大義名分をもつ人のところに行き、『何か手伝わせてください!』とお願いしてみたら?」とアドバイスします。三木谷さんや小澤さんのように、凄まじいパワーをもつ人に巻き込まれてみると、必ず新しい何かが見えてくるからです。



該当講座

“面白くて、稼げる”ビジネスのつくり方
小澤隆生 (ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南 壮一郎 (株式会社ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦 (PIVOT CEO)

小澤隆生(㈱ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長)
南壮一郎(㈱ビズリーチ代表取締役)
佐々木紀彦(㈱東洋経済新報社『東洋経済オンライン』編集長)
今注目の起業家をゲストにお迎えする「東洋経済スタートアップシリーズ」。今回は「成功するビジネスのつくり方」をテーマにお二人のゲストにご登壇頂きます。セミナー後は簡単な懇親会もございます。


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